『サウスパーク』S23E6「Season Finale」感想

 今回の『サウスパーク』はまだシーズン途中なのにフィナーレ!?その真意とは…!?

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 ランディとタオリーが大麻で作る朝食番組をネット配信していると、突如警察に逮捕され、市長、マッケイ先生、トゥィーク夫妻が待ち構えていた市議会に連れて行かれる。今シーズン第1話の終わりでサウスパーク中の個人マリファナ農園が全てメキシカンジョーカーに爆破されたが、実はメキシカンジョーカーなど存在せずランディが爆破したというのだ。「そんなのデタラメだ!」とランディは主張するも、証拠として提出された監視カメラの映像を見るとしっかりとトゥイーク夫妻の個人農園に糞尿して爆弾タイマーを設置するランディの姿が。そうでなくても今シーズンのランディの振る舞いは酷かったので、ランディの主張も虚しくテロ罪の容疑で刑務所に入れられてしまう。シャロンやスタン、シェリーは父が逮捕された事でサウスパークに戻れるのではないかと喜びを隠せないでいるのであった

 

 さて、公園でアメフトで遊んでいた子供たちだが、カートマンの投げたパスを取ろうとしたジェイソン・ホワイト少年がパトカーに轢かれて死んでしまう。人もまばらな葬式でジェイソンの父ロバートは怒りを表明する。「ホワイトとしてジェイソンは困難な人生を歩みました。ホワイトが警察に殺されても誰も気にしないのです!抗議やデモがあっても良いのに我々がホワイトだから誰もしない!皆ランディ・マーシュを刑務所に打ち込むことで忙しいんだ!もう我が家には息子を失った悲しみを忘れさせるマリファナも残されていないんだ!と言っても、ホワイトの言うことなんか誰も聞いていないでしょうけどね」

 

 一方ホワイトハウスのギャリソン大統領の元へ一本の電話がかかる。刑務所にいるランディからであった。
「もしもし大統領、えっと、誰かが私が違法なことをしたと証拠を掴んでいるようなんですけど、アドバイスをくれませんか?」
何も悪いことはしていないと主張した?
「ええ、もちろん」
「じゃあ、自分が被害者になるように相手を攻撃して非難先をひっくり返してみた?
「な、なんですって?」
「頼むよ、DARVOだよランディ、否定して(Deny)、攻撃して(Attack)、被害者と加害者をひっくり返す(Reverse Victim and Offender)の!例を見せてあげよう、ちょっと私を非難してみなさい」
「えっと…やい、よくも大麻農園を育ててる人の庭を爆破してくれたな!」

「してねーよ!あんたサイコパスあんたこそ今うちの庭を爆破してるでしょ!…ほら、簡単でしょ?」

「あなた本当に上手いですね…とにかく誰か弁護士を送ってくれませんか?」

ジュリアーニなら知ってるよ。

ギャリソン大統領は顧問弁護士ルドルフ・ジュリアーニをランディの元へ派遣することを約束する。

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 戻ってテグリディ農場ではマーシュ家の元へ町民が食べ物を持ち寄り、ランディがいなくなったことを喜ぶ、もとい、悲しむパーティーが開かれていた。そこへ訪れるホワイト一家。「我々ホワイトに助けが欲しいときに誰も食べ物を持ち寄ってくれませんでしたね。皆さんどうやらテグリディ農園が無くなることに喜んでいるようですが、私たちテグリディ・ロイヤル・プログラムの会員はどうなるんですか!まあ、ホワイトがどんどん少なくなってると言うことでしょうね…」寂しげに去っていくホワイト家の事を可哀想に思ったカートマン*1はあるアイディアを提案する。「ホワイトさん、お悔やみ申し上げます。ジェイソンはヘタクソなレシーバーでしたが、あなた達に前に進んで子供を助けてあげて欲しいと思っているとお思いますよ。オイラはこの間である場所にいたんです。あなた達のような人が心にあいた穴を埋められるような場所です」

 

 カートマンに言われた通りの場所へ行ってみると、そこは移民収容施設だった。相変わらず親が強制送還された不法移民の子供たちが収容されていて、まるで捨て犬の里親募集の感覚でICEの職員がホワイト夫妻を歓迎する。

「あなた方を襲った悲劇についてお聞きしました。助けになれればと思います、何か特定のものをお探しで?」

「初めてなのでよくわからないんです…」

「ならオススメを紹介しますよ!ここにいるのはパナマでとても綺麗好きですよ。こっちにいるのはコロンビアン・ショートヘアーで、こっちはバハ・シェパードペルビアン・スキンヘッドもオススメですよ!」

「ここにいる可愛いのは?」

「これはシシュンキ・メキシカンですよ!予防接種も終えていて両親が先週強制送還されたばかりです。ちょっと遊ばせてみますか?」

この男の子を気に入ったホワイト家は男の子をアレハンドロと名付け、ホワイト家としての生き方を伝授してランディ釈放運動に強制参加させるのであった。

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 その頃、ランディは刑務所の中でこれまでの自分の生き方を猛省していた。大麻に夢中になるあまり、良き旦那や父親になれなかったのではないかと。「自分がいくら酷い事をしても、今の大統領よりもまだマシと思っているうちに、自分の倫理基準が下がってしまったんだ」そんな折にジュリアーニが刑務所に面会に訪れる。大麻と手を切ったランディは拒絶しようとするも、ジュリアーニが肛門に隠し持っていた大麻ジョイントを差し出され、誘惑に負けてしまい…!

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 今シーズンの『サウスパーク』でのテグリディーファームのエピソードはCM明けの出囃子などシットコムのフォーマットをパロディにしていた。つまりエピソードタイトルの「Season Finale」とは「テグリディーファーム」というドラマシリーズの最終回だったのだ。元々僕はテグリディーファームのギャグはあまり好きではなかったので終わるのにほっとしたが、しかし流石最終回ともあってキレッキレの社会風刺のエピソードとなり今シーズンでもズバ抜けた傑作回に仕上がった。

 

 核となるのはホワイト家で、彼らは典型的なトランプサポーターの白人を代表している。世間がマイノリティーの権利を重視しすぎているせいで、白人は世間から権利を軽視される存在になってしまった!という、スットコドッコイな主張をしている連中で、まあこういうのは全て在日韓国人や中国人のせいにしている日本の右翼にも共通していますな。基本的にトレイ・パーカーとマット・ストーンは極端に差別的な人間を出す事で差別主義者がいかに無知で間抜けかを炙り出す作風だが、このエピソードでも不法移民の子供達が何かをスペイン語で訴えかけてもICEやホワイト家の人々は全て「ビエン、グラシアス、イ・トゥー?(私は大丈夫です、ありがとう、あなたは?)」と返すバカっぷりが最高。

 

 3年前トランプが選ばれた時トレイとマットは「トランプはフィクションよりも酷いのでもう題材にしない」と言っていたものの、やはり素材として面白過ぎるようで結局なんだかんだ毎シーズン扱っている。トランプは今もウクライナゲート疑惑で罷免の危機にあっているが、何事もDARVO戦略で乗り越えてしまうのである意味無敵。というか、本当にフィクション通りのバカげた展開を現実世界で行われているのは頭が痛くなっているジュリアーニは実際トランプがスキャンダルに遭うたびに何かと活躍している顧問弁護士だけれども、トランプのバカに媚び諂ってる連中は全員『サウスパーク』内では文字通りギャリソン大統領のタマをナメまくる側近として描かれる。コメディとは現実に対抗しうる最強の武器である事をトレイとマットはよくわかっている。

 

トランプに学ぶ 現状打破の鉄則

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*1:もちろん自分のせいでジェイソンが死んだとはこれっぽちも思っていない