アル・カポネの時代に逆戻り

 三度目の緊急事態宣言が今週末から発令されますが、まさか2021年にもなって禁酒法時代まで逆行するとは思わなかったですよ。

 

 昔、アメリカで働いていた時にリサーチ仕事をしたことがあったんですが、NYには一見するとコインランドリーやアイスクリーム屋さんなのに、秘密の扉を開けるとバーになっている秘密基地みたいなお店が多数あるんです。こういう隠れ家的なお店はスピークイージーというんですが、禁酒法時代に摘発を逃れるために運営されていた無許可バーの名残です。もちろん、現代ではそのアジト的な雰囲気がウケておしゃれなバーとして人気です。

 

 

 で、日本では今ご存知の通り、マンボーでお店が20:00に閉まるため、飲み足りない人々が公園や駅前などで集まって路上飲みをすることが流行っていて問題となっており、今回の緊急事態宣言では更に路上飲みに拍車をかけるんじゃないかと推測されております。これを聞いてなんとなく思い出したのは、これまたアメリカ時代の話で恐縮ですが、アメリカではほとんどの州で公共の場で飲酒をすることは法律で禁じられているんですね。飲酒だけでなくて、酔っ払って歩いているだけで公衆酩酊罪(public intoxication)で捕まってしまいます*1。これもまた、禁酒法時代の名残が色濃く残っているんでしょうかね。

 

 アメリカだけでなく、公共の場での飲酒や酩酊を禁じている国は多いので、よく海外の方が日本に来ると、電車で酔っ払って爆睡しているサラリーマンなどを見てビックリした、なんて聞きます。逆に日本から見たら社会的に人生が終わる大麻なんかは、海外では誰でも吸っている訳ですし、国によって倫理観が異なるのはいつも興味深いなぁ、と思うんです。駅前に風俗の看板が堂々と建っているのも、欧米の人から見たら度肝を抜く光景でしょうしね。

 

 なんだか、話が大幅に逸れてしまいましたが、そんな外でヘベレケになっても罰せられない日本でも、ついに白い目で見られるようになってしまったり、最悪の場合憲兵みたいな連中に注意されるようになってしまったのは、本当に世知辛い世の中になってしまったなぁ、と思う訳です。それを科学的データや提言を無視してコロナを広めまくった挙句、全てはお上のいうことを聞かない国民が悪い、みたいな言い方をされたら溜まったもんじゃないですよ。この惨状には休業要請も止む無しだとは思いますが、しっかり補償して市民を守りなさいよ。じゃないと、和製アル・カポネがそのうち生まれて大暴れしますよ!

 

カポネの舎弟 やまと魂

カポネの舎弟 やまと魂

  • 発売日: 2018/10/24
  • メディア: Prime Video
 

 

*1:実際、僕の知っている範囲では日本の感覚でベロンベロンに酔っ払って道を歩いていた留学生が警察に見つかって留置所に入れられたりしてました

『隔たる世界の二人』を観た

 Netflixオリジナルで配信中の『隔たる世界の二人』を観た。黒人青年が警察官に言いがかりで殺されてしまう朝を永遠にループしてしまうショートSFで、アカデミー賞にノミネートされている。粗筋から分かる通り、昨年世界中で展開されたBLM運動をモチーフにしている。

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 僕がBLMを題材にしたスケッチを作った時、ネットを通じて知り合った黒人の学生に脚本を添削してもらっていた。脚本の初稿を渡した時に、彼には「このレベルのものだったら世に出すべきではない」と厳しく言われた。僕はBLM運動が盛り上がっている今だからこそ、このスケッチを作るべきだと主張したけれど、彼に「BLMは今盛り上がっているけど、黒人に対する不当な暴力はずっと前からそこに存在していた。だから流行りに便乗するだけのつもりなら、差別の本質を伝えるスケッチを撮らない限り作るべきではない」と言われてハッとして、自分の浅はかさを心底反省した。でも、彼のお陰でより洗練された脚本が仕上がったと思うし、結果として全員が満足いくものができた上、黒人への差別問題を啓発する良質なスケッチができたと自負している。

 

 

 『隔たる世界の二人』の短編としての巧みさは、まさにこの警察による暴力を永遠に続くタイムループもののジャンルに落とし込んだことだと思う。この映画が作られたことにはBLMの影響はもちろんあるが、理不尽な暴力や差別はずっとアメリカに存在し続けていた問題であり、ループのように終わらない地獄なのだ。後半、主人公が銃で撃たれた際にできる血痕がアフリカ大陸の形を作るのが、その残酷な歴史の長さを物語る。

 

 一方で、映画作品の技巧的な欠点としては、テーマを語りすぎているところはある。僕は言葉や文字に頼らない演出を好むが、本作はただでさえ設定上テーマが伝わりやすいのに、劇中でジョージ・フロイドやブリアナ・テイラーの名前をグラフィティとして堂々と出すのは、いささかテーマを強調しすぎているような気がして、正直ノイズになってしまった。

 

 ただ、エンディングで圧倒されるのは、ここ数年警察の不当な暴力により犠牲となった「ほんの一部」の黒人たちの名前が、あまりにも多く映し出されることだ。ジョージ・フロイド事件から1年経った今年ももう既に何件か似た事件が起きている。全く変わる気がしないこの地獄なようなシステムから抜け出すためには、画面の背景に犠牲者の名前を出すくらいでは実は強調がまだまだ足りないくらいなのかもしれない。

 

ショートコント『品不足』公開!

 今日は撮影仕事終わりで疲れておりますが!しっかりと作ったコントの宣伝はしておきましょう。

 

 自分で今回のスケッチを取るにあたり、去年そういえば何が売り切れてたかなと色々調べたんですけど、小麦粉とか確かに売り切れていましたね。あと今回取り上げませんでしたが、細かいところでは納豆なんかも免疫力がつくとかなんとか言って売り切れていた気がします。僕は納豆中毒なので、あの時期は非常に困りましたね。

 

 なお、後半の『エヴァ』ネタは、怖い怖いと言いながら見たい映画を見に映画館に行ってしまう自分の複雑な心理を自虐してみました。あまり怒らないでくださいね!

 

 あれから1年経って、収まるばかりか三度目の緊急事態宣言を間も無く迎えようとしておりますが、くれぐれも読者の皆さんは健康で過ごされることを心から祈っております。

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早朝仕事!

 先週末見た大傑作映画『Judas and the Black Messiah』のレビューを書いていたんですけど、明日5:30出発の早朝仕事があるので、泣く泣く切り上げます。疲れて続きを明日かけないかもしれないですが、先に謝っておきます、すみません…。最近このブログはSKITBOOKの新作とオンライン飲み会の告知しかしていない気がして映画ブログとしての体を為していないので困ったものです、昼更新に移行するなど、対策を考えます。

 

Judas and the Black Messiah: The Inspired Album [Explicit]

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  • 発売日: 2021/02/12
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

今アジアの波が来ている!

 今日はアジア人の映画&NBAファンとして最良の日!まず超絶嬉しかったのは、渡邊雄太選手がトロント・ラプターズの本契約を勝ち取ったことですね。

 

 ドラフト外からグリズリーズで下部リーグのGリーグと行き来する2WAY契約と結びましたが、なかなか本契約には結びつかず昨シーズン終了後には契約は更新されませんでした。今季はラプターズに目をつけられて、トロントに加入した後は絶好調でエグジビット10契約→2WAYと契約内容を上げていき、更にはここ最近の試合でもキャリアハイのスタッツを連発して頭角をメキメキ現していたところ、本日本契約がサプライズ告知されました。

 

 余談ですが、ラプターズといえば、今はGリーグでプレーしていたジェレミー・リンがNBAに最後にいたチームがラプターズだったんですね。前にもアジア系選手がNBAで生きる苦難について書いたかと思いますが、2019年にラプターズに移籍後、思うように結果が出ず、プレーオフでは中々試合には出してもらえなかったのに皮肉にも優勝してしまい、その後ラプターズからは契約更新されず、FAになってもどのチームからも契約オファーがありませんでした。

 

 ジェレミー・リンがリンサニティという一大旋風を巻き起こしながらも、常に契約面で悪戦苦闘していたのはNBAないしは米スポーツ界におけるアジア系への構造的差別があることと無関係ではありません。それだけアジア系がNBAで活躍することは大変なはずなのに、ドラフト外から契約まで勝ち取った渡邊雄太選手の実力と努力が立派に認められたということで、これが世界中のアジア系バスケットボール選手たちにとってどれほど希望を与えたことでしょうか。*1

 

 もう一つハッピーになれたのは、マーベルが『シャン・チー テンリングスの伝説』の特報をサプライズ公開したことです。

 

 これは主演のシム・リウの誕生日に合わせてマーベルが電撃公開したもので、なんとシム・リウさえ本日リリースされることを知らず、Twitterで大喜びしている微笑ましい光景が見られました。2018年の『クレイジー・リッチ!』のお陰で、幾分かアジア系をフィーチャーした映画が作られ安くなったとは思いますが、まだまだその数は多くはありません。『シャン・チー』は『クレイジー・リッチ!』が開けた風穴を更に大きくしてくれることを期待しています。また、その『クレイジー・リッチ!』に出ていたオークワフィーナがいつもの平常運転で『シャン・チー』にも出演しているのがファンとしては嬉しいですね。

 

 そういや、今日はたまたま朝にハッフィングトン・ポストでロンドンを拠点とするアーティスト リナ・サワヤマの記事を読んだばかりでした。世界中でアジア系が自由にスポーツや映画、音楽といった舞台で、ポップカルチャーに大きな影響を与えているのは同じアジアの民として誇らしいことです。

 

 一方で、新型コロナウイルスにより、これまで世界中で潜在的に存在していたアジア系への偏見や差別が一気に表出したのも悲しい事実ではあります。全米で今#StopAsianHate 運動が声高に叫ばれていますが、こうした暗い世の中で燦々と輝く渡邊雄太やシム・リウ、リナ・サワヤマといったスーパースターたちがアジア系の子供達に希望を与え、次のスターを生み出していくのだと思います。今アジアン・カルチャーが熱い!

 

 

*1:もちろん、ドラフト1巡目で1年目からウィザーズのスターターとして定着した八村塁も忘れてはいけません!