Taiyaki生きてます通信#7/アメリカの床屋には絶対に行くな。

 アメリカに来て地味に困ってるのは散髪だ。骨格の問題なのだろうか、アーカンソーの人間はアジア人の髪を切るのがとにかく下手くそなのである。

 

 
 一番最初に床屋に行ったのは去年の9月で、アメリカ人のクラスメートに連れられてショッピングモール内の美容院に行った。僕が渡米したのは去年の5月末なので、約3ヶ月放置した頭髪は吹屋の裏庭のようにボーボーになっていた。
 
 僕がここまで放置していたのは、先に留学していた日本人から「こっちの床屋は絶対に利用しない方がいい」と忠告を受けていたので、散髪しようにも行く勇気がなかったからだ。とはいうものの流石に3ヶ月伸びに伸びきった髪は煩わしくて仕方がなく、そんな折にクラスメートがモールに髪を切りに行くというので、何事も経験だと自分に言い聞かせてついていった。
 
 ところでこのクラスメート、なんというかいつもFacebookに毎日自撮りを載せるほどナルシストで、「将来は有名人になりたい」「自分の美しさに自信を持っている」と豪語するやつで、この時点で色々察すべきであった。
 
 さて、ショッピングモール内の美容室に行き、待っている間に散髪用語を調べようと思ったのだが、平日だったからか空いておりそんな間もなく席に座らせた。
 
 「今日はどんな風にする?」とスタイリストの黒人のちゃんねーに聞かれたが、下手に冒険はしたくなかったので、日本で散髪に行く感覚で「ナチュラルに短くお願いします」と答えた。注文を聞き終わった途端にケープとスプレーをかけられて「え、シャワーしないの!?」と軽くビビる。
 
 日本の床屋みたいに「どこから来たの?」とか「学生?」とか色々話しかけてきたが、会話に全く集中できない。眼鏡をかけていなかったのでどういう髪型になってるか分からないというのもあったが、思いっきり髪をムズッと掴んで雑にバサっと切られてるのが感覚的にわかる、というかハッキリ言って痛いのである。頼むから僕と喋るより僕の頭髪に意識を向けて欲しかった。
 
 数分後に「できたわ」と言われ、眼鏡を渡され鏡を見て絶句。見事なオカッパ頭になっていた。「どう?」とニコやかに感想を聞かれたが、どうもクソもいいわけねーだろとは言えず、日本人らしい事なかれ主義が出てしまい、あまり相手を傷つけないよう自分の前髪を指し、「ここがストレートになっていて不自然だから、もっと自然にしてもらえませんか?」と笑顔で注文した。オカッパという単語が出てこないのは困った。スタイリストは「ああ、わかったわ、OK!」と愛想のいい返事をして前髪に再び取り掛かる。「おお、通じたか」と一瞬安心してしまった。
 
 また数分後に「できたわ」と言われて眼鏡を渡された時、そこには前髪が数センチ短くなっただけのオカッパがいた。「どう?」と聞かれた時に思わず「てめーぶっ殺すぞ、このクソアマ!」という表情が顔に出てしまっていた。その表情が伝わったのか、「じゃあどうしたらいいのか正確に教えてよ!」と若干半ギレで聞かれた。「なんで逆キレてんだよ!」と思いながらも、必死に身振り手振りで「いいですか、この前髪が一直線にストレートになってるでしょ?それが僕は好きじゃないから、もうちょっと自然にバラつけてくれる?」と懇切丁寧に伝えた。するとまた「ああ、はいはい、OK!」といって前髪に取り掛かったが、もうそのOKになんの信用もなかった。
 
 さらに数分後「どう?」と聞かれて眼鏡を渡された時、Mr.スポック*1が座っていただけだった。もうこれ以上頼んだ所で貴重な前髪が死に絶えてしまうだけだと察知した僕は、「うん、OK👍」と勢いよく席を降りた。あとで絶望の記録として撮った写真がこちらである。
 
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  値段は$25した。死ね!
 
 なお、店を出て合流したそのクラスメートは、「Oh my god, you look so awesome...原文ママ)」と感嘆していた。いや、これ嫌味やお世辞に聞こえるかもしれないが、そいつは心の底からこのスポックヘアーを褒めていて、僕が不機嫌なのも理解できないらしく、ちょっと呆れ果ててしまった。日米の美容感の違いなのだろうか、はたまたそいつがおかしいのか
 
 忠告は聞くもんである。この経験を通して逆に日本の至れり尽くせりの理髪店の素晴らしさに感心してしまった。もしこれから留学やアメリカに転勤になった方がいたら、近くにアジア人が経営する理髪店があるかよほどコミュニケーションに自信がある人じゃない限り散髪には行かない方がいいです。ちなみに僕はそれ以降日本人の友達に髪を切ってもらうようになりました。もちろんタダよ!
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*1:参考

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