今参加している現場にはイギリス人が多くてですね、イギリスはたくさんのハリウッド映画のロケ地になっているので、聞き耳を立てていると色んな大作・名作映画、これから公開される予定の話題作の裏話をスタッフ同士で雑談で話しているが聞こえてきます。この時ばかりは目の前の仕事を忘れ、純粋な映画ファンに戻ってしまうのですが、ちょっと笑っちゃったのがマーベル映画への愚痴がめちゃくちゃ多いんですね。
まだこれから公開されるある作品に関して、某スタッフは「今まで参加して現場の中で1番最悪だった」と言っていました。この作品の噂は業界内でも広まっていたようで、彼女がその作品に参加したと聞いていた別のスタッフは「あれ、相当酷かったんでしょ?」と返していました。
また、更に別のスタッフも過去にある作品に参加したようで、それはもう大変な有様だったらしいのですが、「3年半も時間を費やした作品をいざ劇場に観に行ったら、クソみたいな仕上がりでやるせない気持ちになった」とボヤいていました。
また、このスタッフによると、その作品は大規模な追加撮影があったようでした。元々は5月に撮影していてその気温や日光条件などもとても良かったのに、スタジオの鶴の一声で翌年2月に撮影することになり、今度は天気も最悪だし日当たりも全然綺麗に見えず、画としてのクオリティは相当下がったようです。
こんな感じでメイン撮影が終わってもツギハギのように映画を作っていくのがマーベル映画のスタイルですが、彼は「追加撮影で撮影の要素はパッチワークできても、後からストーリーをツギハギして作ることは出来ない」と今のマーベル映画の本質をつくような批判を言っていました。
僕が彼らの愚痴を聞いていてちょっと悲しくなるのは、今のマーベルや『スター・ウォーズ』作品に参加して誇りに思っている現場スタッフがいなさそうなんですよね。誤解なきよう、両フランチャイズともに映画史や業界に残したインパクトは大きかったはずですし、かつては参加しているスタッフのモチベーションも高かったはずです。それがディズニーが極めて資本主義的・商業主義的なアプローチをとった結果、両フランチャイズのレガシーを汚し、業界内の評判を落としたのは大変罪深いと思います。
でもまあ、ある若いスタッフは「マーベル映画はギャラがいいので、ローンが払えるのは仕事としてありがたい」とも言っていました。そういう視点も確かに大事だね。