僕はアメリカンコメディが大好きで、憧れがある。僕は映画が作りたい、というよりは、アメリカンコメディみたいな映画が作りたい、っていうのが正確なところで、それがアメリカに渡った遠因の一つだった。
そしてアメコメが好きな身としては、スタンダップコメディにも一定の憧憬を抱いており、一度でいいからやってみたい願望があった。調べてみると東京にスタンダップコメディを定期的に行なっている団体があることが分かり、しかも素人でも参加できるオープンマイクのイベントを豊島区のバーでやるということで、せっかくプータローで時間があるんで人生初のスタンダップコメディを披露してきたのである。
朝からNetflixにあるトレヴァー・ノアのショーを見てなんとなくイメトレに励み、台本を書いて規則の4分以内に収まるかブツブツ練習してみたり、一日中ソワソワして緊張していた。一人で行くのも心細いので何人か誘ってみたものの誰も空いておらず結局一人で馳せ参じてみたが、よくよく考えるとタダでさえ緊張してるのに知人がいたら小っ恥ずかしくてスタンダップどころでは無かったはずだから、結果的に一人で行って大正解だった。
アメリカンコメディが大好きな僕が書いてきたジョークは全てアーカンソーで経験したカルチャーギャップものであった。バーに着いてみるとスタンダップを披露すべく集まったコメディファンが20人ほどいたが、アメリカ人は僅か3人〜4人ほどで、残りは日本人、中国人、イギリス人、ヨーロッパ系、インド人と実にバラエティに富んだ構成だった。半分以上は僕と同じく今日初めて参加する人達で、駐在外国人の方々なんかは友達作りも兼ねているようだ。
しかし、そうなってくると困るのは僕のアーカンソーネタである。勝手にスタンダップ=アメリカというステレオタイプで書き上げた僕のネタは通用するのだろうか。直前になってバクバクしてせっかく書いた台本を頭の中で書き換えたりしたが、結局アーカンソーネタ以外思いつかないまま、しかし脳内で構成をバラしてしまった不安定の状態なまま自分の番が来てしまった。
ええい、ままよ!とアーカンソー田舎ギャグ*1で挑んだところ、結果はややウケややスベりと言った具合。当然っちゃ当然の結果である。「アーカンソーは日本で言うところの島根なんですけど〜」なんて言ってみたが、そもそも外国人の方々に島根がピンと来なかった上に、島根県民の方々をイタズラに傷付けることになってしまった。この場を借りて島根県民の皆様には謹んでお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。
何はともあれ、僕が鉄板でウケるだろ!と思っていた箇所が一つどん滑ってしまい、ショックで軽くネタが飛んだというハプニングがあったものの、何とか思い出して言いたいジョークを全て放って持ち時間の4分を終えることが出来た。頭の中ではトレヴァー・ノアやアジズ・アンサリをイメージしていたが、勿論そんなトップコメディアンみたいに簡単に行くなら苦労しない訳で、初心者ならではの参加賞のような暖かいが残酷な拍手を貰ってステージを降りた。一応記念すべき初スタンダップを隣に座っていたインド人のお客さんに録画してもらったが、これは黒歴史として処理しておくので残念ながらブログには載せない。
とはいえ、自分で言うのもなんだが、大半が素人のこのイベント自体が全員僕みたいな出来だった*2ので、傷が最小限に抑えられたのは不幸中の幸いだった。勿論、最初に書いたように自分の最終的な目標はアメリカンコメディであるのでこんな所ではヘコタレず、次回があればもう一回チャレンジしたいが、スタンダップコメディの基礎を誰かに教えてもらいたいものである。アメリカに居た時にこそこういう活動をしていたらなぁ、と今更ながら後悔する歯痒い夜であった。