2019年も終わってしまう!ここ最近今年を総括する記事ばかり書いて来たが、未だに実感が沸かない。だってテン年代が終わってしまうのだ。でも、当ブログでは年末最後の更新はその年の年間ベストの発表なので、今この記事を書いているということは本当に新しい年が来てしまうという事だろう。現実を受け入れねば……。
何度も書いていて恐縮だが、2019年は自分にとって一生忘れられない激動の年であった。20代後半を4年も過ごしたアメリカ生活も突如として終わってしまい、人生が大きく舵を取るターニングポイントとなった。その行く末は分からないけれども、今年観た珠玉の映画たちの中から小さなコンパスを貰った気がする、と言ったらカッコつけすぎだろうか。
そんな僕が今年観た新作の本数は101本。なんと過去最高鑑賞本数記録である!といっても、下半期仕事を辞めてからの追い上げが半端なく、更にAMCシネマが月々$20払えば週(!?)に3本映画が見放題のサブスクリプションプランに加入していたことも拍車をかけた。数が多ければ多いほど当然たった10本まで絞り切るのが辛くなってしまうが、今年も泣いて馬借を斬る思いで頑張っていきたい。
はい、ということでテン年代最後のベストテン、行ってみよう!
目次
【特記事項】
- 2019年12月31日までに僕が鑑賞した作品のうち、今年劇場にて公開・または配信された新作の本数は101本 が対象。よってリバイバル作品や名画座上映は含まれない。
- Twitterに載せた★の数、上半期ベスト&ワースト、コメディ映画ベストテンとは評価が違う作品もあると思いますが、その時々の気分に左右されるのでご了承ください。
【2019年映画ベストテン】
- パラサイト/半地下の住人
- Booksmart
- ジョン・ウィック:パラベラム
- ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
- シャザム!
- ストーリー・オブ・マイライフ/わたしたちの若草物語
- アイリッシュマン
- アンカット・ダイヤモンド
- 名探偵ピカチュウ
- The Farewell
【ベストテン解説】
来年オリンピックなんで、上位3本は何となくメダルカラーにしてみました。てへぺろ!ベストは心の域値を超えたかどうかを基準に選んでいる。
①は圧倒的。あまりにも面白くて、この映画以降に鑑賞した作品は正直全て物足りなく感じてしまった。ゲラゲラ笑っていたかと思うと唐突に戦慄する。僕の中ではサスペンスの名手としてのポン・ジュノ最高傑作。日本では先週末公開されたばかりですが、もっとネタバレ込みで皆さんと語りたいから早く皆観てください。なお、テーマが似通っている『アス』はここに吸収合併されました。
昨日のコメディベストテン*1 では『Good Boys』の方をベストにした*2もので、総合では②を選出。少年だけじゃなくて、少女にだって友達より大人の階段を選ばなきゃいけない時が訪れるんだ。
今年のアクション映画としてのベストは③。スタントがあまりにも人間離れし過ぎていて笑うしかなかった。NY映画としても楽しく、2年住んだ街にも見納め、ということで。
④の初回をNYの劇場で観た時、途中までこの映画は一体何がしたいんだろう?という気がないでも無かったが、クライマックスは劇場が揺れるんじゃないかってくらい観客全員腹抱えていて笑ってて、あのグルーヴ感は最高だった。2回目も観に行ったけど、何もクライマックスだけじゃなくて60年代の終わりへの寂寥感も感じて良かった。
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僕にとって今年のアメコミ映画は『エンドゲーム』ではなくて⑤なんだな*3。複雑になり過ぎたアメコミヒーローというジャンルを再構築し、逆説的にこれ以上ないくらい王道なヒーロー映画を生み出した。疑似家族モノとしても泣けるし、誰でもヒーローになれる可能性を示すクライマックスも最高で、非常に重層的。それを日本のふざけたことに吹き替え版では福d...(長くなるので強制終了)
実は今日観てきたばかりの⑥はとにかく四姉妹の活発で希望に満ちてて疾走感のある生き様を観ているだけで幸せな気持ちになった。なお、今年は『ハスラーズ』『スキャンダル』など、様々なフェミニズムやガールズエンパワーな傑作が公開されましたが、それらも全て⑥に吸収合併された。それにしても、何だこの邦題……。
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Netflix作品の⑦は劇場で観たが、インターネットに馴染みが無さそうなご年配の方々で満席の劇場で、3時間半みっちりロバート・デ・ニーロやアル・パチーノ、ジョー・ペシといった大御所が映る銀幕を眺めているだけで「ああ、映画を観ているんだなぁ」という得体の知れない満足感があった。スコセッシやデニーロまでキャリアの総括みたいな映画を作り始めてるのはなんか寂しくなるけど…。
⑧は相変わらず不運のドミノ倒しを描かせたら天下一品のサフディ兄弟の傑作なのですけれども、まず今年NBAにハマったばかりの僕にとって、NBAがストーリー上大事な要素になっているのは勿体ないご褒美だった。また、僕がNYに越したての頃、「NYの5番街と47丁目にはユダヤ人が宝石商を立ち並び、奴らがマンハッタン中の富を独占し、影の権力者として君臨してるんだ」なんて陰謀論めいた事をアパートの大家から聞いて、当時「ほーん」くらいに留めてたのだが、⑧は正にそのダイヤモンド・ディストリクトを舞台にした映画だったので、これもNY生活総括としてランクイン。
ここ数年ハリウッドでは80年代オマージュを取り入れた作品が多くて食傷気味だったが、⑨で遂に90版代まで郷愁と消費の対象とされ始めたので狼狽えたが、悔しいけど嬉しいんだよ…。そして『GODZILLA ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』もここに吸収合併。……なんて便利な言葉なんだ!
⑩は今年に亡くなった祖母への追悼の意を込めて。
【2019年忘れ難し!20】
そして毎年やってるズルい特別枠だが、当然好きな映画が10本なんかで収まるわけがなく、更に先述したように100本以上見てるので20本でも収まらない。なんで、今年は「忘れ難し!」と脳裏に焼き付いた映画をベストの他に更に20本選んだ。
- アンダー・ザ・シルバーレイク……アメリカでは今年公開。観てるこっちも主人公と一緒に悪魔迷宮に迷い込んでいく感覚を抱くのが超最高!
- ミッドサマー……自分の失恋経験を元にこんなトラウマ映画撮るアリ・アスター本当に頭おかしい。本人には悪いけど映画ファンの為にはもっともっと不幸になってほしい。
- QUEEN & SLIM……『明日に向かって撃て!』ミーツ「ブラック・ライヴズ・マター」。行きずりで全米を逃亡する羽目になったクイーンとスリムが儚くも美しい。
- マリッジ・ストーリー……アダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンの迫真の喧嘩シーンが素晴らし過ぎる。別れる二人だって、一度は愛し合った二人なんだ…。
- トイ・ストーリー4……『トイ・ストーリー3』の続編というあまりにも高いハードルを乗り越えたのには驚いた。アンディの成長も見届け、遂にウッディ自身の選択の話になって泣ける。
- ファイティング・ファミリー……母国から遠く離れた地で孤独に頑張る主人公には感情移入せざるを得なくて号泣した。
- リチャード・ジュエル……全く余計な贅肉がないシンプルな出来で、こんなクオリティのものを年一ペースで量産しているイーストウッドはもう仙人の域。
- ナイアズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密……ライアン・ジョンソンは『最後のジェダイ』の汚名を完全に返上した。「トランプ以後のアメリカ」を組み込んだ脚本も見事。
- ドクター・スリープ……こちらも『シャイニング』の続編という高過ぎるハードルをクリアした時点で最高。ファンに媚びたオマージュに腐心しなかったのが素晴らしい。
- フォードVSフェラーリ……ブ、ブ、ブロマンスだぁぁぁ!(大歓喜)
- FYRE 夢に終わった史上最高のパーティー……俄かに信じがたいデスマーチが全く他人事じゃなくて臨場感が半端なかった。
- ヒックとドラゴン 聖地への冒険……今時珍しい、どこに出しても恥ずかしくない3部作に見事に仕上がったと思う。
- ブライトバーン/恐怖の拡散者…『スーパーマン/思春期編』。自我同一性や性の目覚め、それ故の中二病は万国・全宇宙共通なようで、その哀愁が見事に表現されていた。
- ジョーカー……いろんな人に感想聞かれるたびにお茶を濁したり、意地悪い答え方してましたが、まあ、好きっちゃ好きです。
- 新聞記者……色々言いたい事も無くは無いが、この閉塞感ある日本でその空気感をありのままに映した作品を作れたことがとにかく素晴らしい。
- 21 Bridges……逃亡中の強盗犯を捕まえる為に21の橋を封鎖してマンハッタン封鎖!70年代クライムムービーを想起させるハードボイルドなアクションがNYで繰り広げられる事に地元観客と一緒に盛り上がった。
- クロール-凶暴領域-……ハリケーンで水没した家をワニが襲う、というとんでもなくバカな設定が全く嘘くさくなく正当なスリラーになってて、アレクサンドル・アジャの演出力には感心した。
- 天気の子……新海誠のあまりの童貞的世界観が究極の選択を描いていて超気持ち悪くて最高だった!これぞ作家性。
- 流転の地球……なんとバカなプロットなんだ!しかしこの大作こそ如何に巨大な現代中国の経済力を証明している。
- 6アンダーグラウンド……面白いかどうかは置いといて、とてつもなく狂った何かが生み出されてしまったことは確か。
【2019年ワーストテン】
- スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け
- マレフィセント2
- ダンボ
- キャッツ
- イエスタデイ
- ワイルド・スピード/スーパーコンボ
- ターミネーター:ニューフェイト
- アラジン
- アナと雪の女王2
- スペシャル・アクターズ
【ワーストテン解説】
①まあ、僕も皇帝に立ち向かうレイみたいな気持ちを抱いてその結末を見届けたシークエルなので、歪んだ愛情も込めてワーストワンにしておく。
そう意味で真のワーストは②。誰が一体誰の為に作らざるを得なかった企画なのか全く持って不明。アニメ版のテーマを殺した③も実写の重力に抗えなかった⑧もエルサが舐めた選択をした⑨も今年はディズニーが酷かった。って①もか。今後もこういうヌルい作品が増えてくると思うので不安。
④はVFXがどーのとかいう問題以前に、単純に画として奥行きがなくて地味でつまらない。あんな気味の悪い猫ちゃん達引っ提げて画が面白くないって何事だよ!
⑤はビートルズが後世に与えた影響力への想像力が貧弱すぎる。オチのつけどころもナメてるとしか言いようがない。ビートルズ不敬罪に処す!
今まで「車が空を飛んだ!」とか「魚雷を素手で押した!」とかそのバカさっぷりを喜んでいた『ワイルド・スピード』シリーズだが、⑥はちょっと許容範囲を超えてしまったみたいだ…。すまん、でもシリーズは今後も一生愛し続けるよ。
⑦は公式が「『ターミネーター2』以来の傑作」と煽っていたが、「『T2』以来の最高傑作」が「『T2』を繰り返すこと」なら、もう新作はこれ以上作らなくて結構。
⑩は本当は大好きな作品で楽しんだからここには載せたくないけれど、やっぱり僕は最後の大オチを許せないんだよ。演技の力を信じてないじゃん……。
【総評】
ベストもワーストも一位はすぐに決まった。韓国映画がベストワンになったのはこのブログ史上初。2015年以来の合計30本ベストにしたくらいだから、今年は結構豊作だった。それにしてもベスト30本中4本は配信作品だから、映画界の勢力図の変化が目立ってきた。
今年のベストテンとワーストテンは割と対称的だと思ってて、ほとんどのベストテンは題材の調理法が独創的で、『スペシャル・アクターズ』を除いてワーストテンはファンが喜びそうな素材だけ出して「おいしいでしょ?」って聞いてくる感じ。ワーストは『スペシャル・アクターズ』以外全部既存IPの使い回しだし。
ということで、2020年、いや2020年代の映画も楽しみに生きていきたいと思います。それでは、良いお年を!
【過去のベスト&ワースト】