ストリーミングの苦しみ、IPの強み

 本日、大手映像コンテンツ配信会社に勤めていた友人の話。僕が以前ブログにも書いた、某大手配信会社が日本オリジナルの作品が全く利益にならないため、日本オリジナルのコンテンツの制作をやめるかもしれない、という話をしたら「だろうな〜」と鼻で笑っていた。てっきり今は大ストリーミング時代だと思っていたのに、実態としてはどこのストリーミング会社もコンテンツ作りに頭を抱えているそうだ。

 

 配信サービスにおいてコンテンツの作り方は二つある。ライセンスを買うか、一から企画を育てるか、だ。前者は簡単だ。すでに劇場で公開してヒットした作品やテレビで高視聴率を記録したシリーズだったら、その配信権を購入するだけで人々は勝手に見てくれる。いわば強力なIPな訳だ。

 

 しかし、一方で一から企画を育てる場合、番組制作そのものの予算もそうだが、プロモーション費用も相当にかけなければいけない。企画にゴーサインを出すのも各配信サービスが独自に築いた利用者データによる未来予測を根拠にする他ない。民放製作のテレビドラマや映画だったら局を挙げて宣伝すればいいが、そうした強力な地盤がない配信サービスは色んなメディアの広告枠を積極的に買っていくしかない。

 

 しかし、世の中にコンテンツが溢れ出る中、ここまでやってバズる作品はそう多くない。全てのストリーミングサービスは強力なオリジナルIPを求めており、『ストレンジャー・シングス』や『イカゲーム』のような番組は奇跡に近い。だからリスクのあるオリジナルの作品よりも、漫画やアニメの実写映像化作品が多くなってくるのは必然に近い。

 

 と、「へー」と聞いていたが、実はこれはそんなに新しい話ではなく、もう既に映画業界やテレビ業界で起きていることだ。大手のスタジオが作る映画がアメコミスーパーヒーロー物だらけなのは、投資した分だけ簡単に利益を得ることができるからだ。そう考えると『NOPE』をヒットさせたジョーダン・ピールはすごいと思ったが、よくよく考えたらジョーダン・ピール自身が既に「キー&ピール」としてアメリカでは広く大衆に知られた存在であり、ある意味では「ジョーダン・ピール」印というブランドになっているからこそ、彼はオリジナル作品が作りやすくかつヒットさせやすいのかもしれない。

 

 そして有名な話、1960年の時点でハリウッドではヒット小説やリメイク物ばかりだとフレッド・ジンネマンは嘆いていた。メインストリームとなるメディアはこの60年で目まぐるしく変わってきたが、歴史はただ繰り返す、といことなのかもしれない。