たった今見たNHK BSのドキュメンタリー『縦の支配 中国 ショートドラマの光と影』に震えた…!
このドキュメンタリーの舞台は河南省鄭州。鄭州はショートドラマ制作が盛んであり、「マイクロドラマの都」とも呼ばれている。そもそもショートドラマは中国発祥であるのだが、先の見えない経済不況と不安の中で、爽快感を求めて人々が夢中になった。中国経済の先行きの不透明さを予見したbytedance(TikTokの会社)は、縦動画やショートドラマに投資した。
Bytedanceはアルゴリズムヘビーの会社である。人間の感情や作品のクオリティは二の次、ただビッグデータに則って粗製濫造されていく作品群。そのことに自覚的でありながらもプラットフォームやクライアントの無茶な要求を飲んで低賃金・長時間労働を強いられ、疲弊していく撮影現場。クライアントの前では「こんな素晴らしい脚本ないですよ!」と媚を売りながら、カメラの前で「意味が分からない脚本だ」と嘆く監督の人間味に泣けてしまう。
ショートドラマの出資側の利点、制作側の欠点は、制作費が安いということだ。400万円の投資で、7億円もの利益を出したケースもあるという。職にあぶれた若者たちが1日2000円のギャラを求めて出演する一方で、コストパフォーマンスの良い投資先として見学に来る投資家のギャップが残酷である。実際、ショートドラマの長時間労働により昨年死者が出たそうだが、プロデューサーは非を決して認めない。また恐ろしいのは、圧倒的な低コスト・低時間で作品を大量生産できるAIショートドラマの影が忍び寄っていることである。
中国や日本に限らず世界でショートドラマは流行しているが、その病巣は全て「漠然とした不安」にある。作中内でも編集チームが語っているが、感動などは一切求めていない。考え出したら脚本の酷さがわかるので、とにかく編集のテンポを早くする。BGMと効果音の嵐で思考を停止させる。
ドーパミンを刺激するために作られるショートドラマは最早デジタルドラッグなのだが、そんな事は百も承知で金のために作り続けるしかない監督の姿は痛いほど分かる。本当は映画が撮りたい彼の一種の諦念に似た感情をカメラに捉えた、NHKの制作者たちの同じ映像クリエイターとしての共感溢れる傑作だった。
5/20深夜に再放送があるみたいなので、見逃した方は是非…!(あと、ショートドラマに夢中な層には多分このドキュメンタリーが届かないのも皮肉だと思う)