『YOLO 百元の恋』観たんだが…

 今日は嫁さんと『YOLO 百元の恋』を観に行ったんだけど、うーん、微妙だったな。なお、原作はアツくなる面白い映画ではあったが、僕は性的表現にかなり問題がある映画だと思っている。詳しくは以下の通り。

 まず良いところから述べると、画面から見て分かる予算の差である。『百円の恋』は低予算で2週間で撮られたらしいが、『YOLO』は照明の作り方が大作のそれでルックだけでかなりお金がかけられていることが分かる。コメディアンのジャー・リンが自ら監督・主演しているが、なんて言ったって一年かけて制作して100kgまで増やした体重を50kgまで減らして撮影を行っているのだ。このリッチな画と体づくりはリメイク版の良いところと言える。

 

 一方で、いろんなエピソードが加えられてしまって、全体的には薄味になってしまった。特に従姉妹と関連したテレビ番組出演のオリジナルシーンは、ドゥ・ローインがボクシングにのめり込むキッカケのエピソードとしては強引であまり機能している気がせず(だってオリジナルで起きることは大体起きているので)、ぶっきらぼうな感じが良かったオリジナルの雰囲気もリメイク版だと「ハリウッド化」(中国だけど)されてポップな感じになったのもあまり好みではなかった。*1

 

 あと、個人的に一番残念というか呆れたのは、トレーニングのシーンで『ロッキー』のテーマを恥ずかしげもなく流用していたところだ。あれは『ロッキー』のパロディだったら成立するかもしれないけれど、あの楽曲を『ロッキー』シリーズ以外のボクシング映画で大真面目に使ってしまうのは、リスペクトがあるとはいえ余りにもベタすぎる選曲でちょっと見てられなかった。中国で『ロッキー』が有名じゃないから成立しているのかもしれないが、どうなのだろう…。

 

 だが、女性が監督となったことで、女性目線で物語が語り直されているのはよく、特に問題の「レイプシーン」をなくし、「初体験」のシーンも苦い思い出として処理したのはとても上手かったと思う。あと、終わり方も男性に依存せず、これからの戦いを匂わせるリメイク版の終わり方の方が良かった。

 

 

*1:ちなみに、嫁さん曰く台湾でも『YOLO』は原作と比べて「明るくポップ」にしていることが批判されているらしい。つまり、中国映画は当局の検閲が入ってしまうので、中国社会の暗部を見せないウルトラポジティブな映画か、プロパガンダ映画ばかり作られるので、台湾の観客にとっては多様性に欠けて面白くないそうだ