駆け込み鑑賞中!

 気が付きゃもう2021年も残すところあと2日!ということで、当ブログでは毎年12月30日にコメディ映画ベストテン、12月31日に年間ベストテンを発表する予定なのですが、ここ数日間で今年一年の体たらくが嘘だったかのように映画を見まくっております。

 

 正直な話、もう夏休みの宿題締め切り直前のような気持ちでヒィヒィ言いながら映画を観ておりまして、ひょっとして僕は映画好きと言えるのだろうか?という今更ながら疑問に駆られています。我ながらいよいよ倒錯していると思ったのは、今日Netflix映画の『Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』を観ようと思ったんですが、再生したらすぐにこの映画が『RENT/レント』の原作者の自伝的映画だということを知ってしまいました。

 

 そこで鑑賞を一旦停止してまずは2005年版の『RENT/レント』を鑑賞するところから始めまして、しかし個人的には全然刺さらない話だったので2時間分損をしたような気持ちになってしまったことです。そうこうしているうちに本日から『ボバ・フェット』が配信開始ということで、やっぱり気になって観てしまい現在に至ります。

 

 もう義務感で見る映画鑑賞ほど楽しくないものはないので、いい加減自分の中で踏ん切りをつけないなと思いつつ、この無理矢理時間作った映画の中で年間ベスト級の作品にも出会えましたので、明日明後日の残り少ない日数の中でまた傑作に出会えることを信じてひたすら映画を脳内にぶち込みます!

 

 

ポリティカル・コレクトネスについての所信表明

 今年の秋に参加した映画の現場での出来事。この映画は日本に住んでいるアメリカ人の舞台役者が自らの来日体験をベースにした自伝的映画であり、その日は主人公が不動産屋にアパートを借りに行くが、立て続けに断られるシーンを撮影する予定でした。

 

 すると、ロケ地まで移動するバスの中で、普段よく分からない電話やタバコを吸っているくらいしか姿を見かけないプロデューサーがこんなことを言い出しました。「台本の中の『ノー外人』って、やめたほうがいいんじゃないですかね?」つまり、コンプライアンス的に、「外人」という差別用語が引っかかるので、撮影直前になって使うのは止めた方がいいとのことだったんですね。

 

 結局、監督は彼の意見を飲んで「外人」ではなく、「外国人」という言葉にセリフが変わりました。監督はこれが初監督作だったし、何よりこの現場がトラブル続きだったので、穏便に済ませたかったことも関係しているんでしょう。が、大した発言権もない一スタッフの僕は静かにこの決断に怒っていました。こういう時だけ余計な発言をして現場を混乱させるプロデューサー*1と、そして何よりも監督の意思の弱さに対してです。

 

 なぜならば、先ほども言ったようにこれは監督自身の体験をベースにしている作品だからです。実際、外国人が不当に申請を却下されるケースは跡を経ちません*2。不動産屋から「ノー外人」とつっかえされたのは監督が実際に日本で受けた差別体験であり、まだ蔓延る差別の実態を描き出すなら「外人」ほど的確に言い当てる言葉はありません。

 

 しかし、この映画の場合は映画の最高責任者であるのは監督であり、僕にとっては究極どうでもいい話です。さて、自分のケースになりますが、僕は先日クリスマスを題材にしたスケッチコントを出しました。

 

 そしてTikTok上でこのコントを見た人から、僕が書いた「ゴチャゴチャうるせーぞ、この外人が!」という台詞に対し、「外人という言葉を使うな」という趣旨のコメントが多くきてましたので、僭越ながらこの機会に反論させていただきます。これはポリティカル・コレクトネスというものを履き違えていると思います。

 

 PCをシステマティックに当てはめ、コンプライアンスを恐れて潔癖症のように言葉狩りをすること*3は、逆説的にポリティカル・コレクトネスの本来の目的を見失わせます。

 

 例えば、英語には「ニガー(あまり簡単に書くのも憚られる言葉なので、以後はNワードと記します)」という黒人への差別用語があります。アメリカは日本以上にコンプライアンスに厳しい国ですし、SNS全盛期の現代でその傾向は益々強まっています。

 

 ですが、Nワードは映画やドラマにおいて頻繁に登場する言葉でもあります。それは黒人を差別する酷いキャラクターのセリフとしてです。平気でヘイトを行うような人が黒人をナジる時に「黒人(Black)」や「アフリカ系(African)」などポリコレに配慮した言葉を使うわけがありません。

 

 もちろん、作品のトーン、ターゲット層、テーマにもよるので、悪役だからといってNワードは軽々しく使っていいセリフでもありません。ですが、Nワードという観客がギョッとするような言葉をキャラクターに使わせることで、いかにそのキャラクターが邪悪な人間か理解することができ、また差別行為そのものの問題性や暴力性を浮かび上がらせることもできます。

 

 つまり、ここで大事なのはNワードが使われた文脈です。そして、物語上こういった差別用語が使われることで、観客は日常生活やインターネット上で差別用語を使うことが如何に酷いことか、より政治的正しさに自覚的になれるでしょう。

 

 余談ですが、当ブログでたびたびレビューしている『サウスパーク』には、あらゆる人種・ジェンダーに対する差別用語や描写が出てきます。放送当初から数えきれない人を怒らせてきたのは事実ですが、一方で14年経っても一回も打ち切られたことはありません。なぜなら『サウスパーク』は常に差別を風刺の対象として、あるいは批判の対象として描き、問題の本質を正確に突き続けてきたからです。

 

 では、一旦話を僕のコントに戻しましょう。こちらのコントはサンタが入管に尋問される内容ですが、わざわざ分かりやすく「名古屋」という言葉を出しているので聡明な皆さんならお分かりの通り、ウィシュマさんの悲劇などで悪名高い日本の入管の酷い対応を風刺したものです。*4

 

 外国人だからという理由で、相手がサンタクロースでも差別的で暴力的な扱いをする入管職員の恐ろしさを表現するセリフとして一番効果的な言い回しはなんでしょうか?

 

 是非文脈を読んでお考えください。この話はこれっきりにしますので。

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*1:大体、そういう指摘は脚本ができた段階ですべきであり、間違っても撮影開始直前のバスの中ですら会話じゃない

*2:大概データを出せと言われるので、先に釘を打っておきます

*3:これもいちいち注釈しないといけない世の中が面倒くさいのですが、ポリティカル・コレクトネスを無視するな、と言っているわけではないですからね

*4:また、僕がもう一つコメント欄で残念だと思うことは、ウィシュマさんや入管について触れたものが少なすぎる件です。あまりにも条件反射的に飛びつきすぎですし、『外国人が日本人に道を聞いた結果…』というコントであれだけ「日本ではこんなことを起きない」と憤っていた人が多かった割に…です。

昨日のお礼

 昨日はオンライン忘年会にご参加いただき、ありがとうございました!皆で忘れたいことを持ち寄って盛り上がり、とてもいい忘年会になったと思います。

 

 僕はと言いますと、このアーカイブを見ればご覧になる通り、馬鹿みたいなスピードで次から次へと酒を飲み、挙げ句の果てにはシャンパンも一本飲み干しまして、そこで止めておけばいいのにウィスキーまで手を出したのが運の尽き、配信が終わった瞬間に吐いて、それから寝ては吐いて寝ては吐いての苦しい一夜を過ごしました。せっかくの楽しい気持ちが台無しだったので、もういい歳なので来年からはもうちょっと自制してお酒を飲みたいと思います。

 

 さて、次回のオンライン飲み会予定ですが、ちょっと年始のスケジュールが読めないことも多く、今のところ未定とさせてください。また、来年はYouTubeにしてもブログにしても、もっといろんなことを企画して茶蓮子していく年にしたいと思っておりますので、その辺も含めて皆さんご期待ください!

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オンライン忘年会間も無く開場!

 本日配信予定のオンライン忘年会の会場はこちらです!

 

 忘年会ということで去年と同じく皆さんが2021年に忘れ去りたい愚痴を聞く配信となっております。

 

 会場はSKITBOOKのYouTubeチャンネルにて、愚痴はTwitterスペースを活用してラジオみたいに順番に聞かせていただければと思っております。また、YouTubeライブという仕掛け上、アーカイブに残ってしまいますので、気になる方はいつも通りお便りで愚痴を送っていただいても大丈夫です。

 

 お便りを送りたい方はhktaiyaki@gmail.comか、Twitter(https://twitter.com/skitbook​ )かInstagramhttps://instagram.com/skitbook)のDM/リプライか、ここのコメント欄か、匿名メッセージサイトのマシュマロでお知らせください。

 

ということで、また後ほど!

今年も『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』見て新事実を知る!(+12/26 忘年会のお知らせ)

  • 今年も今年で『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』を見返しました。といっても、正直仕事と編集で疲れていたので途中で寝てしまいましたけど、何回観ても切ないいいアニメですよね。

     

  •  で、毎回見るたびに新しい発見があるのも楽しいところですが、今回はハロウィンタウン町長の口の周りの皺模様が、実はアニメーション用の入れ替えパーツになっていることに気が付きました。機能性とデザイン性を兼ねそろえた素晴らしいデザインですね。

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  • 途中で寝ちゃったものだから、物足りなくてNetflixの『僕らを作った映画たち』の『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』回を見てみたんですけど、これが新しく知った情報の連続で驚きました。

    www.netflix.com

  • あ、ただ、『僕らを作った映画たち』のドキュメンタリーとしての作りはちょっと苦手でした…。あのナレーションと編集のテンションがちょっとクリンジー…。
  • とにもかくにも、まずドキュメンタリーをみて知ったのは、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』はティム・バートンに思ってる以上に権限があり、しかし思ってた以上にティム・バートンが制作に参加しなかったことですね。これは僕も去年の記事で少し書いたかと思いますが、それにしてもこれほどまでだとは思いませんでした。どちらかというと役割としてはエグゼグティブ・プロデューサーに近いですね。
  • といってもバートンは『バットマン・リターンズ』の現場で忙しかったためであり、ディズニー時代から温めていた企画である『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』に対する情熱はあったので、ビジュアル面での責任者は古くからの友人で信頼のおけるリック・ハインリックスに任せ、監督としてバートンとハインリックスのディズニー時代の同僚であるヘンリー・セリックに頼んだ、ということだったんですね。
  • そして、制作が開始してもマイケル・ダクウェルの脚本が中々仕上がらず、業を煮やしたダニー・エルフマンがまずミュージカル楽曲を作ることでやっと撮影がスタートしました。ちなみに、ダニー・エルフマンはそれまでミュージカルすら作ったことがありませんでしたし、元々オインゴ・ボインゴのリーダーだったエルフマンが映画音楽を作ったのはバートンの『ピーウィーの大冒険』が初めてでした。
  • なお、ダクウェルが作った脚本は遅れていた上に全く良くなかったので、当時エルフマンと同棲していたキャロライン・トンプソンが書き直しました。これは今回見返していて思ったのですが、無邪気なキャラクターばかりのハロウィンタウンの世界で、サリーのみが唯一マトモで自立した女性として描かれています。元々のティム・バートンの原案では、サリーは「魔性の女」のような浅いキャラクターでいまいち納得しづらかったので、トンプソンが一から作り直しました。サリーには更にトンプソン自身も重ね合わせられており、キャラクター設計にはトンプソンが大きく貢献しています。
  • そして、ジャックにはダニー・エルフマンが大きくキャラクター形成に関わっていることも初めて知りました。というのも、エルフマン自身が当時オインゴ・ボインゴの活動にマンネリを感じていたらしく、どれだけ人気でも一切満たされることはなかったそうで、そうした気持ちをパンプキンキングにこめて作詞作曲したそうです。しかし、アフレコしていると歌唱パート以外でのジャックの声がノッペリしていたために、クリス・サランドンが別にアフレコすることになりました。これにはエルフマンも落ち込んだそうですが、僕は順番が逆だと思っていたので、これもビックリでした。
  • なお、僕はダニー・エルフマンが元々ロックバンドをやっていたことは全く知らず、さらにオインゴ・ボインゴは『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンド使いの兄弟としてしか知らなかったので、思わぬところで元ネタを知ってアハ体験でした。
  • もちろん、言わずもがなヘンリー・セリックの存在も大きく、色んなことが彼のアイディアを通して実現していたそうですが、当初はブギーの正体はフィンケルシュタイン博士だった、というオチを用意していたものの、ラッシュ編集版を見たバートンはブチギレてスタジオの壁に穴を蹴り開けてしまったので、渋々元のエンディングを取り直すことになりました。セリックに同情を禁じ得ません。
  • 予算不足や納期の遅れなど、さまざまな『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』はなんとか完成に漕ぎ着けましたが、ディズニーが試写会を行ったところ子供たちからの評判が悪かったために、タッチストーンピクチャーズのレーベルで公開しました。宣伝にも力を入れなかったので『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』は興行的には撃沈し、すぐに劇場からも姿を消しましたが、ビデオやDVDでファンが増えるとカルト的人気を生み出します。
  • そうすると腹立たしいのは、ディズニーがコロッと態度を変えてディズニー作品としてラベリングしなおしたことです。そもそも、この企画はバートンがディズニーのアニメーター時代から撮りたかった作品だったのにそれを実現させず、いざバートンが人気者になったら多忙になった彼を無理矢理引っ張ってきて無理のある予算と納期で製作させ、さらに劇場公開まで無碍に扱ってきた経緯を考えると、めちゃくちゃディズニーらしいムーブで非常に腹が立ちました。いつからなのか覚えてませんけど、今回ディズニー+で見た時も冒頭にシンデレラ城が追加されてましたしね…。
  • なにはともあれ、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』自体は色褪せない傑作であり、ドキュメンタリーを見たことで更に愛が増したので、来年以降も毎年クリスマスになると見るんだろうなぁと思います。

 


 

 というわけで、なんだか去年も『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』の記事を書いてから告知をしたような気がしますが、今年もオンライン忘年会を行います!12/26 20:00〜 で、忘年会ということで去年と同じく皆さんが2021年に忘れ去りたい愚痴を聞く配信となっております。

 

 会場はSKITBOOKのYouTubeチャンネルにて、愚痴はTwitterスペースを活用してラジオみたいに順番に聞かせていただければと思っております。また、

YouTubeライブという仕掛け上、アーカイブに残ってしまいますので、気になる方はいつも通りお便りで愚痴を送っていただいても大丈夫です。

 

 お便りを送りたい方はhktaiyaki@gmail.comか、Twitter(https://twitter.com/skitbook​ )かInstagramhttps://instagram.com/skitbook)のDM/リプライか、ここのコメント欄か、匿名メッセージサイトのマシュマロでお知らせください。

 

ということで、すっかり年の瀬!今年も残り一週間切ってるのでなんとか乗り切りましょう!