※『GODZILLA ゴジラ』(2014)のネタバレ全開です。ご注意ください。
※実は今までそんなに怪獣映画を観てなかったので、3月からゴジラ全28作+『ラドン』『モスラ』『海底軍艦』などの関連東宝特撮映画9本+1998年版『GODZILLA』を鑑賞するマラソンをしてから臨んだ、という前提でお読みください。
※どうでもいいが、『GODZILLA』公開日(7/25)は僕の誕生日でした。(しつこい)
ゴジラの咆哮に泣いた
いきなりにわかのお前如きが何をほざいてるんだと言われてしまいそう*1だが、本作のゴジラ初登場シーンで泣いてしまった。本作の上映時間と構造は『ジョーズ』(1975)と全く同じであり、ゴジラがまともに姿を現すのは本編始まって1時間後であるが、ギャレス・エドワーズの焦らし方がとにかく巧い。
冒頭からその存在をほのめかしつつも徹底して全貌は隠し、ハワイでのシーンで「やっとヤツが現れた!」と観客に明示してるのにまだ上半身は映さず、主人公絶体絶命の危機!というところで力強い一踏み、響く足音以外は無音となり、少しずつ少しずつカメラがティルトアップしてその巨躯をじっくりとみせ、観客が初めてご尊顔を拝した所で劇場を轟かす咆哮——。
「俺は帰ってきたぞ!」怪獣王の高らかな宣言である。畏敬のあまり、涙が止まらなくなってしまったのだ。
スピルバーグのDNAを受け継ぐギャレス・エドワーズ
『ジョーズ』と書いたが、多方面で指摘されているように『GODZILLA』はスピルバーグ映画のパスティーシュとなっている。全貌を中々見せない手法はスピルバーグの十八番で、『ジョーズ』の他にも『ジュラシック・パーク』でも披露している。そして空母の下を潜るゴジラは『ジョーズ』の、雨下のゴールデンゲートブリッジでのバスのシークエンスは『ジュラシック・パーク』のT-REX初登場シーンのオマージュとなっている。他にも川を流れる戦闘機や燃える列車で絶望感を出すのは『宇宙戦争』だし、ジンジャラ*2原発でのシークエンスは『未知との遭遇』っぽい。細かい部分でいえば、懐中電灯などで光りと陰を効果的に使った演出もあったり、なんとスピルバーグフェイス*3まで見れる。
ちなみに『GODZILLA』だけでなく、ギャレス・エドワーズの前作『モンスターズ/地球外生命体』でもスピルバーグに似た演出が多かった。恐らく、ギャレスは元々スピルバーグを尊敬していたのだろう。そして、今回の『GODZILLA』の監督としてギャレス・エドワーズを起用したトーマス・タルの判断は全くもって正しい。
何故ならスピルバーグは『ゴジラ』を観て育った映画監督*4であり、『ジョーズ』はサメを、『ジュラシック・パーク』は恐竜を、『宇宙戦争』はトライポッドをただゴジラから置き換えた怪獣映画であった。『ロスト・ワールド』のエンディングなんかはまんま『怪獣総進撃』の最後と同じだ。実際、90年代のハリウッド版製作時にスピルバーグにオファーがあったものの、彼はあまりにも『ゴジラ』が好きすぎるために断っている。
スピルバーグは映画に『ゴジラ』の怪獣映画精神を取り入れていたが、エメリッヒ版『ゴジラ』は『ジュラシック・パーク』の表面だけをパクる、という本末転倒のことをやってしまった。一方、今回ギャレス・エドワーズは『ゴジラ』をやるためにスピルバーグの手法を徹底的に研究し、結果的にそれがゴジラ映画の本質を捉える事となった。見事な怪獣映画精神の円環構造である。
全世代ゴジラのサンプリング
メディアでやたらと1954年の初代ゴジラとの類似性ばかり指摘されているが、実は結構初代っぽさは抑えめだったりする。むしろギャレス・エドワーズはインタビューで「好きなゴジラ映画は『怪獣総進撃』と『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』」とはっきりと答えている。だからどちらかというとゴジラは人類の敵としてよりも若干ヒロイックに描かれている。
その点についての不満は無くもないのだが、レジェゴジの素晴らしい点はゴジラは積極的な人類の味方としては描かれていないところだ。つまり、ゴジラは人類なんてハナから相手にしていない。確かに最後人々から歓声を浴びるゴジラには違和感を覚えるが、考えてもみて欲しい。ゴジラは上陸した時点で311ばりの大津波を起して登場しているのだ。ゴジラがMUTOと戦うのはあくまで自然界の調和のためであり、要が済んだらとっとと海に帰る*5。ゴジラは自然の調停者であるという新解釈は、1954年版と東宝チャンピオンまつり以後のキャラクター性の相違を中和する事に成功している。東日本大震災や福島原発事故をモチーフとして描くのもゴジラ映画として大正解。
ちなみに、ゴジラの放射熱線は平成のVSシリーズのようでもあり*6、100mという設定もVSシリーズからの引用だろう。悪役MUTOはミレニアムシリーズの敵怪獣に出てくるようなデザインであった。このように、各世代のファンに満遍なく目配せも忘れない所がレジェゴジの粋な計らいである。
映画館で映画を観る喜び
怪獣や特撮ファンだけでなく、全ての映画ファンは今すぐ『GODZILLA』を観に劇場(出来ればIMAXスクリーンの、前方で)へ向かうべきである。この『GODZILLA』には映画館で映画を観る事の意義がぎっしりつまっている。
先ほども書いたが、ゴジラが吠えれば劇場は震えるし、ゴジラが歩けば地響きがする。ゴジラの巨大な存在感が巧みに演出されており、登場人物達とシンクロして思わずスクリーンの上端を見上げてしまう。夜のシーンが多いが、暗闇の中画面に浮かび上がるゴジラは最高にかっこいい(DVDで見てもこの黒さは再現できまい)。ゴジラとMUTOがデスバトルを繰り広げる度にサンフランシスコは廃墟と化す、このスペクタクル。人間目線で取られてるシーンはさながらアトラクションのようでもある*7。
このブログでも何度か書いてきた事だが、こうした非日常を体験できるのは映画というメディアの特権だ。そして『GODZILLA』は人が誰しも秘めている破壊衝動を刺激してくれる。
♪怪獣サマのお通りだ カッコよくなんでも ぶっ飛ばせ!
続編では直して欲しい所
個人的にはこれで本年度ベスト3は確定した*8と言って良いほどの傑作ではあったが、文句が無いといえば嘘になる。世界中で大ヒットしたために、既に続編の制作が決定したと聞いたが、以下続編で直して欲しい所や出して欲しい要素を羅列して記事を終える。
人間ドラマを削る
中には「人間ドラマが薄っぺら」なんて批判もあるが、そもそもそんなもんいらん!ゴジラ映画の人間ドラマなんてカレーの福神漬け、回転寿しのガリ、ハンバーガーのピクルスくらいの価値しかない。申し訳程度に描けばそれで充分である。本作はゴジラの登場を焦らそうとしたために返ってその分人間ドラマを描かざるを得なくなり、中途半端になってしまった印象。次回作では冒頭30分でゴジラと敵怪獣を登場させて地獄絵図を展開して欲しい。
音楽をもっと伊福部昭っぽくする
本作の音楽を手がけたアレクサンドル・デスプラのテーマは、確かに伊福部テイストを意識はしていたが、サントラを全体的に聴いてみるとどちらかというとヒッチコック映画の音楽っぽい印象を受けた*9。『パシフィック・リム』のとあるシーンでかかる曲や『クローバーフィールド』の方が大分伊福部テイストを再現できていた。続編では音楽面を強化して欲しい。
しかし、本当は東宝から有名なテーマ曲を借りるのが一番いいと思うんだけど、権利的に中々難しいものなんかね?米軍が活躍するシーンで「怪獣大戦争マーチ」が流れれば失神する事間違いなしなんだけど。
怪獣大戦争マーチ Invasion of Astro-Monster - YouTube
軍隊の総力戦を描く
僕がゴジラ映画で一番好きなのは「G対策組織対ゴジラ」という構造だ。この基本構図へ作品毎に違う怪獣が乱入してきて楽しい怪獣プロレスが展開される。今回は主人公のアーロン・テイラー=ジョンソンの周りだけで物語が進んでいたので、そこがこじんまりしていて残念だった。田崎潤みたいな司令官が出てきて「メーサー銃、発射!」の掛け声でゴジラに総攻撃するシーンなんかがあれば最高だった。続編ではスーパー兵器も出して欲しい所。自衛隊ですら持ってるものを何故米軍が持ってない!
敵怪獣への要望
フタを開けてみればMUTOはカッコいい怪獣だったけど、MUTOというネーミングセンスが残念極まりない!続編で新怪獣出すなら「〇〇ン」とか「〇〇ラ」が望ましい。
あるいは東宝は続編でゴジラの他に怪獣を貸してあげたらどうだろう?レジェンダリー版キングギドラなんて考えただけで興奮する。それともデルトロにメガホン渡して『イェーガー対ゴジラ』!そういえばレジェンダリーはワーナーとの契約が切れてユニバーサルと契約を交わすそうで、なんだったらピージャクで『キングコング対ゴジラ』のリメイク!ああ、もう何でもいいから続編が待ち遠しいなぁ!!
GODZILLA ゴジラ アート・オブ・デストラクション (ShoPro books)
- 作者: マーク・コッタ・ヴァズ,富原まさ江,平林祥
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*1:恐縮です。
*2:全編を通して日本へのリスペクトは感じたけど、流石にこのネーミングはねーよ…。
*3:
Keyframe: The Spielberg Face - YouTube
*4:『ゴジラVSキングギドラ』にこの話に関するギャグがあり。
*5:ちなみに、渡辺謙が見守る中海に帰るゴジラは『大怪獣空中決戦 ガメラ』を想起させる。ゴジラが戦う動機も金子修介のガメラっぽい
*6:威力は昭和っぽいけど
*7:ライド映画っぽさ、という点でもスピルバーグを良く研究している
*8:今後余程の番狂わせが無い限り、残り二本は『ディス・イズ・ジ・エンド』と『ウルフ・オブ・ウォールストリート』。
*9:正直音楽はそんなに造詣が深くないので見当違いな意見かも知れませんが…。