『サウスパーク』S22E10「Bike Parade」感想

 第10話は第9話*1と2部構成になっており、更に今シーズンの『サウスパーク』の最終話でもある。「#CancelSouthPark(サウスパークを打ち切りに)」という今シーズンのキャッチコピーの意味とはなんだったのか…?

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 サウスパークにできたAmazonの集配センターは従業員のストライキにより機能停止に陥っていた。第9話の終わりでスタン、カイル、カートマン、ケニーの4人組はAmazonのCEOジェフ・ベゾスと取り決めを交わし、ミュータントと化したサウスパークモールの従業員たちを集配センターで働かせる代わりに、自転車パレード優勝に必要な商品だけを真っ先に4人組に届けることを約束した。大喜びする4人組であったが、Amazonに対するストライキを決行中のケニーの父親は息子がAmazonを利用していることに激怒、そしてその会話の様子をEcho dotを通してジェフ・ベゾスは盗聴していた*2ジェフ・ベゾスストライキを潰す機会をうかがっているのだ。

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 さて、開いたマリファナ農場が中々軌道に乗らず、シャロンからビジネスを畳むように促され不機嫌になっていたランディであったが、突如としてサウスパーク中から人々がランディの大麻ブランド「テグリディー」を買い求めて列を為すAmazonストライキ中のため人々は大麻を吸うことくらいしかやることがなく、またそのストライキを決行中のAmazon従業員たちもストレスを和らげるために大麻を買いに来たのだ。これを勝機と捉えたランディはビジネスパートナーのタオリーとともに、eスクーター*3大麻を家庭に届ける宅配サービスを開始する。

 

 一方、自転車パレードに向けて「アメリカ移民の変遷」というテーマの装飾を着々と準備を続ける4人組。しかし、父親との軋轢に負け、ケニーは自転車パレードに参加しないことを3人に告げる。このままでは自転車パレードに勝てない!絶望した3人組は頭を必死に回転させる。「自転車パレードに勝てなければ、自転車パレード自体を中止にすればいい!そうすれば俺たちだけじゃなく皆の負けだ!」「なるほど、でも一体どうやって?」「簡単さ、自転車パレードがPC的に無神経だと言いふらせばいいんだ!

 

 意気揚々と啓蒙活動をしようと資材を買いに出かけた4人組だったが、町中の店が集配センターのせいで閉まっている。そして町もAmazonの再開を望む人々とストライキを行う人々で分断してしまい、誰も自転車パレードどころではなくなってしまった。他に選択肢のなくなった4人組は意を決して市議会に押しかけるが…。

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 今シーズンで取り扱った色んなネタが再登場する、当然最終回なのでシリーズの総集編と言える回だった。喧伝されていたように今シーズンで打ち切りとはならなそうだが、しかし今回のエピソードはトレイとマットが長年取り組んで来た『サウスパーク』に対する少々疲弊した気持ちが表れていたのではないかと思う。

 

 この回で頻繁に登場する言葉は「キャンセル」で、4人組のことどもたちが自転車パレードを中止させようと目論んでいる。しかし、Amazon騒動の中で思うようにいかないカートマンは「町で今色んなことがキャンセルになっているのに、どうしてオイラたちのやることはキャンセルできないの?」最近の『サウスパーク』はPC的価値観とサウスパーク住民が戦うものが多かったが、特に今シーズンは不適切な発言が原因でMr.ハンキーが街から永久に追放されて閉まったり、やや真に迫った表現が多い。何かあればSNSで炎上する世の中で益々風刺番組は作りづらくなっていて、トレイとマットもフラストレーションが溜まっていることだろう。

 

 自転車パレードを中止させるには人々の怒りを買えばいい、という作戦に子供達が踏み込んだのは、言わずもがな最近の潮流を皮肉っているのだが、こうしたPC的価値観と『サウスパーク』の戦いは来年以降も続いていくだろう。トレイとマットにどれだけ忍耐力があるかが、『サウスパーク』が打ち切りになるかどうかのカギを握るだろう。

 

 

*1: 

*2:これはAmazon Echoが人々の会話を盗聴しているのではないか、という実際にアメリカで起きた騒動のパロディ

*3: