ハリウッド撮影現場潜入期 vol.1

 ここのところ毎日仕事でクタクタになってブログの更新がつまらないものになっているので、どうせなら今体験している事を映画ファンの目線から出来る限り晒していこうと思う。

 

 今日本国内で撮影されている某海外作品の現場で働いている。NDAにサインしてしまっている為、ここでは具に内容を書くことができないが、ハリウッドからもスタッフが大多数出向していて、半年間もの間撮影が続く。僕がこれまで参加した映像製作現場の中で、間違いなく最もスケールの大きい作品であり、色んな面での金の掛け方に一々驚かされる。

 

 僕は日本のメジャー映画やドラマの現場に入ったことがないので単純比較はできないが、それでも1ショット1ショットの時間の掛け方にはまずビックリする。新しいシーンの撮影を始める際、まずはディレクターズリハーサルという監督と役者陣のみでのリハーサル(いわゆるブロッキング/段取り)を行い、役者の演技を固めていく。その後、クルーリハーサルを行い、スタッフを入れてもう一度リハーサルを行い、固めた演技を見てどの画角で撮影するか決めていく。それが終わったら役者は一度控え室に戻り、スタンドイン(代役)を使ってアングルや照明を調整、その後役者を入れて、再度リハーサル。良さそうだったらようやく1カットを撮り、もちろんNGが出たら同じ1カットを繰り返し、OKが出ても次のカットの調整のために役者はまた控え室に戻ってスタンドインを立てせて…といった具合で撮影は延々と進む。

 

 驚いたのは撮影監督(DP)の実態だ。世界でも邦画だけ何故か「撮影部」「照明部」と部署が分かれているが、DPシステムではDPが撮影も照明も全てコントロールをする。ここまでは知っていても、DPが全くカメラを握らず現場でずっとモニターを見ているだけだとは思わず拍子抜けした。実際にカメラを操作するのはカメラオペレーターで、その下にアシスタントカメラマン(AC)がフォーカスを弄ったりカチンコを切ったりするのだが、DPは全体のルックを統括するためにモニターを見ながらカメラチームやギャファー(照明)に指示を下す。

 

 特にこの照明の調整が筋金入りだ。先日、Twitterで『梨泰院クラス』と日本版リメイクの『六本木クラス』の比較動画があがったが、どう見ても照明に歴然たる差があった。これには日本の現場の特有の低予算だったり、それに起因した時間的ゆとりのなさが原因だったりするが、世界ではここまで資金や時間を投資して1ショット1ショット丁寧に画作りを行なっていると思うと改めて衝撃を受ける。

 

 しかも、ハリウッドには12時間ルールがある。まあ、ローカルクルーにそれが適用されているかと思えば正直に言って中々微妙なところだが、基本的にアメリカから来るキャストやスタッフはユニオン(労働組合)に所属していて、12時間以内に撮影を終えないといけない。時間自体は限られているが、それでもショットはバカ丁寧に作り込む。

 

 一方で金のない邦画は1日平気で労基法違反レベルの撮影を行うくせに、予算が少なく納期が短すぎるために、1ショット1ショットの作り込みが甘くなってしまう。もちろん、これが邦画の全てだとは思わないが、一つの現実ではある。この残酷な現実を我々がどう受け止めるかで、次世代の邦画界は変わっていくのかもしれない。

 

 ちなみに、今ものすごく眠い上に酔っている。余計なことを書いてなきゃいいけど…