海外の撮影現場で銃をどう取り扱うか

  アレック・ボールドウィンをめぐる裁判の続報を見て、思い出したことを一つ。

 昨年、このブログの読者の皆様ならご存知の通り、僕は海外の作品に参加していた。その現場で印象深かったことの一つは「まず何よりも安全を大事にする」ことだった。

 

 撮影現場での安全面の最終責任者は1stAD(助監督)である。毎日、現場に着くと「セーフティーミーティング」と呼ばれる集会を開かれ、1st ADがセットでの注意点や安全上の懸念点をシェアすることから始まった。もちろん、今はコロナウイルスパンデミックの真っ只中なので、衛生上の注意点も現場看護師と一緒にアナウンスしていた。スケジュールにしても、寝不足による事故が起きないように最低限の睡眠や休息がとられるようにはなっていた。

 

 この作品では、小道具で銃を取り扱う日が2回あった。もちろん、日本での撮影なので実銃や実弾が使われることはないだろうが、毎回銃を使うシーンの前に必ず1st ADが銃器小道具の担当者の元へ訪れ、プロップガンの弾倉が空であることを2人で目視で確認し、そのプロップガンを触れていいのは①それを演技で使用する役者か、②銃器の責任を持つ小道具担当 だけであることを散々念を押した。

 

 一度、役者が持っている小道具銃を何かの手違いで他のスタッフが持ってしまった時、普段は優しい1st ADが真剣に小道具担当に怒っていた。この現場は長期に渡ったため、途中で1回1stADが入れ替わったが、そのADも基本的には同じ態度で臨んでいた。それくらい、海外での撮影における銃器の取り扱いは厳重なのだ。

 

 当然、アレック・ボールドウィンの事件が起きてからなおのこと、彼らも慎重に仕事をしていたのだろう。でも、仕事をする上でスタッフの命や健康を守ることはプロとして当たり前だと思う。僕は去年、自主制作映画の現場で地方まで10時間運転させられた挙句、連日3時間ほどしか睡眠を与えられなかった時、本当に死ぬかと思ったね。