『君たちはどう生きるか』を観てきたっす!

 ご存知の通り、宣伝を一切しないという斬新なPR戦略で公開を迎えた『君たちはどう生きるか』を観てきました。その宣伝方式のせいで、スタジオカラー作品みたいに公式がネタバレ自粛要請が出ていないのに、観客各々が勝手に内容を語ることを自粛している不思議な状態になっております。そういえば、『風立ちぬ』が当時延々と4分も劇場で予告を流していたのとえらい違いですね。

 

 で、観てきた感想なんですけど、まあ「凄えもんを観た…」としか言いようがないです。鑑賞後に呆然としてた台湾人の嫁さんから「どういう意味だったの?」と聞かれましたが、「日本語を100%理解している僕にも分からなかったから大丈夫!」と答えになっていない答えをしてしまいました。

 

 ただ、ストーリーが難解という訳ではなくて、説明が多いので物語の大きな流れ自体には付いていくことができました。ただ、そのストーリーが表象しているものは何かとか、作品世界の細かい設定や登場人物の行動原理などの枝葉の部分で理解しかねることが多く、結果的に難しいという印象を残している作品でした。

 

 本当は映画ブロガーの端くれとして僕も鋭い考察や批評を書ければカッコ良いのですが、今回は分かってるフリはせずに素直に「僕はバカで分かりませんでした」と言うことにしました。だって、当の宮崎駿自身が次のように語っているんですよ!

「おそらく、訳が分からなかったことでしょう。私自身、訳が分からないところがありました」

 

 実は僕は宮崎駿というかジブリに対してそこまで愛がない人間で、『ルパン三世 カリオストロの城』『となりのトトロ』『風の谷のナウシカ』『天空の城 ラピュタ』『魔女の宅急便』あたりは繰り返しVHSやテレビ放送なんかで見ましたが、劇場で観に行ったのは『もののけ姫』と『千と千尋の神隠し』くらいで、両親がジブリに興味ない家庭に育ったので、僕自身もそう育っちゃったんですね。

 

 で、大学時代に当時『風立ちぬ』が公開されてるってんで、予習のために改めてジブリ作品を全部見てから臨んだ『風立ちぬ』にガツンとやられて号泣しました。予習を通して初めてアニメ作家宮崎駿の偉大さに今更気づき、だからこそ「引退作」としての『風立ちぬ』が「描くことがやめられない男」の話だったことにいたく感動しました。今でも一番好きなジブリ作品は『風立ちぬ』で、当時のベストテンやアニメ映画ベストテンで何かと選んでいる作品です。

 

 人のキャリアに口を出すもんではないですし、それが宮崎駿相手だとなおのことですが、引退を取り消して作ったのがこの『君たちはどう生きるか』だったのがちょっと残念と言うか、やっぱり『風立ちぬ』を引退作にしておけば美しいフィルモグラフィーになったのに、とついつい思ってしまいました。

 

 が、引退を取り消してまで作ったのが「自分でも訳が分からない」映画というのもまた凄いことで、訳の分からないままそれを映像化しているので宮崎駿にはやっぱり感銘を受けます。きっと宮崎駿レベルじゃないと辿り着けない境地で、それに振り回されてこちらはポカンとするしかない体験もまた貴重で面白いものでありました。そんな不思議な映画なので、是非大スクリーンでみなさんも見に行ったほうがいいですよ!

▲ちなみにこちらは映画に影響を与えただけで原作ではありません。