ハリウッド現場潜入記 vol.3 シーバーで耳が割れる…!の巻

 映画の製作現場は軍隊みたいなもので、様々な部署が同時進行でコミュニケーションを取りながら作業をしている。その中で欠かせないのが無線であり、それぞれの部署に割り当てられた周波数に合わせて各部署が連携をとっている。

 

 が、今の現場が特殊なのはバイリンガルであることで、僕が所属する演出部にはUSからのADと日本からのADがチームを混成している。その為、左耳には日本語で会話するためのシーバーを、右耳には英語で会話するためのシーバーをつけている。働き始めた当初は同時に錯綜する言語に脳が混乱を起こしていた。

 

 2ヶ月経ってようやく慣れてきたけれども、それでも慣れないのはUSチーム側の声量のバカデカさだ。おそらく、アメリカの現場で使用しているシーバーと日本の現場で使用されているシーバーのマイクの質が違うからかもしれないが、アメリカのクルーは恐ろしいくらいデカい声で無線で話す。毎回三半規管がやられて体がフラつくほどだ。じゃあ無線の音量を下げればいいじゃないか、と思うかもしれないが、そうすると今度は英語シーバーを使っている日本側のクルーの声が聞こえづらくなるのだ。

 

 DJみたいに話す人が変わるたびに音量を調節できればいいかもしれないが、もちろん忙しい中そんな器用なことはできないので諦めてバカデカい声量を耐える日々を送っていた。そんな折今日、いつものように三半規管をグラつかせながら一生懸命英語のシーバーで指示を聞いていると、指示を出している最中に話者が思いっきりクシャミをした。あまりの衝撃に鼓膜が破れるかと思ったほどで、誇張でもなく反射的に体がふっとんだ。直前まで英語シーバーをつけていない別の日本人クルーと話していたのだが、その人までくしゃみの音が聞こえたと言っていたほどドデカい音だった。

 

 まあ、大したオチもない話で恐縮だが、実は今も英語シーバーを聞いていた方の耳がずっと「キーン」と高鳴りをしているので、今回はトランシーバーについて書いてみることにした。こんなの続けてるといつか耳が聞こえなくなるで…!