9月に観た映画の感想

 久しぶりの更新です、また先月までに間に合いませんでした。ここ3ヶ月くらいずっと多忙だったのですが、ようやく落ち着いてきました。映画も全然観れてなかったので、11月からはどんどん鑑賞していきたいと思います。

 

 今月感想を書く映画は『アニマル・ハウス』『Mr.ボディガード/学園生活は命がけ』『ホワイトハウス・ダウン』『メリー・ポピンズ』『ゴッドファーザー』『ローマの休日』『ワールド・ウォーZ』『ウルヴァリン:SAMURAI』の8本です。

 

 


 

 原題は"National Lampoon's Animal House"。「National Lampoon(ナショナル・ランプーン)」とはハーヴァード大学のお笑いサークル「Harvard Lampoon」を母体にしたパロディ雑誌で、アメリカの長寿コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」のライターやコメディアンを多く輩出した。そのナショナル・ランプーンの映画進出第一弾が『アニマル・ハウス』であり、映画のエピソードの大半はナショナル・ランプーン編集者たちのキャンパスライフを基にしている。(参考文献:『21世紀アメリカの喜劇人』長谷川町蔵著)

 さりげない描写だが注目したいのは、教授がミルトンの『失楽園』について講義しているシーン。『失楽園』に登場するルシファーは奴隷として生きるよりも、地獄に堕ちても自由であろうとするが、その姿はデルタ・ハウスの会員の思想や行動に重なる。…つっても、彼らはそんな退屈な講義なんて聞いちゃいなかったけど。「うるせえ、とにかくトーガパーティだ!

 

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 高校デビューを目指していたものの見事失敗したダメダメ高校生三人組が、イジメっ子から身を守るためにボディガードを雇うが、その正体はホームレスだった!…というのが簡単な粗筋。

 この高校生三人組、ヒョロ高、デブ、チビで構成されているのだが、これってまんま『スーパーバッド!』じゃないか!『スーパーバッド!』はセス・ローゲンが親友のエヴァン・ゴールドバーグとともに彼らの学生時代の思い出を映画化したものだが、『Mr.ボディガード』の脚本家もセス・ローゲン。『Mr.ボディガード』はオーウェン・ウィルソン扮するホームレスのドリルビット・テイラーに焦点が当たっている*1が、本作は裏『スーパーバッド!』とも言える内容となっている。『スーパーバッド!』ほどのキレも面白さも備わっていないのは残念だった。

 

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 やったよ、ついにエメリッヒが面白い映画を撮ったよ!インデペンデンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』『2012』と、彼の代表作に比べるとホワイトハウスのみで展開される本作は幾分かスケールが小さい*2けれど、実はこれくらいの規模のほうがエメリッヒには丁度いいのかもしれない。

 『2012』もそうだったけど、エメリッヒはちょいちょいバカなギャグを挿入してくるが、「ホワイトハウス版『ダイ・ハード』」と呼ばれている(またかよ)本作には彼のギャグセンスがピッタリとハマっている。更に、『ダイ・ハード』の完コピともいえる脚本が悪いわけがない。*3よくよく考えたら主人公の名前ジョンって、そこも『ダイ・ハード』…。

 すなわち、今年は『ダイ・ハード』愛のある映画が先に二本公開されたが、正式な続編なのに脚本がお粗末だった『ダイ・ハード/ラスト・デイ』、ばかばかしい内容の割にユーモアがなかった『エンド・オブ・ホワイトハウス』の両作品に足りないものを補っているが『ホワイトハウス・ダウン』なのだ。そもそもタンクトップという時点でエメリッヒはよく分かっているよ!


「ホワイトハウス・ダウン」長尺予告編 - YouTube

 

 この二作品は9月26日に早稲田大学にて行われた、町山智浩氏による「学生のための20世紀名作映画講座」に見事当選したので、その予習のために慌てて鑑賞。いやあ、本当に素晴らしい講義だった。

 僕のションベンくせー感想なんかよりも町山さんの評論のほうが断然タメになるので、手元のメモからそちらを書き起こそうと思ったが、その日の動画が公式よりアップされているので、やはり自分の雑感を書くことにした。動画は下に載せておきます。しかし画質悪いなー。

 

 ディズニー好きなのにこれまで観る機会に恵まれなかった『メリー・ポピンズ』はHuluで鑑賞。アニメと実写の合成パートなどは今観ても驚く。芸が細かいのは、メリーたちが乗ったメリーゴーランドの木馬の支柱が地面を削るところ!アニメーターたちのこだわりが見える。また、撮影時には当然ペンギンもキツネも馬も存在しなかったわけで、役者もカメラマンも想像力をフルにかきたてる必要があったに違いなく、大変な現場であったろう。しかしこれは現代のブルーバックを多用した映画と同じ撮影メソッドであり、今ある多くのハリウッド大作の礎として『メリー・ポピンズ』は存在している。ところで、ディズニーランドのアトラクションになんのストーリー性もなさそうなフッツ〜〜〜のメリーゴーランドがあるのか長年不思議でしょうがなかったが、多分『メリー・ポピンズ』をモチーフにしているとようやく分かった。

 オードリー・ヘップバーンの処女作『ローマの休日』は50周年デジタリー・リマスター版を鑑賞。とにかく可愛いんだよ、オードリー・ヘップバーンが!50年もあれば人間の価値観なんぞコロコロ変わりそうなのに、現代の価値観をもってしても「可愛い」と思わせるヘップバーンの魅力はスゴい。「美しい」なら分かるけど、「可愛い」は本当にスゴいよなぁ…。ヘップバーンの魅力だけでなく、流石アカデミー脚本賞受賞作品だけあって、今観ても面白い。50年代のローマの美しさを映像に閉じ込めたロケ撮影*4も見事で、「色褪せない」なんて陳腐な文句があるけれど、このモノクロ映画にはまさにその表現が当てはまる。『メリー・ポピンズ』も『ローマの休日』も賞味期限はまだまだ。

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 「元祖"全員悪人"」 と書いたけれど、北野武の『アウトレイジ』は明らかに深作欣二の『仁義なき戦い』シリーズの影響を受けており、さらに『仁義なき戦い』は東映が「和製『ゴッドファーザー』」を目指して製作した作品なので、あながち間違ってないと思う。よくよく考えたら『仁義なき戦い』と『ゴッドファーザー』は組の若い者が抗争を通して成り上がる一方で虚しさを覚える、という内容もそっくりだ。ただ山守の親分は最後まで死にませんけどね!

 世界的な名作であるこの映画、意外にも派手なアクションシークエンスはあまり無い。実は長尺のほとんどはマフィアの会合だけで進み、一聞すると地味そうだ。しかし、実際には一度観れば決して忘れない印象的なシーンが連続し、3時間もの間ずっと観客の心を鷲掴みにし続ける。特にトラウマ映像ベスト3に入りそうな馬の生首、あれ本物なんだよね…って情報だけならまだしも、実際にハリウッドで起きた事件を元ネタにしているということに衝撃を受ける。ヒエー…。

 名演をみせたマーロン・ブランドも当時は落ち目だったそうで、再起をかけているだけあって迫力がすごい。怒鳴ったり暴れたり、って訳ではなく、風格がもはやソレだ。そう考えるとマーロン・ブランド、実は『スーパーマン』での演技は結構手抜きなんじゃないの?といらん邪推をしてしまう。写真で比べるのもあれだけど、この二人同じ人物だとは思えませんな!

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どうでもいいけど、この二つの写真とこれ、背景がなんか被るんだよね。
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 製作中からトラブルのニュースがやまなかった映画で、各方面で大コケ確実と言われていたが、予想を覆し世界中でヒット。まさにゾンビ並みの執念を見せつけたといったところか。

 日本では宣伝戦略でゾンビ映画であることが徹底的に隠されていたが、蓋を開けてみれば溢れんばかりのゾンビが出てくるゾンビ映画。「噛まれて2.5秒で感染!*5」と言わんばかりにどんどん増加し走り回るゾンビの現代的アップデートは娯楽映画としては大正解、基本的に全員走り回るアクションシーンの連続はジェットコースターのように面白かった。

 …のは途中までで、クライマックスに入ってからは一気に失速、それまでの展開と異なりゲーム『メタルギア』のようなスニークアクションに変容して非常に地味な画が続く*6。本来クライマックスはロシアでの人類VSゾンビの大戦争になるはずで、そのシーンも既に撮影が終わっていたが、レイティング対策のために急遽脚本が書き直され30分丸々カット&追加撮影が行われ、現在のような形となった。結果多くの観客を呼び込みヒットに繋がったので興行的には成功と言えるものの、作品の勢いを殺すこととなってしまった。

 細かいところでも、キーパーソンと思われるキャラが信じられない理由で退場したり、アホ過ぎる理由でゾンビの侵入を許してしまったり、明らかにスポンサーと思われる商品が意味なく登場したり、娯楽として片付けるにはあまりにもバカ過ぎる描写も満載。光るところがあるだけに残念な作品だった。

 

 オー、ハラキリ!ヤクザ!アキバ!ニンジャ!サムライ!ヤマトダマシイテンコ盛リネ〜!という映画である。以上。

 …いやあ、『X-MEN:ZERO』(2009)と比べても圧倒的に面白かったが、そんなことよりもエンドロール途中で流れる映像*7インパクトが強すぎて、あんまり本編自体特筆すべき点がないんだよね…。ただ、ローガンに焦点を当てたドラマはよかった(敵が何をしたいかよくわからない脚本はダメ)のと、ハリウッドエンタメ大作で原爆の描写があったことも良かった。その描写が正確かどうかは置いといて!


映画『ウルヴァリン:SAMURAI』日本オリジナル本予告 - YouTube

 


 9月分は以上です。 そろそろ10月分を書き始めないとなぁ…。

 

【追記】11/9 誤字脱字、および文章のおかしい部分を修正しました。

*1:原題も"Drillbit Taylor"

*2:それでも1億5千万$かかってる大作ですが。

*3:といっても、完コピしているはずなのに圧倒的にクレバーさが足りないが。

*4:動画の町山氏の解説にもあるが、本作はハリウッド映画市場初めて大規模な海外ロケを観光した作品である。それは本作がモノクロ映画であることにも関係しており、当時バカでかいテクニカラーカメラをロケ地に運んで撮影する手段が無かったそうだ。しかしそのお陰でローマでの珍道中を臨場感もって描けている。

*5:実際には12秒

*6:メタルギア』を批判しているわけではない。念のため

*7:どうでもいいけど、最近エンドロールの途中で映像流すパターン多くない?ちょっと前まではエンドロール後というのが慣例だったんだけども。まぁ、そもそもエンドロールは劇場出口の混雑緩和のために作られたものなので、ある意味これが正しい。