ジーン・ロッデンベリーが描いた理想郷/『スター・トレック BEYOND』★★☆

 人気SFシリーズリブート版第三作『スター・トレック BEYOND*1』を(だいぶ前に)IMAX3Dで鑑賞。これまで前二作を監督したJJエイブラムスは『なんちゃらウォーズ』のせいで*2製作にまわり、『ワイルド・スピード』シリーズのジャスティン・リンにバトンタッチ。音楽は前二作同様マイケル・ジアッキーノ、脚本をスコッティ役も務めるサイモン・ペグが手がけ、お馴染みのクリス・パイン、ザッカリー・クィント、ゾーイ・ザルダナ、カール・アーバン、アントン・イェルチェン、ジョン・チョウに加え、ソフィア・ブテラ、新たなヴィランイドリス・エルバが出演。ちなみにパヴェル・チェコフを演じたアントン・イェルチェンの遺作となっている。*3

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  本日9月8日は『宇宙大作戦』放映50周年。明日クイズやプロジェクトの締め切りがあって正直ブログどころではないのだが、ここ最近映画の感想を書いていなかったのでリハビリとしてちょうどいい機会なので『スター・トレック BEYOND』の感想を書いていきたい。なお、前文に書いた通り鑑賞したのだがだいぶ前なので記憶が曖昧なのはご容赦ください…。

 

 

 なにはともあれ、『BEYOND』は大変気持ちのいい映画である。終始ニコニコしていて見終わった後は頰が痛かったほどだ。その気持ちよさを考えてみると、『BEYOND』は徹底的に原点であるTVシリーズ『宇宙大作戦』に回帰した作品であることが大きいからだろう。

 

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 と、3年かけても『宇宙大作戦』を見終われていない僕が語るのも大変烏滸がましいのだが、しかし『宇宙大作戦』をそれでも見続けているのはジーン・ロッデンベリーが描いた科学主義的世界観が好きだからだ。科学が著しく発展した23世紀の世界では、人類は内よりも外へ目を向けて宇宙探査へ乗り出す。そのように知性や理性が発展した世界では争いごとはなるべく対話により解決を試みるし、当然差別なんて愚かな風習は随分昔に滅びていている。こんな未だに人類が到達しえていない先進的な世界観をまだ人種差別が色濃く残る1966年に登場させた『宇宙大作戦』は偉大だ。

 

 そんなオプティミスティックな世界観が大好きな僕が本作を観て一番感動したのは、惑星連邦の市民が暮らす巨大人工衛星ヨークタウンの描写だ。ヨークタウンにはすべての人種、すべての異星人、同性愛者も仲良く暮らしている。これこそ50年前にジーン・ロッデンベリーが描いていた理想郷の姿ではないか!こんな気持ちのいい未来がいつか来るかもしれないと思うだけでワクワクしてしまう。

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 もちろん、もっと単純に言って舞台が地球じゃない、フレアがない、重くない!と、全編どこを取っても大変『宇宙大作戦』らしくてニコニコして観ていた。まあ『イントゥ・ダークネス』も公開当時は絶賛してたけれども、あれはJカスが『なんちゃらウォーズ』の目配せとしてあれもこれも派手に盛り込んだ印象だったが、『BEYOND』にはまるで『エイジ・オブ・ウルトロン』の後の『アントマン』のような見やすさと親しみを覚える。このスケール感こそが皆が見たかった『宇宙大作戦』なのだ。

 

 『BEYOND』のキャストの演技も段々オリジナルキャストのそれに近づいてきて、なんなら今のキャストのままTVシリーズを作って永遠に観ていたい…と思っていたらエンドロールの「For Anton and Nimoy」にウルッと来たよ。合掌。

 

 

*1:いつこんな邦題になったんだろうか

*2:もう何回も貼ってるが、当ブログの新『スター・ウォーズ』への評価はこちらです。

*3: