教育に悪いよ😡/『The Emoji Movie』★☆☆

 まさかの絵文字を映画にしたことで話題となったソニー・ピクチャーズ アニメーション最新作『The Emoji Movie』を鑑賞。監督は『Igor』(日本未公開)のトニー・レオニダス、脚本はトニー・レオニダスの他にエリック・シーゲル、マイク・ホワイト。出演はTJミラー、ジェームズ・コーデン、アナ・ファリス、マヤ・ルドルフ、パトリック・スチュアート*1

 

※ネタバレしています…が、いいよね…

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 レビューサイトのロッテントマトで8%という新作映画としては前代未聞のスコアを取得したことにより注目を浴びた『The Emoji Movie』であったが、蓋を開けてみれば巷で言われているほど酷い映画ではなかった。企画の凡庸さと、『レゴ®︎ムービー』と『インサイド・ヘッド』を足して水で薄めたような既視感が叩かれているのであって、それだったら我が国にも今年公開された『メアリと魔女の花があるしな!

 

 笑えたギャグだってあったし、スマホ世界の描写は目には楽しいので僕が想像していたよりは面白かった。事実僕が観た劇場ではそこそこ入っていたし、ファミリー層の観客にはウケていた。

 

 ただ、本作のつまらなさよりも、デジタル世代らしい倫理観の薄さの方がよっぽど問題だと思う。その問題点を本作のプロットを追って説明していこう。

 

 

 『The Emoji Movie』の主役たちは高校生のアレックスくんのスマホ内の都市「テクストポリス」に住んでいる絵文字たちだ。主人公の😒のジーン(TJミラー)は、😒以外の表情をしてしまうことからテクストポリスの住民たちから煙たがられている。

 

 アレックスくんには片思いをしている女の子アディーちゃんがいるのだが、ある日授業中にアディーちゃんにメッセージを送ろうとしたら、ジーンがパニクって😒以外の絵文字に化けて誤送信してしまう*2…って、授業中にスマホ弄ってんじゃねーよ!

 

 欠陥絵文字としての烙印を押されてしまったジーンはボット軍団に消去されそうになるも辛うじて逃げ出す。時を同じくしてアレックスのお気に入り絵文字から降格してしまった✋のハイファイ(ジェームズ・コーデン)はジーンと意気投合し、脱獄ソフトにプログラムをハックしてもらうことでお互いの問題点を修正解決しようと目論む。

 

 テクストポリスから飛び出た二人はWeChat*3Facebook*4などいろんなアプリを旅しながら、ならず者が集う海賊版アプリにたどり着く。

 

 海賊版アプリでようやく脱獄ソフトのジェイルブレイク(アナ・ファリス)と出会うも、ボットの魔の手が迫り再びスマホ世界へ大冒険に出る。途中キャンディークラッシュやらJUST DANCE NOWやらSPOTIFYのアプリを通過するが、その度にスマホが起動して授業中に恥をかいたアレックスはスマホストアで修理の予約を入れる。授業中はスマホの電源切っとけって、先生言わなかったか?

 

 スマホが修理に出されると知ったアプリたちはこのままではデータが消される!*5と阿鼻叫喚で、一層ジーンの抹消に本腰を入れる。ジーンのパパとママは愛する息子を救うためにテクストポリスから飛び出し、YouTubeのアプリでピコ太郎を見たり*6して探索するも、このサブプロットは割と本筋には絡んでこないのであった。

 

 そしてなんやかんやでスマホは修理に出されてしまい、いよいよデータが消されていく。周りのアプリも消えていき、テクストポリスも闇に消えようとしたその時、ジーンは持ち前の能力で様々な感情を込めた絵文字をアディーちゃんに送る*7。アディーちゃんから好意を持たれたことでアレックスくんの機嫌は直り、アレックスくんはシステム修理中のスマホをケーブルから無理やりぶっこ抜くことでどういうわけか消されたデータも全て戻り万事解決するのであった…って壊れるよ!

 

 めでたしめでたし…と締めたいところだが、こういった数々のデジタル時代の問題点を全く良心の呵責なく描いているので、素直に喜べないよ!ネットでタダで映画を違法で観る人たちとその多さについてこのブログで嘆いたことがある*8が、この問題と『The Emoji Movie』の時代精神は根底で繋がっていそうだ。『The Emoji Movie』はタイアップで色々な実在アプリが登場する割に、デジタル時代を生きる子供達への情報教育に大変悪い映画なのでありました。*9

 


The Emoji Movie: Official Handbook

The Emoji Movie: Official Handbook

 

 

*1:なんと💩の役!

*2:そもそもとして好きな女の子にアプローチとして送る絵文字に😒はどうかと思うのだが

*3:なんでアメリカの高校生のスマホにWeChatが入ってんだよ!と思ったら、アディーちゃんはアジア系の少女なので、これはきっとアレックスくんがアディーちゃんと仲良くなるためにダウンロードしたのであって、決して中国市場のために入れたシーンではないと信じたい。

*4:子供向けアニメなのに「(Facebookは)いいね!欲しさのために知らない人にアピールするところだよ!」「知らない人よりリアルに友達作った方がいいのにね」などと中々エッジのきいたことを言い出すのは面白かった。

*5:なんでだよ!バックアップとか無いのか!

*6:全米の映画館のスクリーンに大写しになる日本が生んだ大スターピコ太郎

*7:アレックスくんとスマホや絵文字たちの間に絆の構築が全くされていないため、現実世界とスマホ世界のクライマックスが全く結びつかずカタルシスを覚えないことが実は本作の最大の問題点では無いかとも思う

*8: 

*9:あと出てくる人間がやたらと歩きスマホをしているんだけど、ひょっとしたらこの映画はスマホが蔓延しすぎた現代をディストピア的に風刺した映画だったのかもしれない…!