コロナ療養記vol9

  • 療養所に来てから毎朝、毎夕体温と酸素飽和度、心拍数を記録し、担当の看護師にLINEで送っている。僕は療養所に入ってからもうほとんど完治状態で、異常のない体調を日々報告するつまらないものになっていたが、今夕の体調報告の返信で、明日の対処が正式に決まった旨を連絡受ける。予め分かっていたことではあったが、改めて聞くと嬉しい。
  • 先月分の請求書を作成していたが、なんと療養期間分まで報酬対象に当たるらしい。正直、現場で感染したコロナなので、スケジュールを押さえていた分報酬を貰えないとなるとフリーランスとしてはキツいので、メールで戦うつもりでいたが、あっさりと先方からの申し出で驚いた。流石海外の現場、なんとホワイトなんだ…。というか、日本のプロダクションの非常識な常識にちょっと考えを毒され過ぎていたのかもしれない。
  • 明日出所なので、セコセコと貯めてきた朝食のゼリーやジュースを祝いに次々と消費した。なんともひもじい贅沢に泣けてくる。明日は絶対にマクドナルドを食べるのだ…!
  • ブレイキング・バッド』はS5まで来ちゃった。S4最終回の切れ味に鳥肌が立つ。もう正直、MCUのヌルいドラマシリーズとかじゃ今後絶対に満足できないような体になってしまった…。
  • 夜にTwitterスペースで皆さんと雑談。やっぱり人と話せるのはすごく楽しい。お相手していただいた皆さん、本当にありがとうございました…!さびしんぼうなんで、すみません。

 

 

コロナ療養記vol8

  • 一昨日くらいから療養所を脱獄する夢を見続けている。一昨日はA○Aホテルから何故か武蔵小山へ脱出し、満喫したらコソコソと部屋へ戻り、昨日はマクドナルドのハンバーガーを食べるために脱出して戻ってくる夢を見た。基本、脱獄しても戻ってくるところが夢の癖にマジメ。
  • ストックしていた朝食のゼリーとジュースをそろそろ解禁し始める。空きっ腹が空いた時に間食すると感動するくらい美味い。こんな当たり前なことに感動するくらい極限なのだ!完全に囚人の楽しみ方!
  • 暇な時にはひたすら編集仕事と『ブレイキング・バッド』。もうS4の8話まで来ちゃったよ。ネットでジェシーのモノマネを検索しては練習している。とりあえずラリった目で怒りながら「Yo!」と「Bitch!」を織り交ぜれば似るので笑える。


      

  • もう本当に毎日ただのルーティンなので、書くことがいよいよなくなってしまったが、あと2日でようやく解放される…。ただ解放されても新幹線に乗って東京に帰る一手間がある。本当にとんだ出張になったものである。

 

 

コロナ療養記vol7

  • このコロナ療養記も第7回…つまりコロナに罹ってからもう1週間も経ったということになる。自分の場合は4日目でもうほぼほぼ症状が治まったが、看護師の方が言うには平均して5日目でピークを迎えているらしい。
  • コロナを発症していた時は喉の痛みと咳がキツかったが、治ってしまうとやることもなくひたすら部屋に孤独で閉じこもる軟禁状態で精神的にかなりキツい。もちろん、大体体内のウイルスの感染性が消失するのが10日前後、ということでこの規則になっているのは百も承知なのだけれども、度々療養所を抜け出してニュースになるオジさん達の気持ちは、正直今なら分からなくもない。
  • コロナになってから地味にもう一つ辛いのは、新作映画が観れない事だ。Twitterで『NOPE』の感想が上がっているのを羨ましく眺めるほかない。新作は公開されたらすぐ劇場で見にいくタイプの映画ファンは、2週間それが出来なくなるのでコロナはキツいぞ〜。
  • ブレイキング・バッド』はS4まで来ちゃった。というか、変わり映えのない生活、変わり映えのない食事、変わり映えのない光景…なので、『ブレイキング・バッド』をどこまで観進めたかくらいしかいい加減書くことがない。
  • 夜、Twitterスペースを開いたみたけど、残念ながら参加者0。ただでさえ孤独なので、ちょっと寂しい。そうしたら、その通知で僕がコロナにかかった事を聞きつけた友人が久々に連絡してきたので電話した。今は人と会話が味噌汁のように沁みる…!
  • ところで、今の今まで、この「コロナ療養記」の連載タイトルがずっと「コロナ療養期」になっていたことに今気付く。

 

 

コロナ療養期vol6

  • 咳がちょっとぶり返してきたかも。ただ、そのほかの体調は頗る良い。
  • 昨日の宣言通り、朝食のゼリーと紙パックジュースをすぐには消費せず、冷蔵庫で保存する。限界近くなったら食べるので、まだ手をつけていない。
  • 代わりに喉の不調を感じ始めた時に買った大量ののど飴を舐め続けているが、流石に飽きた。あとポテチとか煎餅とか、塩っ気のあるお菓子も恋しい…。多分出所後、東京に戻る前に駅前のマックでビッグマックLLセットを食べる。地方の名産品?知るかそんなもん!塩分だ、塩分をよこせ!
  • ただ『ブレイキング・バッド』を観るだけで1日を終えるのはアレなので、流石に手付かずの編集仕事などをやり始めた。ずっとベッドで横になるか、椅子に座るかだけの生活で、1日100歩も歩いていない。
  • 昼寝で見た夢で撮影現場にいた。あれだけ毎日キツいと思っていた現場だが、やることもなく幽閉されていると恋しく思える。外の空気が吸いたい…。
  • ブレイキング・バッド』はシーズン3を半分以上見終わりました。今日は仕事と半々のつもりだったのに、それでも6時間以上『ブレイキング・バッド』に費やしていて驚いた。
  • あと4回寝ると、この牢獄から出られる…。それだけを希望に生き抜いていく。暇だから明日か明後日あたりYouTubeライブかTwitter スペースでもしようかな。でも咳が辛いんだよね…。

 

 

コロナ療養期vol5〜そろそろ気が狂いそう〜

  • 昨日と同じく、もうほぼ完治。夜になると咳が少し始まるが、肺が弱かった子供の時も夜になると咳をする時があったので、むしろ懐かしい感じ。
  • 療養所に持っていかなかったことを後悔したのは甘いものだ。いや、本当は差し入れなどで多くの甘味料をいただいていたが、ホテルを移るにあたり荷物になると思い、直前に大急ぎで食べてしまったのだ。これが大失敗で、療養所ではほとんど甘いものがなく、飲み物もお茶オンリー。
  • 療養所で一晩明けて知ったのが、朝食の時だけゼリーと紙パックのオレンジジュースだけついてくるが、ただでさえ甘党なので1日の糖分がこれだけでは持たない。明日からは朝食をそのまま全部食べるのではなく、後々の為に冷蔵庫に保存しておこう。……なんか留置所で知恵を絞り出しているみたいだなぁ。
  • 基本的に部屋から出ることは許されず、唯一の部屋から出れるのは食事の時間に弁当箱をとりにエレベーター前に取りに行く時と、一階までゴミを捨てに行く時だけだ。しかも好きなタイミングで行ける訳ではなく、厳しく時間が制限されている。
  • 実は健康に気を使って2ヶ月前からジム通いを始めたのだが、部屋が狭すぎて筋トレも出来ない。療養所生活で唯一の楽しみな時間は、前述の僅かに許された部屋から外への「数歩」の往復である。本当に囚人じゃないか!
  • さらに極め付けは、ホテル内のアナウンスで、毎日定刻に健康状態入力のお知らせと食事の時間、そしてスタッフの館内移動(するから絶対に外に出るなと言う牽制)のお知らせが結構な音量で流れてくるので、あまり休まらない。なお、僕は中高時代を中々に厳しい全寮制の学校で過ごしていた時があり、冗談で「ホグワーツに通いたかったらアズカバンだったんですよ!」なんて言っていたが、今の生活の方がアズカバンっぽい。
  • とまあ、ここまで愚痴を書いているが、何も行政もスタッフも我々陽性者を苦しめたくてやっていることではないことは百も承知で、11階まであるホテルの全部屋に泊まっている患者を診察している看護師やお医者さんには頭が上がらない。コロナというのはここまでしないと感染を防げない、ということなんだろうけれども、肝心のコロナの症状が治まっている手前、この隔離生活は中々に精神的に孤独で参る。入所2日目でこれですからね。
  • あ、でも一個行政に肝心な愚痴を言いたいのが、僕は前のホテルにた時から今の療養所に移るまで、全く同じ質問を何度も何度も聞かれるのは理解できなかった。僕の発症日はいつだったか、僕が発症した時はどういう症状だったか、濃厚接触者は誰なのか…等々を、検査結果を伝えたクリニックの先生、保健所の人、保健所の別の人、そして療養所の看護師に一から全部説明しないといけないのはあまりにも時間の無駄だったし、咳が酷かった初期の方は体力的にキツかった。
  • そもそも厚生労働省がHER-SYSにこれらの質問を全て記入しろって言われたから全部登録したのに、改めて毎回聞かれる意味がわからない。これは僕だけの問題じゃなくて、データとして全て共有できていれば、保健所や医療機関の負担をそれだけで減らせるじゃないか。これを陽性者全員に全てのスタッフが聞いていると思うと可哀想だし馬鹿馬鹿しい。
  • まあネガティブなことばかり書いてもアレなんで、楽しんでいることを書きますが、『ブレイキング・バッド』シーズン2まで観終わりました。ウォルターが犯罪に手を染めていくにつれてドンドン悪人になっていく様や、普段通りに日常生活をおこなっていく上でどうアリバイを成立させていくかの駆け引きに『デスノート』を連想しましたね。調べたら結構『ブレイキング・バッド』と『デスノート』の類似性を指摘している人が英語圏でも日本語圏でもいて興味深かったです。そしてそんな事を調べていると、ネタバレを踏んでしまってちょっと萎えてしまいましたが、それでもやはりプロセスの積み重ねが面白すぎるので今のところはお釣りが出るくらい楽しんでいます。僕も療養所を出る頃にウォルターみたいなトンデモない悪人顔になっているかもしれません。