渡米まで本当に映画観るくらいしかやることがなくて、最近は今まで手を付けてこなかったホラーまで観始めてるんだけど、ついにホラー映画の中でも傑作とされてる『悪魔のいけにえ』シリーズを2まで観た。
テキサスの田舎町に住むとある食人一家が若者をチェーンソーで殺す。という、非常にシンプルなあらすじ。
今まで僕が観てきたホラーって、例えばロメロのリビング・デッド・シリーズなんかは当時の社会問題をゾンビに反映していたし、スラッシャー映画で殺される若者はすぐそこら辺の茂みでやっちゃったり、オタクをバカにするジョック野郎だったり、殺されるそれなりの理由があった。
でも『悪魔のいけにえ』はそんなの関係ねえ!(古い)ってくらい理由なく若者たちが殺される。なんなら彼らは汚らしいヒッチハイカーを拾ってあげたり車椅子の仲間の面倒を見るなど善行を見せたりしているのに「うるせえ!殺す!」と言わんばかりに理不尽にもレザーフェイスに切り刻まれる。その不条理さがむしろ楽しい。
楽しいと書いたけど、『悪魔のいけにえ』の魅力は紙一重と言われる恐怖と笑いの絶妙なラインをスレスレで攻めて行ってる点だ。見た目はオドロオドロしいものの殺人鬼レザーフェイスはお父さんとお兄ちゃんと仲良く暮らしてるし、137歳のお爺ちゃんに若い女の指をチューチュー吸わせてあげるシーンなんてコメディでしかない!
ただし、笑いを誘うといってもそれはチェーンソーでの殺人や食人といった異常行動から誘発される引き笑いであり、スピルバーグが得意とするような残酷ギャグだ。若きトビー・フーパーのエネルギッシュな演出も相まってこの異様な傑作が出来上がった。
その恐怖と笑いのバランスを(あえて)崩した快作が『悪魔のいけにえ2』だ。なんたって前作以上に家族要素が全面に押し出されてて、今作で判明した一家の名字がソーヤー(Sawyer)なんて完全にギャグ。レザーフェイスはラジオDJの女の子に一目惚れするし、そんなレザーフェイスに対してお父さんは「世の中はセックスかチェーンソーだ!」と教えてくれる。前作で甥を殺されたデニス・ホッパーは両刀チェーンソーという狂ったビジュアルで一家に復讐を目論み、137歳のお爺ちゃんだけでなくミイラ化したお婆ちゃんもいることが発覚する(もちろん手にはチェーンソー!)。特殊メイクの第一人者であるトム・サヴィー二が加わったことでゴア描写に拍車がかかるも、むしろこれもやり過ぎているきらいがあって思わず笑ってしまう。
そもそもポスターからして『ブレックファスト・クラブ』のパロディで*1、「ふざける気満々です!」との宣言とも取れる。『ドランボールZ 復活の「F」』のインタビューで鳥山明が「原作者の僕だからこそ描けるエピソード」と語っていたように、『悪魔のいけにえ2』はトビー・フーパーだからこそ、というよりトビー・フーパーにしか作れないセルフ・パロディの痛快作だった。
ところでさっきから『悪魔のいけにえ』はホラー版『スター・ウォーズ』なんじゃないか?って思いが僕の中で湧き上がってきてならない。というのも、まず両作とも冒頭で暗闇にあらすじが下から上に流れていくでしょ?*2そして両方とも特殊な武器(チェーンソーとライトセーバー)を使う、とある農業が盛んな田舎(テキサスとタトゥイーン)で暮らす一家(ソーヤー家とスカイウォーカー家)の話なんですよ!