『サウスパーク』S22E1「Dead Kids」感想

 9月26日から『サウスパーク』のシーズン22の放映が開始した。先シーズン最終回でドナルド・トランプ(ギャリソン先生)狩りでトランプを逃してしまいクリフハンガーで終わらせたのでどう続くのか注目されていたが、更に本シーズンの宣伝マーケティングは「#CancelSouthPark(サウスパークを打ち切りに)」をキャッチコピーにしており、ファンの間で「『サウスパーク』が終わるのでは?」と心配の声が上がっている。色々な意味で話題に欠かないシーズン22だが、一発目からいきなり今年大きなムーブメントとなった学校での銃乱射事件を取り扱っていてかなり攻めた内容だった。

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 サウスパーク小学校で算数の答案が返答されている最中、学校内で乱射事件が起きる。しかし銃声よりも子供達が気になっているのはテストの点数で、カートマンに至っては成績優秀なトークンの答案を盗み見たはずなのにF(落第)の成績にご立腹の様子。撃たれた子供達の遺体や警察が並んでいても4人組はテストの話ばかりだったが、心配したスタンのお母さんシャロンが血相を変えてスタンを迎えに来る。

 

 その日の晩、シャロンは学校で起こった銃乱射事件(スクールシューティング)を食卓で話題に出すが、家族の皆が気にしてるのはスタンの算数のテストの成績ばかり。「頭おかしいんじゃないの!?スクールシューティングより大事なことなんてないでしょう!!皆感覚が麻痺してるのよ!!」と激怒して部屋に帰るシャロンにお父さんランディは「もしかして…生理が来てしまったのか…!?」と戦慄する。

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 今年フロリダ州パークランドの高校で多くの犠牲者を出した事件の記憶も新しく、こんなタイムリーでセンシティブな話題に更に「シャロンが怒ってるのは生理のせい」なんて今日のPC社会だったら完全にアウトな表現で非常にハラハラした。ただ、強烈なブラックジョークの裏には、これだけ学校での銃乱射事件が起きているのに誰も何も対策せず何事もなかったかのように日常に戻る社会への皮肉がもちろん含まれており、相変わらずトレイ・パーカーとマット・ストーンは信頼に足る作家だ。ネタバレになるが、結局[やっぱりシャロンは生理でイライラしていたので生理が終わって落ち着きを取り戻し、スタンが撃たれたという知らせが入っても平然としている]、というオチは現代社会の病理を表現していて恐怖すら感じる。今後のエピソードへの展開も考えるとショッキングでもある。

 

 余談だが『サウスパーク』とスクールシューティングの関わりで言えば、マイケル・ムーアが『サウスパーク』風のアニメを勝手にコロンバイン高校銃乱射事件を題材にした『ボウリング・フォー・コロンバイン』で使ってトレイとマットを激怒させ、お返しに『チーム★アメリカ ワールドポリス』でマイケル・ムーアそっくりの人形を爆殺した因縁がある。そんなマイケル・ムーアは今年作った『華氏119』でも既にフロリダ州パークランドの乱射事件を取り上げていた。トレイ&マットとマイケル・ムーアは昔は友達だっただけに、皮肉なことに時事問題に対する嗅覚の鋭さは似通っているのが面白い。

 

 さて、このエピソードにはカートマンのサブプロットがあり、「トークンはオイラを貶めるために、敢えて間違った解答を見せてオイラを落第にしたに違いない…しかしいったい何故だ…はっ、ひょっとしてオイラが『ブラックパンサー』をディスったからか!?」と勝手に勘違いして『ジェシカ・ジョーンズ』風にトークンを独自に調査していく過程に爆笑。黒人のトークンは絶対に『ブラックパンサー』が好きなはずだ!って決めつけが酷いし、所々「いやいや、オイラは『ブラックパンサー』は良い映画だと思う!特にブラックパンサーが夢の中で先代の王から王位を継承するシーンなんてとても独創的で良かったと思う、ライオン・キング』でやってたけどな!」とか時折『ブラックパンサー』Disが入るのも笑える。僕もあの映画好きではあるけど、世間ほどは盛り上がらなかったんだよねー。

 

 最近の『サウスパーク』はシーズンを通して話が繋がっていることが多いので、来週以降も見逃せない。

ブラックパンサー (字幕版)

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