元アメリカ在住の映画ファンが見た「ヤバい客」

 こちらの記事が面白かったです。

 

 映画館のバイトは学生時代は憧れの職業でしたが、こうしたエピソードを聞くと楽しいことばかりではなさそうで、心中お察しします。光あるところには必ず影があるんですね。

 

 ただですね、確かに最近上映中にスマホを使う客が増えてきてはいる気がするものの、やはり基本的には日本の観客のマナーはいい方だと思います。というのも、僕は5年間アメリカで暮らしていたことがありまして、憧れの現地の映画館に足を運んだその日から、アメリカの映画館でのマナーの悪いお客さんの酷さにはカルチャーショックを受けたのです。今回の記事では僕がアメリカの映画館で遭遇した特にヤバい客を回顧していきたいと思います。

 

 あ、ちなみに、観客が上映中にスマホを使うのは、見かけない方が稀なくらいもはやデフォです。

 

①明らかにハイ

 ご存知のように、アメリカ社会は日本よりずっと大麻に寛容で、大体インディ系の映画館で深夜に名画を上映する時は、明らかに目がトロンとしてマリファナでハイになっている客がいました。まあ、マリファナでハイになる時は知覚が敏感になるらしいので、映画やアニメを見ると楽しいとはよく聞きますし、一人で勝手にハイになってる分にはいいです。

 

 ただ困るのは、楽しさのあまり全然面白くもないシーンで一人でゲラゲラ大爆笑しているんですよね。印象的だったのはダリオ・アルジェント版の『サスペリア』を観に行った時に、終始漫才ライブでも観にきてるんかってくらい笑っている客がいまして、普通に集中できなくなるのでやめてほしかったですね。

 

②話題の映画はフラッシュで記念撮影

 冒頭に書いたように、映画館でスマホを使われるのはもはや日常風景で、画面の撮影なんかしょっ中です。ある友達がインスタグラムに『死霊館2』を観に行った時に場内で怖がっている自分の自撮りをポストしていて、お前は映画を観に行っているんじゃなくて「いいね」貰いに映画館に行っているだろ!と呆れ果てました。

 

 特に『スター・ウォーズ』で毎回遭遇していたんですけど、オープニングの「ジャーン!」とタイトルが表示された時に、必ずフラッシュでスクリーンを撮るバカがいたんですね。『スター・ウォーズ』の場内は熱量が異常に高いので、流石に誰かが「クソ携帯を切りやがれ!(Turn off your fucking phone!)」と怒鳴るまでが定番のワンセットでした。SNSでシェアしたい欲は底なし沼です。

 

③上映中席を蹴られ続ける

 アメリカの映画館の座席は、楽な姿勢で見れるように、後方にもたれかかると簡単に倒れるものが多いです。逆に言えば、反動が伝わりやすいのですけれど、『ズーランダー2』を観に行った時、これまた明らかに酒に酔った4人組が座っていまして、映画に集中しないで「ここはお前の家か!」ってくらい会話を続けていました。(まあ、彼らが気兼ねなく話してしまうくらい『ズーランダー2』が悲しいほどコケていた、というのもありましたが…)

 

 ただでさえ迷惑なのですしたけど、激しいボディジェスチャーを交えて会話をしているので、ずっと席を蹴られ、前述のようにその反動でガッタンガッタン席が揺らされるのが辛かったです。日本だったら注意の一つもしたいところでしたが、この当時は南部のアーカンソー州に住んでいて、ちょうど映画館での銃乱射事件が頻繁に起きていた怖い時期だったので、グッと怒りをこらえてそそくさと前の方の席に移動しました、トホホ。

 

④ポストクレジットシーンを待つために前の通路で突っ立っている

 日本だとエンドクレジットで行儀よく座っている人が多いですが、アメリカではほとんどの人が帰ります。そもそもエンドクレジットは上映終了時の混雑を緩和するために始まったものなので(確か)、むしろそれ自体は正しい行為だと思います。

 

 ただ、昨今はアメコミ映画には次作を盛り上げるためのポストクレジットシーンをつけることが多く、熱心なアメコミファンはそれを見る為に待っています。ただ、ほとんどの人にとってはどーでもいい文字情報が長々と羅列しているだけなので、これまたポストクレジットシーンが始まるまではスマホで時間潰しているか、待っている間に通路で立ち話をすることが大多数です。

 

 僕個人としては、エンドクレジットは今見た映画の余韻に浸るための大切な時間なのですが、最悪音楽に集中したりしてスマホを弄っている人たちは無視します。ただ、一回心底腹が立った時がありまして、僕が劇場で観る時は大体足のスペースに余裕がある、前に通路が通っている席を選ぶことが多いのですが、肝心のポストクレジットシーンが始まった時によりによって僕の目の前で突っ立って見ていた客がいたことです。「見えないよ!」と伝えようにも、そいつがポストクレジットを熱心に見ている為に声が届かず、僕はそのポストクレジットシーンをスクリーンの右半分しか見えずに終わったことがありました。ファック!

 

⑤エンドロール中に大音量でYouTube

 これは先ほどの例と似ていますが、『キングコング 髑髏島の巨神』を見に行った時。エンドロールに入った際に、ポストクレジットを待っていた客がその場で『ワンダーウーマン』の予告編を大音量で流し始めました。先ほども書いた通り、せめてサントラに集中しようと思っているのに、ジャンキーXLのドコドコドラムに台無しにされてしまいました。ポストクレジットシーンになるとそいつは流石におとなしくしていましたが、心を乱された僕は冷静な気持ちで場面を見ることができなかったのは言うまでもありません。

 

 

 ……と、こんな感じで、思い出せるだけ羅列してみました。本当にいろんな客に遭遇したのでこれはほんの一例でありますが、見返してみるだけ中々な体験をしてきたなぁと思います。代わりに、今日本でスマホを弄っている客がいても、ニッコリと笑って過ごせるだけの度胸は……嘘です、やっぱクッソイライラしますね。ぶん殴りたくなりますね。

 

 基本的に映画館でのマナーは一つ、自分がやられて嫌なことはしない!これにつきます、ハイ。

 

 あ、今更ですが、アメリカ人のお客さん全員が悪い、と言いたいのではありませんよ、もちろん。比率で行ったらもちろんマナーがいい人の方が多いですが、マナーの悪い人の目立ち方が半端ない、ということをご理解いただければと思います。

 

映画館と観客の文化史 (中公新書)

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