僕がこの夏、色んな現場に出入りして知ったのは、映像業界でワクチンを受けていない人は意外に多いことだ。オリンピック・パラリンピックに出入りするTVクルーは職域接種が義務付けられていたらしいけれど、末端のスタッフはスケジュールが過密になってしまっているために受けられなかったり、副反応が出たら仕事がドミノ倒しになってしまうことを恐れて受けない選択をした人も多い。
もう一点思うのは、映像業界はどうしたって密が避けられない業種で、どこどこの制作会社や編集所でコロナ陽性者が出てしまった、という話を頻繁に聞いたし、映像業界という閉鎖的なコミュニティー内で感染が流行しているので、最近芸能人にコロナ患者が増えていることは決して無関係ではないと思うのだ。もちろん、対策を十分にしている現場もあるらしいが、大抵は予算が潤沢にある運のいい現場で、僕レベルが出入りする現場では見たことがない。
で、これは映像業界全体の反省点-というか日本社会全体の反省点とも言えるが-なのだけれども、このコロナ禍の1年半、一体何をやっていたんだろう、ということだ。1人でも欠けたら現場が回らなくなる体制も、「三密気にしてたら仕事にならないよね」と冗談みたいにテヘペロですましているのも根本がおかしい。アメリカの製作会社で働いている知人の話など聞くと、厳しい感染対策プロトコルが敷かれているようだし、最近はハリウッド映画でも「COVID コンプライアンス・オフィサー」なんて職業もクレジットで見かけるようになったくらいだ。
最近、綾瀬はるかが感染したけれど、彼女は9月にワクチンを受ける予定だったが、それはドラマや映画の撮影スケジュールが過密で受ける暇も副反応で休む暇もなかったからだと報道されていた。で、結果的に彼女は感染してしまって多くの現場を休まざるを得なくなってしまったけれど、綾瀬はるかが入院できたことを醜く批判するんじゃなくて、余裕のあるスケジュール管理や撮影前にワクチンを打たせるなどリスクマネジメントや健康管理ができてなかったホリプロや制作プロダクションを攻めるべきだと思うんだよな。なんかこういう教訓を得られる話がイソップ童話になかったっけ?