独裁者としての志

 僕がTikTokを始めて得た数少ない恩恵の一つとして、流行の音楽を知れるというのは確実にある。そもそも音楽を全然聞かない僕にとって、今どう言う音楽が流行っているのか、はたまた昔流行っていた音楽を教養的に知れるのはTikTokの美点と言っても良いだろう。

 

 んで、そのうちの楽曲の一つとして、『シル・ヴ・プレジデント』という曲がある。聞いたことがないと言う方は、取り急ぎ下記動画からサビまで聴いていただきたい。

 

 一度聴いたら頭から離れないキャッチーさがあり、軽快でポップな曲調と裏腹に

「 私が大統領になったら いやただの友達だよ~って誤魔化す奴はヘソから電気を流します

「大統領になったらね まずは君を捕まえるね

「濡れたタオルで 洗いざらい吐かせるの」

と浮気をする男に対する女性の恨み節が詰まったギャップが魅力な曲である。TikTok上で若者たちの間で歌ったりダンスをする動画が大流行したので、聴いたことがある人は多いだろう。今年の5月に公開された曲だが、現時点で再生数は5500万回近く!底辺YouTuberの僕にとっては途方もない数字だ。

 

 さて、話は変わるが、先日カフェで作業をしていたら、店内で流れてくるBGMでRADWIMPSの『マニフェスト』という曲を知った。

 

 こちらは2010年に発表された曲だけれども、恋人への気持ちをマニフェストに例えた歌詞で、次のように歌い上げる。

「僕が総理大臣になったら 日本国民一人ひとりから 一円ずつだけもらって君と 一億円の結婚式にしよう」

「僕が総理大臣になったら 君の誕生日を祝日にしよう」

 

 『シル・ヴ・プレジデント』と『マニフェスト』は世代が異なる曲だけれども、自らを為政者に例えた歌でラブソングにしているのはとても興味深い。そして僕は思った。

 

志が低くい!!!

 

 考えてもみて欲しい。総理大臣ですよ?大統領ですよ?

 

 そりゃ、民主主義で選ばれた首長はそんなやりたい放題できるとは思いませんけど、僕が歌詞を書くんだったら
「君のために国有地を安く売り飛ばしたい〜」とか
「都合の悪い公文書を全部黒く塗りつぶしたい〜」とか
「国境にデッカい壁立てたい〜」とか
「対立政党のデマをSNSで流したい〜」とか
「邪魔な記者とか暗殺したい〜」とか
「インターネットを監視して人民に不都合な情報を遮断したい〜」とか
「酒池肉林の限りを尽くしたい〜」とか、
そういう方が非常に人間的だと思いますね!
てか割とどいつもこいつも好き放題やってるな!ファック!

 

 これ、この間の配信で話しましたが、権力を与えられてしまった人間というのは、イモータン・ジョーに堕ちるか、フュリオサとして立ち上がるしかないのです。悲しい人間の性よ…。