『サウスパーク』S25E02「The Big Fix」感想

 今週のサブタイトル「The Big Fix」とは「大いなる修正」という意味。一体何の修正なのか。それは25年経って初めて明かされる、トークンの名前の秘密についてであった!

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 デンバーコロラドコンベンションセンターで開かれている、マリファナエクスポ。当然ランディも参加しているが、早々ハイになっていて「マリファナばんざーい!!」とヤジを飛ばしたり、真面目な話を聞く気がしない。ところが、近年合法大麻の購買をボイコットしようとする運動がありと知り、耳を傾ける。

 

 「これまで大麻の所持で検挙されていたのはヒスパニックや黒人など、有色人種ばかりでした。ところが、大麻が合法化されて長くなりますが、大麻栽培による富は白人の農業者に集中し、これまで社会的不利益を被ってきたマイノリティには還元されていないのです。そのため、マイノリティを雇っていない農家の大麻の購入を避けようとする傾向があるのです。社会的平等を達成するためには不可欠なムーブメントであり、断言しますが白人が所有する大麻農園は…潰れます。

 

 ショッキングな未来予測にランディはハイも覚め、家に戻って家族と作戦会議をする。「お前たちに真面目な話をするが…私たちには黒人の友達がいない。黒人のコミュニティに積極的に手を差し伸ばそうとしていないんだ。スタン、お前の仲のいい友達は三人とも白人じゃないか?」「俺たちのクラスには1人しか黒人の子がいないんだよ」「じゃあ何故その子と遊ばないんだ?」「トークンと?遊んでるけど?」「そうじゃなくて、お前たちは2人きりで遊ばないだろう?それはどうしてなんだい?」図星を突かれたスタンは思わず口籠もってしまう。ランディは続けて「そうだ、こうしよう。今度の週末、我が家にトークンの家族を呼びなさい。皆でディナーを食べよう」

 

 ランディの唐突の提案により、ブラック家がマーシュ家にお邪魔する。もちろん、料理は全て大麻でできている。ただ、明らかに不自然なセッティングに会話が弾まない。が、もちろんランディはブラック家を招待できただけで目的が達成できており、「いやー、我々の息子たちが友達ならば、私たちも友達になるべきですな!そうだ、インスタ用にセルフィーでも撮りましょう!」と、わざとらしい満面の笑みで集合写真を撮る。

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 「ランディ、私たちが黒人だから家に呼んだわけではないですよね?」とブラックさん。「な、なんでそんなことを聞くんですか?」「ここ数年、私たちと食事をしたことをインスタで皆に自慢するためだけに招待する人が増えているんのでね」とブラック婦人も釘を刺す。

 

 「そ、そんなダサいことする訳ないじゃないですか!私たちは純粋にトークン君とお二人とお近づきになりたかったんですよ。ところで、話を変えますけど、どうして息子さんをそんな名前にしたんですか?」とランディがぶっこむ。ちなみに、この質問の意味はトークンの本名は「Token Black(しゃべる黒人)」であり、これは映画やドラマ、あるいは会社などでも、差別がないことをアピールするためだけに黒人を雇うことであり、PCに配慮するあまり逆に差別的になっている役回りを意味する。これは長年単なるギャグとしての名前だと思われていたが、遂にランディがタブーに切り込んだ!しかし…

 

 「どういう意味ですか?」「いや、だって、その、あなたの息子さんの名前は少し、滅多にない名前で…」「私が敬愛するJ・R・R・トールキンにちなんで息子に名前を与えたことの何が問題なのかね?」なんと、我々がトークン・ブラックだと思っていた少年の本当の名前は、トールキン・ブラックだったのだ!

 

 あまりのショックに目を丸くするスタン。「君の名前はトークンだと思っていたけど?」「ああ、俺の名前はトールキンだよ」とトークンは意に介さない。なお、これは日本語でこそ表記が異なっているものの、英語にするとほとんど同じ発音で区別がつかない

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 食事を早々に終わらせ、急いでApexを遊んでいたカイルに電話をかける。「カイル、衝撃の事実を知ったんだ!トークンの本当の名前を知っているか?」「ああ、知っているよ、トールキンだろ」「いや、そうじゃなくて、ロード・オブ・ザ・リング』とか『ホビットの!」「だから知ってるよ、J・R・R・トールキンと一緒だろ?」とまさかの返しに、より驚くスタン。「ちょっと待て、前からみんな知ってたの?カートマンも?」「当たり前だろ、他にどう思ってたんだよ?」「いや、だってカートマンはいつも「Token Black」って書かれたTシャツ着てるだろ?」「それはカートマンがクズだからだよ」

 

 知れば知るほど衝撃を受けるスタンは、ダメ元でカートマンに電話をかける。「カートマン、トークンの名前がJ・R・Rトールキンから来てるって知ってたか?」「当たり前だろ」「じゃあなんでTokenっていつもスペルするんだよ!Tolkeinじゃなくて!」「J・R・RトールキントールキンにはLとIがあるの?ゲイな名前だな。他にどういう意味だと思ったんだよ?」カートマンまでトールキンだと知っていたとは、自分は差別主義者なんじゃないかとスタンは自分を疑い、病院に行く決心をする。

 

 一方でランディはトークン、もとい、トールキンのお父さんに農場案内をする。「ブラックさん、私と組んで農場を運営しませんか?」「私が?無理ですよ、コンサルタントの仕事がありますし…」「じゃあ私の農場の経営コンサルタントをしてください!」「それくらいならできますけど…」「やった!これで私たちだけで新しいビジネスを展開できますね!お祝いにマリファナ吸いましょう!」と勝手に物事を進めていくランディであったが…!?

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 トークンの名前の秘密に腹が捩れるほど笑った傑作回。何が痛快(かつ耳が痛い)かって、リベラルであろうとする人たちの偽善をぶった斬っているからだ。

 

 自分の話で恐縮だが、僕もほとんど白人しかいなかったアーカンソーの田舎町にいた時、僕を見るや否や近づいてくる人が多かった。「君、日本人なの?よかった、ずっと日本人の友達が欲しかったんだよね!

 

 一見優しそうに見えるが、つまりそれ、僕が日本人じゃなかったら友達にならなかったってこと?そして聞いてもいないのに共和党とトランプの悪口を話してくるのだ*1けど、結局自分はリベラルだとアピールがしたいという魂胆だ。卑近な例を挙げると、このブログを読んでいる人の中でも「同性愛者の友達が欲しい」となどとうっかり口にしてしまった人はいないだろうか?

 

 さて、トークンの本名はトールキンだったということだけど、トークン・ブラックは現在のハリウッド映画でもまだまだ見られる。一見多様性のキャスティングが実現しているように見えるが、結局のところほとんどの映画の主人公は白人男性であり、黒人でもラテン系でもアジア系でもLGBTQでも、結局は白人様の脇に控える役割が圧倒的だ。

 

 で、もう一つこの傑作エピソードが刺しているのは人々が無意識に抱いてしまっている差別意識だ。このブログでも前に紹介した*2

けど、今回の『サウスパーク』を観ていると『アベニューQ』というミュージカルの曲目「Everyone's A Little Bit Racist(誰もが皆ちょっとレイシスト)」を思い出す。

 

 この歌では日常会話でついつい他人種への偏見が出てしまったり、見た目で判断しがちな人間の性を歌っている。ただ、大事なのはそうした事実を無視することではなく、自分自身の差別意識と向き合ってそれを修正していこう、という曲だ。このミュージカルは約20年も前のものだが、本当に普遍的なテーマを歌った名曲だと思う。コメディって偉大だな!

 

 

*1:まあ、乗っちゃうんだけど

*2:ここで書きました。