台湾旅行記 vol.4

1月4日

 この日は午前中にお義父さんのお母さん(つまり婚約者の祖母)、午後にお義母のご両親(つまり婚約者の祖父母)に会いに行く。義父方の祖母は台南近くに住んでおり、お義父さんが経営している歯科院に住んでいる。この日はクリニックがお休みだったのだ。

 

 台湾という国は九州ほどの大きさしかないのに、民族的多様性に富んでいることに驚かされているが、義父方の祖母は公用語の中国語が話せず、普段は婚約者とも台湾語で会話している。前日に台湾語での自己紹介を教えてもらっていたのだが、すっかり忘れてしまっていた。なお、90近いご高齢の方だが、日本統治時代に学校には通っておらず、戦後日本語を地域交流センターで少し教わったそうだ。うる覚えの日本語を披露してくれたが、訛りが全くなくて驚いた。

 

 余談ではあるが、台湾を観光していると、すぐに歴史的な建築物を目にしたかと思えば、大体看板の書き初めに「日本統治時代…」とか「日本に統治されていた頃…」とか書いてあるので、なんだかとても気まずい気分になる。申し訳ないかと思えば、聞いていた以上に親日国で日本人だとわかればすぐに優しくしてもらえるので、複雑だ。あんまり論議を呼ぶことは書きたくないが、台南では慰安婦像も見かけた。

 

 義父の祖母への挨拶が終わると、婚約者が少し風邪気味だったので、地元のクリニックについて行く。待合室では台湾のニュース番組がやっているのだが、日本のワイドショー以上に情報量が多い!なお、台湾ではジェレミー・リン効果でNBA人気が非常に高く、この日はドノヴァン・ミッチェルが71点11アシストという、歴史的スコアを記録したニュースを報じていた。

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 クリニックの先生はとても優しそうな人だったが、婚約者曰く彼の奥さんはどっかのイケメンと不倫して離婚してしまったらしい。台南は小さい町なので、誰でも知っているお医者さん夫婦だったみたいで、地元ニュースで報じられてしまったそうだ。恥ずかしい…。

 

 診察が終わると、昼ごはんに日本式焼肉を婚約者のご両親からご馳走してもらう。なんと、1ヶ月前から予約しないと入れない人気店らしい。……の割に、お肉が正直スーパーで買うレベルの味で、「うーん…」と思っていたところ、義母さんが「このお肉、日本のと比べて全然美味しくないわよね?」と聞いてきたので、正直に「そうですねぇ、サラダとか海鮮とか台湾オリジナルサイドメニューは美味しいですけど!」と答えた。ほっ…。

 

 焼肉をたらふく食い終わると、今度は義母方の祖父母に会いに行く。この祖父母は客家族だそうで、台南から1時間車で走った農村に住んでいる。話す言葉も客家語であり、婚約者ですら何を話しているのか分からないそうだ。もう一度言うが、この小さい島国にこれほど民族的・言語的多様性が溢れているのはつくづく驚かされる。

 

 しかし、こちらの祖父母は中国語が話せるので、孫娘たちともキチンとコミュニケーションがとれているのでご安心を。お婆さんは僕が映像業界で働いていると知り、「エンタメ業界の人間は100%浮気する!」と心配でしょうがないらしい。それだけ僕もモテる人間だったら良かったんですけどね!婚約者から強制的に「僕は浮気をしないことを誓います」と中国語で暗誦させられ、ケラケラ笑っていらっしゃった。

 

 その後、また町から1時間くらい離れた客家族の郷土料理店でご飯をたらふく食べ、お腹いっぱいで21:00に家に着いたら、婚約者が「親友と会う約束を忘れていた!」とのことで、またすぐにお義母さんに車で送ってもらう。こんな時間に会ってくれるの?と思ったが、赤ちゃんが産まれたばかりで絶対に会う約束をしていたらしい。明日は台北に行くので、今日が最後のチャンス。そりゃ会っとかないとね。

 

 道中、結婚式場の広告を見かけたが、同性カップルの写真が使われていたことに驚いた。台湾では同性婚は合法だろうが、日本の広告で同性カップルを見ることはまずあり得ない。教鞭に立つ教育者である義母さんの見解を聞いてみるが、台湾ではもはや当たり前のことであり、仮に反対する人がいてもわざわざ嫌がることを口にする人はいないらしく、お義母さんも子供たちにも必ず性的少数者への理解を説いているとのこと。ここまで先進的な社会になっていたことに感心したし、常日頃からLGBTに対するヘイトを撒き散らす父のことが思わず脳裏によぎって少し恥ずかしくなった。

 

 そんなことを話しながら、赤ちゃんに会いに行く。生後4ヶ月でプニプニしていて犯罪的に可愛い。この子は将来どんな子になるんだろう。例えどんな子になっても台湾社会はそれを受け入れてくれる寛容さがあるだろうし、それが少し羨ましい。