ディズニー100周年ロゴで抱いたモヤモヤ

 昨日のブログでチラッと書いた通り、昨日仕事終わりに『マイ・エレメント』を観に行ったんですよ。で、『マイ・エレメント』の感想は後ほどのために置いておくとして、僕はディズニー100周年のロゴを観て、ちょっと色々と思うところがあったんですね。

 

 このロゴは確か実写版『リトル・マーメイド』でも流れたかな?ディズニー100周年を祝う特別バージョンで、いろんなディズニー映画の要素が組み込まれた豪勢なロゴになります。ロゴだけで44秒あり結構長く、『マイ・エレメント』ではオープニングだけでなくてエンドクレジット後にも全くカットせず44秒フルで流したので、長いよ!と思ってしまいました。

 

 まあ、そんなことは置いておいて、僕が物思いに耽ってしまったのは、背景に2019年版のリメイク版『ライオン・キング』のプライドロックが描かれていたことと、その直前にTwitter(Xとは呼ばない)で見たこちらのニュースが原因でした。

 

 こちらはディズニーの広報からのアナウンスメントですが、ボブ・アイガーは"映画の質を向上させ、経済的にする"ために映画のリリース本数を減らすだけでなく、一本あたりにかけるコストを削減することを明言しました。

 

 2010年代の映画業界はディズニーが制覇したと言っても過言ではありません。マーベルとルーカスフィルム20世紀フォックスを買収し、ありとあらゆるビッグタイトルを欲しいがままにしたディズニーは次々とフランチャイズの続編を作り続け、あるいは自社製の名作アニメをリメイクしまくって観客を映画館へと向かわせました。こちら、Wikipediaからの引用ですが、2010年代の興行収入ランキングで10本中8本をディズニー配給作品が占めているのは驚異的です。

 

 飛ぶ鳥を落とす勢いのディズニーでしたが、2020年代に入り失速しました。そもそも映画業界自体がコロナ禍で苦しみ、大手映画会社各社が配信プラットフォームに力を入れました。ディズニーもSWやマーベルオリジナルドラマを強みに、一時期1億6400万人という日本の人口を軽く凌駕する登録者数を誇っていましたが、それから3ヶ月後の現在1億4600万人まで減ってしまいました。まだ大きい数字に思えますが、2000万人もの人が契約を解除したと考えると中々な数字です。

 

 当の強みであったはずのマーベルオリジナルドラマも、先日配信された『シークレット・インベージョン』の視聴率にいたっては100万世帯に届かず、マーベル史上最高額の制作費にもかかわらず、マーベルドラマ史上2番目に低い視聴率を記録してしまいました。コロナ禍から映画界が回復しても映画事業も不発ばかりで、アニメもピクサー映画も『インディ・ジョーンズ』も巨額の制作費や宣伝費を回収しきれない赤字ばかりが続いてしまいました。今ディズニーでうまくっているのはテーマパーク事業だけです。

 

 この業績を受けての方針転換なのでしょうが、ディズニーは2015年11月(『フォースの覚醒』公開前)の時点で、「観客が劇場に足を運ぶ限り、毎年『SW』の新作を作り続ける」という強気の発言をしたり、ボブ・アイガーも「マーベルは永遠に続く」と語っていたので、当時から今の状況を考えると大変皮肉なものを感じます。

 

 つまり、2010年代のディズニーは資本主義やマーケティング至上主義的な観点でしか映画制作を行なってきませんでした。もちろん、それは他のビッグスタジオも同じでしょうが、特にここ10年のディズニーはファンが多い映画シリーズを買収してまで徹底的に観客を呼び込もうとしていたのは他のスタジオの姿勢とは一線を欠く以上さだったと思います。ヒットした実写作品もほとんどがリメイクや続編ばかりで、成功した新しい企画が少なかったのも印象深いです。

 

 で、話を冒頭のロゴに戻すと、確かに今年は記念すべきディズニー創設100周年でしたが、この10年ディズニーが作ってきた映画でインパクトを残したオリジナルなものは果たしてどれだけあったのだろう?と、CGで描かれたリメイク版のプライドロックに喚起させられたからです。誤解なきよう、もちろん『ズートピア』や『モアナの伝説』など、オリジナルで素晴らしいアニメーション映画もたくさん生まれてきました。

 

 ただ、ちょうど10年前に特大ヒットとなり社会現象となった『アナと雪の女王』がわずか10年の間に短編3本に長編続本1本が作られたことを思えば、この10年のディズニーの映画製作の姿勢がよく分かるのではないでしょうか。なお、ボブ・アイガーは先述した広報で次のように述べていました。

ビッグ・フランチャイズやテントポール*1に集中することで、我々は既存のライブラリーに人々の興味を生じさせることができる。例えば、ディズニー+では過去の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズやオリジナルの『アバター』、そして『インディ・ジョーンズ』4作に多大なエンゲージメントが観測されている。

 その"オリジナル"の『アバター』を作ったのは20世紀フォックスで、『インディ・ジョーンズ』はパラマウント製でした。いかに他人のふんどしに頼り切ってるか分かる象徴的な発言ですね。

 

 今日はこのままもう一記事『マイ・エレメント』のレビューを書こうと思ったのですが、明日も仕事入っちゃったので、昨日の約束が果たせなくてすみませんがこの辺で!

 

 

*1:会社の業績を支える映画のこと