かっこよく禿げたい

 最近嫁さんとジムに通っているんだけど、そのジムが入っている建物のエレベーターには監視カメラがついており、そのカメラで撮られている映像はエレベーターのモニターにそのまま映し出される。今日もヘトヘトになってエレベーターに乗って何気なくモニターを見たら衝撃的な事実に気がついた。頭頂部が薄くなっているのである。

 

 正確にはつむじのところが大きくなっているくらいで、もしかしたらシャワーを浴びたばかりだから余計に目立っているのかもしれないが、それでも一大事である。なにせ、僕は父方も母方の家系もハゲとは無縁で、父親なんて70近いのにまだフサフサだし、僕は遺伝子的には安心し切っていたのだ。まさに不意打ちと言ったところで、強いショックを受けた。

 

 僕は学生の頃から、僕がハゲたら全剃りにすると友人たちに豪語してきた。ハゲを隠そうとして無理な髪型にするからみっともなく見えるのであって、ハゲたらハゲたらで堂々とすればいいのだ。マイケル・ジョーダンブルース・ウィリス、ライムスター宇多丸…。ハゲててもかっこいい人はたくさんいて、むしろスキンヘッドには憧れがあった。加えて、現代はアンチルッキズムの世の中である。別にハゲたって人間としての芯がかっこよければいいじゃないか。

 

 と、フサフサの頃はそんなことを呑気に思っていたのだが、いざ自分の身に降りかかった時のショックが強さたるや。何事もそうだが、言うのは簡単である。できることならハゲたくないと、情けなく神に縋り付いている自分のダブルスタンダードに気が付かされてしまった。

 

 幸にして、僕は普段から仕事でもプライベートでも自分のシンボルのようにトロントラプターズのキャップを被っているので、この頭頂部が目立つことはあまりないだろう。が、むしろ帽子を被りすぎてこうなってしまったのか…。しかし、今まで以上に人前で脱ぐことができない。この往生際の悪さこそ、僕が若い頃に批判していたものである。マイケル・ジョーダンブルース・ウィリス宇多丸も、彼らのカッコよさは己のハゲを受け入れてこそだ。ハゲるなら、僕も精神からカッコよくハゲたいものだ。