お笑いが権力を持つ日本

 日本で一つ不思議なのは、「お笑い」が神格化されていることだ。「日本のお笑いは世界一」という根拠もないよくわからない風潮も確かにあり、その人気っぷりはスーパーボウルのような国民的大イベントになった『M-1グランプリ』や『キングオブコント』などに代表される。お笑いの大会で優勝したコンビや芸人は、リーグ制覇を成し遂げたスポーツチームや選手のようなリスペクトを勝ち得る。

 

 誤解なきように記しておくが、僕もお笑い自体は人並みに好きだし、日本のお笑いを過度に腐すつもりもない。しかし、やはりここまで「お笑い」が正義とされ権威づけられている文化も中々ないと思う。「お笑い」は経済を回し、政治を動かしていると言っても過言ではない。

 

 僕は松本人志スピードワゴン小沢は最低だと思うし、芸人たちがテレビやYouTubeなどで披露するトークなどから察するに、二人に限らず芸人たちは女性を日常的に性的に消費されていただろう。しかし、彼らがこれを機に失墜する可能性は残念ながら極めて低いと思う。小沢は置いておいても、それほどまでのカリスマ性と権威が松本人志には与えられてしまった。ジャニーズ事務所の問題が今年上がったのも、帝国を築いたジャニー喜多川が故人となったから、またBBCなどの海外メディアの報道によるプレッシャーがあったからこそだろう。

 

 実際、ネットでは文春叩きや被害者叩きが始まっている。大衆をバックにつけた吉本と松本人志は、記事の内容を対して検証することもなく、法的措置を検討している。思い出して欲しいのは、2年前にマリエが過去に起きた島田紳助出川哲朗の性加害を告発した際、守られたのはやはり「お笑い」側だった。今回ばかりは被害者たちが救済されることを心から願っているが、その望みが薄そうなのが悔しくてならない。ポストジャニーズを経て、芸能界は変わることができるのか。