毎年大晦日に年末ベストテンを発表していますが、その前日はコメディ映画ベストテンをお送りするのが恒例となっております。去年は鑑賞本数が少な過ぎて10本選べませんでしたが、今年はギリ足りたので久しぶりに発表します！
なお、毎年言ってますが、これはあくまで「コメディ映画」としてのベストテンです。
【2023年コメディ映画ベストテン】
- 逆転のトライアングル
- 『South Park: Joining the Panderverse』&『South Park (Not Suitable for Children)』
- 『デイヴ』S3
- コカイン・ベア
- スラムドッグス
- ダンジョン＆ドラゴンズ/アウトロー達の誇り
- レンフィールド
- マッシブ・タレント
- ショットガン・ウェディング
- バービー
【解説】
①は明日の映画ベストテンにも絡んでくるでしょう、徹底的に資本主義を風刺する切り口が見事な鋭さで、毒された金持ちどもがウンゲロに塗れるのは愉快そのもの。3幕構成になっているが、話がどこに転がっていくか分からない面白さもありつつも、テーマはやはり「金」で一貫している。権力やパワーに立ち向かえるのはコメディというお笑いの基礎に立ち返らせてくれた本作がNo.1！
②『サウスパーク』は契約により、2020年からパラマウント+で定期的にTV映画を発表しているが、その2本をそのままランクイン。『Joining the Panderverse』は昨今のハリウッド映画でもう使い古されまくったマルチバースを題材に、ディズニーがテキトーなポリティカルコレクトネス*1でいかに過去の名作をぶち壊しているか、さらにはAIブームによって自分じゃ何も出来なくなっていく人々を切る。『(Not Suitable for Children)』は金儲けのためにOnly Fansにポルノを配信し始めたランディを中心に、いかにインフルエンサーが子供達に悪影響を与えつつ、SNS企業がそれを利用しているかを暴く。もう放送開始後26年も経つのに、トレイとマットの鋭さが衰えることはない。
③は反則技だけど、あまりにも素晴らしいコメディドラマシリーズだったのでランクイン。特に最終話の衝撃的ゲストは是非目撃して欲しい！爆笑するだけでなく、一人のラッパーの自己探究物語として本当によく出来たシリーズだ。早くS4が観たい！
④は「コカインでハイになったクマが人を襲う」というハイコンセプトな映画ながら、ちゃんとしっかり親子愛のドラマを中心に添えているのが素晴らしい。脚本としての伏線回収も見事であり、クマが次々に人を食うのも楽しい。奇遇にも今年はクマの被害が目立った年なので、日本においては中々象徴的な映画になってしまった。
⑤は恐らく動物映画史上最も下品な映画だが、これも核にあるストーリーはキチンとファミリー向けの動物映画をなぞっているのが丁寧で笑える。もし名画座を運営していたら、なんとなく④と一緒にかけたい。バカバカしくも巧い、アメリカンコメディの技巧を堪能できる二本立てである。
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⑥は傑作！とまではいかないが、2020年代にファンタジーを作るなら、これ以上の正解はないんじゃないか？っていうくらい模範例。こんなに疲弊する世の中なんだから、これくらい肩の力を抜けるのがいい。また、クリス・パインとミシェル・ロドリゲスに恋愛関係はなく、バディムービーみたいな関係を男女でやってるのが最高に2020年代って感じでフレッシュ。ジョナサン・ゴールドスタイン&ジョン・フランシス・デイリーは『お！バカンス家族』や『ゲームナイト』も最高だったよ！
⑦はドラキュラとその手下レンフィールドをモラハラカップルみたいな関係に再解釈した痛快コメディ。ニコラス・ケイジの快演が素晴らしい！監督が『LEGOバットマン』のクリス・マッケイ（ちなみに⑥の原案も！）とあってテンポの良くギャグが展開されるのは心地いい。バイオレンス描写も笑っちゃうくらい凄まじい。日本で劇場公開がなかったのは寂しいなぁ。
⑧は上品な『The Interview』って感じだが、当然ニコラス・ケイジのキャリアと重なり、父娘物も加わり、更には「映画作りについての映画」要素もある事で、気楽に見れる割にはレイヤーが多層で深みのあるコメディ映画になっていた。この映画自体がニコラス・ケイジとハビが目指す、キャラクターを中心にしつつ、観客向けに誘拐劇を取り入れる映画になっていたのは感動したのだけれども、アメリカでは興行的に上手くいかなかったようで悲しい…。結局「マーベルかスター・ウォーズ以外」観られていない。
⑨は冒頭はちょっともたついてて「大丈夫かな、これ…？」と心配になりつつも、途中からジワジワとウェディング版『ダイ・ハード』とも言える伏線が効いた脚本の緻密さに唸らせた。バカっぽいギャグで笑わせてくるし、ロマンス映画としてもしっかりウットリさせる。ベタだけど、次から次へとアクションが展開される中で夫婦関係性が向上していくのはとても良い脚本！
⑩はもっと笑える作品が他にあったので順位を下げてしまったが、女児の玩具をここまで哲学的に映画化できて、しかも社会現象を巻き起こす特大ヒットを起こしたのは特筆に値する。公開当時TLは結構賛否分かれていた印象だけど、個人的には非常にギリギリなバランスでフェミニズムを謳いつつ男性にも優しく寄り添い配慮の成された映画だと思う。ちょっと、いらないところでミソがついちゃったよね…。
ということで、次は年末ベストテン！お楽しみに！
*1:これは注釈しておきたいが、僕は映画にポリティカル・コレクトネスを持ち込むことは悪くないと思っているし、映画を「ポリコレ」で叩く人は軽蔑する。ディズニーの問題点は文脈に沿った政治的正しさではなく、マーケット主義的にシステマチックにPCを導入している点だ。
