ノスタルジアポルノ警報

 このような映画ニュースを見かけましてね…*1

 

 元々『運命のダイアル』の制作自体歓迎していませんでしたが、この「冒頭25分は“35歳”のインディが活躍」という部分に引っかかってしまいまして、またディズニーが性懲りも無くノスタルジア搾取の映画を作るんじゃないかと今から震えています。

 

 「若返り効果」はもちろん凄い技術で昨今映画で見かけることも当たり前になってきました。怪作『マッシブ・タレント』でもニコラス・ケイジが想像上の自分と話す時は、若い時の自分を「若返り」効果で演じていましたね。

 

 でも僕は「若返り効果」は一歩使い方を間違えると大変危険な技術だと思っています。すでに死んでいる役者をCG技術でフランケンシュタインの怪物みたいに蘇らせて勝手に演技させたり、AIで死んだアーティストの曲を発表させるのと非常に似た倫理的にグレーなものを感じます。その理由で『マンダロリアン』や『ボバ・フェット』に登場するルーク・スカイウォーカーが全く受け付けられません。

 

 「若返りは死んだ役者と違って本人が演じて(許可をして)いるんだからいいだろう」という声が大多数だと思いますが、僕は根幹の問題は同じだと思います。特に役者が肖像権を企業に明け渡してしまっているのは考えもので、これにより映画のキャラクターは役者の肉体から切り離されて商品と化してしまいます。

 

 若返り技術の全てを批判するつもりはありません。メイクや皺にワセリンを塗ったりすることで役者をカメラの上で若く見せる技術はCGIが生まれる前からありました。物語を語る上で本当に効果的であれば、若返りも選択肢の一つだと思うのです。先の『マッシブ・タレント』や『アイリッシュマン』などはいい例です。

 

 が、ディズニーや大手スタジオが多用している若返り技術は観客のノスタルジーを消費する要素が強く、ここに強い危機感を抱きます。そもそも、芸術はアーティストの命が有限だからこそ価値があり、役者も20代には20代の頃の、80代には80代の頃にしか出せない魅力があるはずです。

 

 しかし、昨今エンタメ業界で流行っている若返りの技術は、そうした有限性は一切考慮しておらず、観客が観たい役者のイメージをただただデータで再現し、金儲けのために利用している資本主義的な要素があまりにも強すぎます*2。観客が見たいものをただ再生産しているだけで、そこにクリエイティビティは何もありません。

 

 って、おーっと、まだ世界中で誰にも見られてすらいないのに、批判はいけませんね!今日はここまでにしておいて、続きは映画が公開されて本当にノスタルジアポルノに仕上がっていたら書きましょう。いやー、楽しみだな、『運命のダイヤル』!!!

 

taiyaki.hatenadiary.com

taiyaki.hatenadiary.com

 

 

*1:余談ではありますが、キシオカさんは信頼性がある海外の映画ニュースを厳選し、即時に翻訳してまとめて伝えてくれるので、映画ファンならTwitterフォロー必須です!

*2:あと、関連してディープフェイク技術の危険性について、こうした企業がどこまで自覚的なのかも甚だ疑問です