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「夢」に恋してる。/『ラ・ラ・ランド』★★★

 先日ゴールデングローブ賞で史上最多7部門を受賞した『ラ・ラ・ランド』を昨年末に鑑賞。今年に入ってからも更に2回鑑賞済み。監督・脚本は『セッション』のデミアン・チャゼル、編集はトム・クロス、音楽はジャスティン・ハーウィッツ。出演者はエマ・ストーンライアン・ゴズリング*1、ピアニストのジョン・レジェンド、JKシモンズら。

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  堂々と「シネマスコープ*2のロゴが現れた後、青々としたロサンゼルス(ラ・ラ・ランド)の空が映る。カメラはゆっくりとティルトダウンし、渋滞している車中から色とりどりの洋服を着たダンサーたちが降り、縦横無尽に踊り出す。計算尽くされたこの驚異的な長回しオープニングの楽しさに、僕はこの映画に一目惚れしてしまった。

 

 『ラ・ラ・ランド』はエマ・ストーン演じるミアとライアン・ゴズリング演じるセバスチャンのロサンゼルスを舞台としたラブロマンスである。ミアは女優の卵で、セバスチャンはジャズバーのオーナーになることを夢見るピアニストだ。二人とも夢を糧にその日暮らしに生きる若者で、二人の根底にある情熱が互いを惹きつけあったのだろう。

 

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 そういえば僕も一昨年の秋にロサンゼルスへ行った。歌手になりたい友達のオーディションについていくついでに自分が作ったDVDを配り歩く事が目的だった。いきの飛行機の中でたまたま知り合ったESPN(スポーツ局)のプロデューサーに一枚渡しただけで、当然街では誰も受けっとてくれず。大手スタジオに行ったものの門前払い。そのプロデューサーからも特に連絡はなし。

 

 確かに僕がとった行動はあまりにも無謀だったかもしれないが、夢の都ロサンゼルスとは基本的にそういう場所だ。ミアやセバスチャンのような夢追い人がまるで街灯に魅せられた羽虫のように集まる街である。誰もがチャンスに飢えており、出世のためには遊びも恋も利用することを厭わない。パーティー会場の人混みの中にいるかもしれない誰かしらといつか出会えることを願っている。

 

 しかし、夢を見ることは残酷な現実と直面することでもある。いくら努力してもその他の才能ある人たちの中に埋没してしまう恐怖や、自分が追い求める方向性が大衆の需要に満たないジレンマ。ミアやセバスチャンの前に立ちはだかる壁は、この映画に出てくるエキストラたちの美しさや華やかさからもハッと気付かされてしまう。名もない役だけでもこれだけの美男美女がいるのに、ハリウッドのスターになれるのは僅か一握りである。

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 ただ、『ラ・ラ・ランド』は夢を見ることの苦さを描いている一方で、夢を見ることの逞しさもまた忘れない。夢見がちな人は他人には愚かに見えるかもしれない。しかし夢を持つことで人は自由を得る。夢を追う事が過酷な現実への反乱となるのだ。

 

 先述したオープニングに代表されるように、『ラ・ラ・ランド』のほとんどのミュージカルシーンはロングテイクである。数々の驚異的なカットからキャスト、エキストラ、スタッフ、この映画に関わっている全てのプロの仕事が堪能できる*3。思えば彼らもミアやセバスチャンと同じ立場からスタートしたのであり、そんなドリーマーたちが作った本作のエンドロールに連なる名前には改めて重みを感じた。見事な夢への賛美歌である。

 

La La Land

La La Land

 

 

*1:エマ・ストーンライアン・ゴズリングは『ラブ・アゲイン』『LAギャングストーリー』に続く3度目のタッグ。もはや阿吽の呼吸、ともいうべき域に達している。

*2:これ、初めて観に行ったメンフィスの劇場では両端切れてたんだよ!信じらんねー!

*3:ライアン・ゴズリングのピアノなんかはマジで弾いてるって分かるからビックリしたよ!