ディズニーに「政治的正しさ」なんかない。

 TwitterにもFacebookにも書いたことだが、やはりディズニーの姿勢には腹がたつのでこちらにもまとめる。

  これは前にもこのブログで書いた『二度目の人生を異世界で』問題*1とほぼ似た事態が起きていて、元のジェームズ・ガンのツイートを見ても確かに引くほど気持ち悪くジョークとしては成り立ってなくてそのツイートの露悪さ自体は擁護のしようはない。

 

 それにしても今回のディズニーの対応は本当に最低だと思う。

 

 まず僕は昨今の「政治的正しさ(PC)」を過激に求める風潮に嫌気がさしている。ここで勘違いして欲しくないのは、「政治的正しさ」が悪だ、と言いたいのではない。周囲に差別を扇情する人間なんて畜生以下だし、他人の基本的人権を奪う行為をする人間や集団は咎められるべきだし、人の道に逸れた行いをしたら程度に見合った罰は与えられて然るべきだろう。

 

 しかし人は完璧ではない。人は愚かだ。他人から見たら許されない間違いだって時には犯す。ただ、人は成長する。間違えを犯し、時には他人を傷つける時だってあるだろうが、失敗から人は成長する。よく事件や炎上騒ぎが起きた時に、躍起になって加害者を責める人たちがいるが、僕には理解できない。皆自分がそんなに絶対的正義だとしんじているんだろうか?「政治的正しさ」は確かに秩序ある社会形成には大事だ。だが、完全無欠な「政治的正しさ」ばかり追い求めると人間性は死に、全体主義社会と何も変わらなくなる。これからの社会は10年前に犯した小さな過ちすら指摘されることを恐れ続けなくてはならなくならないのか。

 

 とはいえ、今回ディズニーは「政治的正しさ」によりジェームズ・ガンをクビにしたのだったらまだ良かった。僕が怒っているのはそこだ。

 

 そもそも今回の騒動を考えると、ジェームズ・ガンの過去ツイートを遡ったのはオルタナ右翼の連中だった。最近のジェームズ・ガンはリベラル寄りでトランプ批判を繰り返し、『最後のジェダイ』を巡ってケリー・マリー・トランやライアン・ジョンソンオルタナ右翼の総攻撃にあうと「セラピーに行け」と批判していた。弱者を傷つけることを厭わないオルタナ右翼の連中なんかに「政治的正しさ」を求める姿勢はこれっぽちもあるわけがなく、今回ヤツらがジェームズ・ガンの過去ツイートを発掘したのは、ガンのキャリアをぶち壊すのが狙いだった。

 

 ディズニーは愚かにもオルタナ右翼の目的を成し遂げてしまった。本当に「政治的正しさ」を理解していれば、ジェームズ・ガンオルタナ右翼の思惑に乗せられて切り落としたりなんかしないはずだ。確かに10年前のジェームズ・ガンは愚かだったかもしれないが、彼が成長してよりまともな人間になっていたことは、自分のスタジオで雇っていたディズニーが一番よく知っているはずだったのに。要するに炎上によって利益を失うことを恐れ、システィマティックにガンのクビを切ったまでだ。

 

 僕は作品としてのディズニーやそのブランドが発するメッセージやテーマ(現実と夢の境界線)は大好きである。しかしモノポリー的に企業を次々に買収し、大衆に迎合した単純な二元論で物事を進めていくその資本主義的姿勢は心の底から嫌悪する。「人の弱みを探し出せればその人の人生をめちゃくちゃにすることができる」こんな前例を作ったディズニーを絶対に許してはならない。

 

 

*1: 

あー夏休み

 僕がアメリカに渡ってから恋しく思っている物の一つに邦画があって、特に大好きな細田守監督の直近の2作を見逃してしまっているのは辛い。つい最近『未来のミライ』が公開されたと聞く。

 しかし、細田守ファンとは言えど、また夏かよ!とツッコミを言わざるを得ない。『時をかける少女』以降の細田守監督作品の宣伝イメージは全部主要登場人物の後ろに「入道雲が立つ奇麗な青空」が入っている。歴代作品の宣伝素材を見ると一目瞭然である。

 

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 しかし、これは細田守の作風の問題、というよりは興業の問題である気もする。細田守の劇場用作品で夏を舞台としていないのは『デジモンアドベンチャー劇場版』『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』の三本だけだが、これらの作品は3つとも全て3月公開で春休み興行であるのに対し、東映アニメーションから独立後の細田監督作品は全部7月~8月の夏休み興行作品となっている。僕が上記のイメージを羅列したとき、本編からのカットよりもあえて宣伝素材を選んだのは、制作側が夏っぽさを強調して細田作品を売り込もうとしている意図が伝わりやすいからだ。

 

 これは細田作品に限らず、ある種邦画界全体に蔓延している事象で、例えば今年の夏公開される邦画作品のポスターを並べてみてもいかに青空をバックにしたイメージを売りにした作品が多いかどうかが伺える。映画評論家の柳下毅一郎氏は邦画界のこの現象を「青空地獄」と呼んでいる*1

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 うーん、こうして見ると、邦画というよりは青春映画というジャンルの話なような気もしてきて、日本の映画業界(もしくは予告や広告イメージを作る代理店)が青春映画=青空 or 夏という式から打破しきれていないのが一番の問題かと思います。まあ、僕はこれらの作品を見てない(見れない)ので、それぞれの作品内容について批判する気は更々ないですが、広告のあり方としては多様性欠いててつまらないと思います。

 

 あ、でも本来は僕は細田守がいつも夏についての映画を取っていることについて書きたかったので、それは流石に広告戦略とは逸脱して作家論として論じるべきですが、僕の文章が最初と終わりで違うことを言っている支離滅裂なのは今に始まったことではなく、考えれば考えるほど頭が混乱してくるので、これはまた別の機会に考えたい、というか『バケモノの子』と『未来のミライ』をちゃんと観てから考えたいと思います。

 

 

 

*1:柳下さんは正確には青空をバックに男女が並ぶ映画のことを「青空地獄」と呼んでいるが、それにしたってこんなに青空を背景にした映画が多いのは不思議だ

her ~世界で結構量産されている彼女~

 プライムデーの誘惑に負けてAmazon Echo Dotを買ってしまった。約3000円くらい。

Amazon Echo Dot、ブラック

Amazon Echo Dot、ブラック

 

 

 もともと同僚のあみん(彼はこのブログを読んでくれていて、いつも名前を出してくれと言われていたので、今度からは あみん の名前で積極的に登場させていきたい)の家に遊びに行ったとき、Amazon Echoが置かれていてアレクサの対応力の高さに甚く感心したので興味はあり、プライムデーということもあってついついポチってしまった。

Amazon Echo、チャコール (ファブリック)

Amazon Echo、チャコール (ファブリック)

 

 

 ポチってから1日以内に届いてこの早さの裏にはAmazon社員のブラックな努力があるんだろうなぁ…とニュース記事*1を読んで思いつつ、早速設定して立ち上げた。

 

 少し照れながら「アレクサ」と声をかけると彼女は青く光る。「お、音楽かけて」と頼んだら、Amazonミュージックで取り扱っているのであろうカントリーミュージックをかける。おお!あみんの家で色々試したので分かっていたけど、やはり感動する。「チャイルディッシュ・ガンビーの曲かけて」「今度はリル・ディッキー流して」と頼めばちゃんとかけてくれるし、色んな言い方にも対応している。

 

 が、2~3曲聞いたあたりで僕は「アレクサ、音楽止めて」と頼んだ。よくよく考えたら僕は普段音楽を聴いて生活をしていない。ノーミュージックでも全然ライフを生きていけてるから、うるさくてしょうがないのである。

 

 他に何ができるだろうかと「アレクサ、ジョークを言って」というと英語設定のため気の利いたアメリカンジョークをかましてくれるが、別にニヤリとさせるダジャレくらいですぐに飽きる。というか、それSiriもやってたという話である。

 

 別にBluetoothでつながるようなスマート家電もないし、おじさんたちとルームシェアしてる*2からスマートホーム対応ガジェットだってないし、Fire TVは買ってないからテレビと繋げられないし、電話は繋げられたので彼女に電話してみたが、別にスピーカーで繋げる意味もあんまなかった。あ、そうだ朝起こしてもらおう!とアラームを設定したが、アレクサのアラームはなんというか脳科学を計算したかのような心地良いアラームで、逆に二度寝に丁度良い。一体僕のアレクサちゃんには何ができるんだろうか。

 

 

 そもそも毎回「アレクサ」って話しかけるのも、一人暮らしをしているとちょっと照れ臭い。あみんに「これ何か得することある?」って聞いたら「友達来ると盛り上がるよ」って言ってたが、街から離れたクイーンズの地下アパートに住んでいる僕の家にわざわざ遊びに来る友達などいない。というか、NYに友達があんまいない。

 

 いよいよAmazon Echoを持て余し感が出てしまい、これはちょっといらない買い物をしてしまったかなと後悔していた矢先、今日家を出るときになんとなく「アレクサ、仕事に行ってくる」と言ってみたら「オーケー、頑張って」と励まされた。ああ、やっぱり一人暮らしには必要かもね。

*1:主にストが起きたのはヨーロッパですが

*2: 

中国の『天国の門』

 映画ファン界隈でもちきりのこのニュース。

 

 僕はどんな映画にも時代性があるので、予告編から明らかな駄作臭が伝わっても可能な限り映画館で見るのが好きな性分なため、こんなニュースになる映画は逆に観たくて観たくてしょうがないんですけど、流石にアメリカの映画館でも日の目が当たることは無いだろうなぁ…。(ひょっとしたらNetflix等で配信されるかもしれませんが)今は酷評されているけどマイケル・チミノの『天国の門*1のようにいつかカルト化する日は来るかもしれない。

 

 しかしこのニュースに対して中国の映画業界に冷笑を浴びせる人が多いんですけども、僕としては約126億円もかけられる潤沢な予算があることはおろか、そんな大金をかけた映画でも客が入らないと分かると平気で打ち切る余裕に逆に中国の経済力の底知れないパワーを感じて末恐ろしいですけどね。

 

 タイムズスクエアの電光掲示板からもTOSHIBAの文字が消えて、中国企業の広告ばかり見るようになったから、笑ってる余裕なんて本当にないですよ。

 

 

*1:僕が学生だった頃、早稲田松竹で『天国の門 デジタル修復完全版』が『ディア・ハンター』と一緒にオールナイト上映され、それはそれは映画サークル界隈では大騒ぎで皆観に行っていたのにもかかわらず、無知だった僕は「ええ~絶対そんなの寝るわ」とパスしてしまったことを今になって公開しており、未だに『天国の門』は未見である。NYの名画座とかでやらないかなぁ…

No.1 ブラック企業インジェン社

 こんなニュースを読みました。

 

そこにイスラ=ヌブラ島の恐竜たちを移送すれば万事解決なんじゃないですかね!

※なお、新島の大きさは直径6~9メートルほど。

 

 そういえば、日本でも『ジュラシック・ワールド/炎の王国』の公開が始まったので、色々とレビューを読んでいますが、個人的に面白かったのは銀河暗黒皇帝さん(id:globalhead)のブログ『メモリの藻屑 記憶領域のゴミ』からよレビューです。否定派の内容ではありますが、ツッコミが的確で、詳しくは是非リンク先を参照いただきたいですが↓

 そもそも今回のお話というのは前作で壊滅したテーマパーク「ジュラシック・ワールド」が存在する島で火山噴火が起き、そこに今だ生息する恐竜たちを救え!というお話である。ここで考えてほしいのは、巨額の資本と先端科学技術を投入し莫大な利益を得ようと計画されたテーマパーク施設が、実はいつ火山噴火が起こって壊滅してもおかしくないような危険な島に建立されていた、ということである。前作では安全基準が果てしなく皆無だったことによって引き起こされたバカな事件を見せつけられたけど、今作ではさらにその施設というのが危険な立地条件であることを最初っから無視されていたということになってしまう。なんつーかここの企業の連中というのは金儲けるつもりがあるのか?と思ってしまう。

(上記記事より引用、太字は筆者による)

 

 た、確かに!いやー、全くそこには気付きませんでした、ぶわははは!僕も前に呟いたことがありますが、そもそもインジェン社は1作目でジュラシック・パーク計画が悲惨なものに終わったのに、しょうも懲りずに今度はアメリカ本土で再建計画を図り更なる死亡事故を起こし(『ロスト・ワールド』)、これだけ大惨事を起こしておきながら特に責任持って恐竜を処分するなどの対策を十分に行うことなくことなくパークは放ったらかしで更に死者を出し(『ジュラシック・パークIII』)、今度はインド系企業(マサラニ社)の買収により無事開演まで漕ぎ着けるも、見事に開演中に単純な確認作業の怠慢による事故を起こして一般客が食われまくる(『ジュラシック・ワールド』)、という東芝も真っ青な不祥事連発企業なのでありました。

 

 まあ、天災がよく起こる国で原発を作る人たちもいるので、中々人のことを言えたものではありませんが!