偏愛!全スピルバーグ作品ひとり総選挙!

 一番最初になりたかった職業は古生物学者だった。というか、琥珀から血を採取して恐竜を復活させる人になりたかった。小学生の時は学研の恐竜図鑑を買ってもらって毎日ティラノサウルスヴェロキラプトルを模写していたし、いろんな恐竜の全長や体重、生態、生きた年代を暗記した。

 
 中学生になってようやく、どうやら現代の技術では恐竜は到底復活できないらしいということを知った。代わりに考古学者になりたかった。世界中を飛び回り、遺跡を探求して秘法を見つけたり、時には謎の組織に命を狙われたり。そのせいなのか今でも世界史が好きだ。
 
 だけど、その割には本は読まないし、テレビで考古学のドキュメンタリーやっててもさほど興味は無いし、大学でやる考古学も冒険とかしなさそうだし、ついに夢から覚めた。高校生になって、いよいよ真理に気づいた。
 
「僕って映画が好きなだけなんじゃん!」
 
 僕は今でもハマったら頭の中がそればっかりになる凝り性な性格で、実は先の夢は両方とも『ジュラシック・パーク』『インディ・ジョーンズ』という映画の影響だったのだ。そしてこの二作品は同じ監督が作った作品で、その人の名前はスティーブン・スピルバーグという。
 
 前置きが長くなりました。
 
 
 

偏愛!全スピルバーグ作品ひとり総選挙開催!!! 

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(※写真はイメージです)
 
 
 僕は父親の影響で、今述べてきたように、スピルバーグ作品を観て育った。『E.T.』『インディ・ジョーンズ』『ジュラシック・パーク』なんてもはや初めて観た時の記憶がなく、どれもテープが擦り切れるくらい観てた。
 
 だから大学で映画サークルに入って、「好きな監督は?」と聞かれて「スピルバーグです!」なんて恥ずかしげもなく答えてた。だけど、今年スピルバーグ最新作『リンカーン』が公開されて気付いた。
 
「あれ、実は僕ってスピルバーグ作品あんま観たことないんじゃね!?
 
 そうなのだ。『ジョーズ』とか『宇宙戦争』とか『タンタンの冒険』とか、エンタメ要素が予告編からバンバン感じられる映画は進んで観ていたが、『プライベート・ライアン』とか『シンドラーのリスト』などの真面目な作品、『1941』とか『フック』のようにマイナーな作品を全然観ていなかったのだ。
 
 「これでスピルバーグ好きを名乗ってたなんて…恥ずかしい!!!」と言うことで、『リンカーン』公開を良い機会と捉え、3月から毎週未見のスピルバーグ作品を一、二本ずつくらい借りて、こないだついに『リンカーン』を観たのでなんと3ヶ月!長かった…。というかどんだけ観てなかったんだ、自分!
 
 さて、折角スピルバーグ作品を全部鑑賞したので、今回は自分の好きな順番に並べて一作品ずつコメントしていきたいと思います。タイトルに「偏愛!」と付けているように、あくまで自分の好きな順を決めるランキングなので、あしからず。
 

 


 特筆事項

・日本で劇場公開されたものが対象。よって『激突!』は含み、『刑事コロンボ』『世にも不思議なアメイジング・ストーリー』は含まない。
・オムニバス作品は対象外。よって『トワイライト・ゾーン/超次元の体験』は含まない。
選挙権を持つのは僕だけ
 

 ランキング

一位 『インディ・ジョーンズ』シリーズ初期三部作

 
  いきなり禁じ手を使います。スピルバーグとルーカスという稀代の二大エンターテイナーが、「観客を楽しめること」のみに力を入れたこのシリーズは最高!よくわからない人は、亜城木夢叶みたいなコンビが実在したと考えてもらえれば大丈夫です。シリーズからどれか一本なんてとてもじゃないけど選べない。
 
 そういや、この間午前十時の映画祭で『レイダース/失われたアーク』を初めてスクリーンで観たけど、その感動は言葉にできない。ジョン・ウィリアムズのテーマ曲が流れるだけで泣きそうになってしまった。あと、ベロックの口の中に虫が入る所などに気付けるのはスクリーンならでは。他二作もやってくんないかなー。
 
 え、何か忘れてるって?気のせいでしょ!
 
二位  
 
  これについては前に書いた記事を読んでください。たまたま『ジュラシック・パーク』熱があるから今回順位か高いのは否めない。
 
三位 『E.T.
 

 スピルバーグ作品の中で一番優しく、センス・オブ・ワンダーに溢れている。ひ弱な少年が異世界の者と出会い成長するという関係はまるでのび太とドラえもんみたいじゃないか。スピルバーグの感動映画としても最もうまくいっていると思う。

 アメリカに住んでいた時、ユニバーサル・スタジオのアトラクションでE.T.が名前を呼んでくれるのも楽しかった。「ビデオを持ってるだろ!」と言う父親を何とか説得して、弟と20周年特別版に連れて行ってもらったのは良い思いで。あと、大きくなってスピルバーグの家庭環境とかを知ってからこの映画を観るたら涙三割り増し!

 
四位 『宇宙戦争
 
  中学生の時、友達と観に行って衝撃を受けた。それまでに観てきた映画はハリウッド製の娯楽作ばかりだったので、無力な人間達に降りかかる理不尽な状況が末恐ろしかった。観終わったあとはけろっと「なんでロビー生きてんだよ!」なんて茶化したりもしたけどね。
 
 当時買ってた「ロードショー」だったか、「DVD&ビデオでーた」だったかの雑誌のインタビューで、スピルバーグは「世界で唯一難民が出ていない国はアメリカ。アメリカ人が難民となった姿を描きたかった」と答えていたのを覚えている。最近知ったんだけど、実際にはナチスによるホロコーストのイメージを重ねているらしい。根拠は彼らの前を燃えながら走る列車で、列車というのがホロコーストの記号なんだとか。そういえば『シンドラーのリスト』でも列車は出てましたね。
 
 
※ ツイッターにも書いたけど、久しぶりに『宇宙戦争』を観て気付いたことあったので追記。『宇宙戦争』は2005年時点において、スピルバーグのキャリア総集編という位置付けにある作品だと思う。
 
 まず、視点がひたすら理不尽な恐怖から逃げる男の脚本は『激突!』。トライポッド強襲シーンの音楽は『ジョーズ』の有名なテーマ曲と酷似しており、地下室で敵の偵察機(?)から隠れるのは『ジュラシック・パーク』でラプトルがキッチンで子供達を探すシーンと、さらにまた同じ地下室のシーンで宇宙人が階段から降りてくる影と『ロスト・ワールド』でT-REXの影がテントに映るシーンでカメラワークがほぼ同じ。先に述べたホロコーストのイメージは当然『シンドラーのリスト』、長回しは『プライベート・ライアン』冒頭のオマハビーチでもやってみせたし、夜に群衆逃げ惑うのはさながら『A.I』でロボットがハンターから逃げるシーンのようだ。
 
 このように『宇宙戦争』はスピルバーグ自身の映画のサンプリングでできているのだが、それを『未知との遭遇』や『E.T.』と同じく、彼のアイコンと言ってもいい「宇宙人」という題材で描いているのが興味深い。
 
 
  それまであまり意識していなかったスピルバーグの残酷性をこの映画と『シンドラーのリスト』で思い知った。この映画を家で観ている時、親に「そんな映画をリビングで観ないでよ!」と怒られ、「いや、これスピルバーグの映画だから…」と教えたら、「嘘をつくな!」と、中々信じてもらえなかったが、それほどスピルバーグに対して大衆が思っているイメージと実際の作品に乖離があるんだろう。『戦火の馬』『リンカーン』の宣伝でもやたら「夢」や「希望」とか「感動」って言葉が押されるし。
 
 あと、スピルバーグの鬼畜ギャグを把握したのもこの作品からで、いや、この題材で、このシーンで、ウケ狙うか普通!?とドン引きする場面多数。ずいぶん昔電車男』でネタにされていた「アパーム!」の元ネタも分かった。
 
六位 『激突!』
 
  「追い抜かしたトラックに追われる」だけの話をここまで面白くできるのに脱帽。チェイスシーンだけでなく、途中立ち寄るバーで主人公が「誰が俺を追っているんだ!?」と客を疑るシーンは、その後のスピルバーグ作品に通じる見事なサスペンス描写だと思う。
 
 また、この作品は『トランスフォーマー』を鑑賞しただいぶ後に観たんだけど、『トランスフォーマー』と酷似したショットが多数あるのに気付いた。『トランスフォーマー』はマイケル・ベイスピルバーグが組んだ作品だが、ベイなりのオマージュだろう。唯我独尊的な態度が目立つベイだけに少し見直した。
 
七位 『ジョーズ』
 
 米批評サイトRotten Tomatoesでもスコア100%を記録した数少ない作品であり、定番中の定番。でも初めて観たのが高校の時と案外遅く、実はそんなに思い入れは深くないので順位は下げておく。ただ、若きスピルバーグがスタジオに圧迫されまくりトラブル続きの現場で、才気あふれる演出力を発揮し、更に後の作品にも通底する彼の作家性を盛り込んだのは敬服に値する。
 
八位  『未知との遭遇』
 
  これも大学に入ってから観たので、実はそんなに思い入れは深くない。だけど町山智浩の『映画の見方が分かる本』を読んでこの映画の真意を知った時に本当に感動した。しかしこの作品、『スター・ウォーズ』と同年公開だったんだね。1977年のSFファンが羨ましいなぁ。
 
九位  『シンドラーのリスト
 
  観終わる頃には疲弊しきっていた。白黒ってのがまた逆にドキュメントっぽくて辛い…。3時間を超える上映時間が全く気にならないのもスピルバーグの巧みなストーリーテリング力を証明している。
 
 ただ、この作品と『プライベート・ライアン』は最後の過剰な感動演出が気に食わない。あれだけ悲惨な光景みせられたのに、今更クサいエンディングで結んでもちょっと浮いてしまっているというか…。特に『シンドラーのリスト』のラストはなんだ!本当のホロコーストの生き残りを連れてきたりしやがって、やり口がセコいじゃないか!でもやっぱりそれを差し引いても有り余るくらいホロコースト描写は凄まじい。
 
十位  『タンタンの冒険:ユニコーン号の秘密』
 
 映画秘宝で2011年ワーストにランクインされてたり、意外と評価低かったりするけど、なんでだよこんなに面白いのに!というか、これが皆が本当に観たかった『インディ4』じゃないのか、え?
 
 信じられないのは「キャラの説明がないからタンタンに感情移入できない」という意見が多いこと。バカか!『レイダース』を観て、「ああ、この人は父親にコンプレックスを持った哀しい人間なんだなぁ…」って思うわけないでしょ!『インディ・ジョーンズ』でスピルバーグとルーカスが連続活劇という神話を復活させたように、『タンタンの冒険』も新たにピーター・ジャクソンというパートナーを得たスピルバーグ連続活劇を2010年代に復活させた娯楽傑作なのだから、「昔々ある所に、タンタンという少年がいました」程度のキャラ紹介でいいの!
 
十一位 『ミュンヘン
 
 『シンドラーのリスト』『プライベート・ライアン』と同じグループに入る傑作。ミュンヘン事件の再現は相変わらず血みどろ且つ必要以上にリアルで手に汗を握ってしまう。
 
 が、何故そのイメージを主人公が悪夢として見てうなされるのか?他にも少女が電話を取るシーンでの視点の問題など、映画文法的におかしいシーンがあり、そもそも『プライベート・ライアン』でも人称の不一致という間違いを犯している。
 
 先に述べた『シンドラーのリスト』の過剰な感動演出も併せて考えると、スピルバーグがこうした歴史的悲劇を映画化する時はあまりドラマや映画の文法を重視しておらず、史実を100%観客に擬似体験させることに全力を注いでいるのだと思う。だからドキュメンタリーを観るよりもこれらの映画を観る方が圧倒されてしまう。
 
十二位 『続・激突!/カージャック』
 
 スピルバーグの劇場デビュー作で、実話を基にしたドラマ。『続・激突!』と言うけれど、もちろんこの「続」は『続・夕陽のガンマン』の「続」程度の意味で、原題は"Sugarland Express"。「スピルバーグのアメリカン・ニューシネマ」と僕は呼んでいる。
 
 妻が服役中の夫に脱獄を持ちかけ、福祉局によって里子に出されてしまった子どもを取り返しに行こうと画策するとする話。交通違反で二人を取り締まろうとした巡査も人質に、三人と彼らを追うパトカー隊の珍道中。映画が進むに連れ、人質の巡査と追跡隊を仕切る警部が夫婦に感情移入し始めるのはまるで『テルマ&ルイーズ』みたい。というか、リドリー・スコットは幾分か本作を参考にしたんじゃないかな?
 
 悲しいラストを迎えるけど、かといって映画全編はそんなに重苦しくなく、制限時速内で走る車を追いかけるパトカーの列は絵面だけで笑えるし、夫婦のニュースを聞きつけた民衆が応援に駆けつけるのもベタだけど感動的。目的地であるシュガーランドに到着するまで全くダレることがない。
 
 余談だけど「映画秘宝」2012年4月号で高橋ヨシキが書いた記事によると、スピルバーグノーマン・ロックウェルの原画をコレクションしているらしい。ロックウェルの作品は、裕福な家族が幸せそうに食卓を囲んでいたりするものが多く、つまり古き良きアメリカをイメージした作風で大衆からの人気を得た。

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 ロックウェルの大衆性はスピルバーグの作家性と通じる所があり、そのため彼の作品も所謂大衆的で、『E.T.』や『フック』など、ハッピーエンドを迎えるものが多い。その中でも異彩を放っているのが劇場デビュー作の本作であり、あまりにも悲しい結末にスピルバーグは「やっぱり最後のシーン撮り直した方がいいんじゃないか?」と周りに意見を求め回っていたらしい。(最終的には説得されたが)
 
 
 
十三位 『戦火の馬』
 
 児童文学を舞台化した物を更に映画化したもの。レイティングのため血を見せない工夫をしているけど、いや、血を見せなければ良いって問題でもないよ!原作が第一次世界大戦を舞台にしるってんで「よっしゃ、子どもにトラウマ残すぜ!」と言わんばかりに軽い地獄絵図絵を描いている。
 
 最後は相変わらず涙々の感動で終わらすが、よくよく考えるとこれ全然泣ける話じゃないよね?戦火によって飼い主の少年と離ればなれになってしまった馬ジョーイが、道中色々な人と出会って少年の元に戻ってくる数奇な運命を描いたのが本作だけど、だってジョーイと[出会った人々は結果一人残らず死んでいる]んだぜ?特に[少女が死んでいる]ことが判明した時は鳥肌が立った。やはりこの監督は鬼畜だ…。
 
 
 
 『ブレード・ランナー』や『トータル・リコール』の原作も手がけたフィリップ.K.デイックの短編を映画化したものなんで、ハードSFかと思いきやドリフみたいなギャグてんこ盛りでビックリしました。目玉コロコロ〜なんて俗悪ギャグも。ストーリー的におかしな所はたくさんあるけど、『宇宙戦争』と同じく映画的演出を優先させているので別に良いです。
 
 本作のヴィジュアルにもコリン・ファレル版『トータル・リコール』が影響を受けたと思しきシーンが見受けられたので、コリン・ファレル版は単なるシュワルツェネッガー版の単なるリメイクなだけでなく、デイック原作映画をマッシュアップした映画なんだと気づいた。
 
十五位 『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク
 
 
 『ロスト・ワールド』『クリスタルスカルの王国』は世間的評価が著しく低いけど、両方とも大好きな作品。 
 
 ニュースウィーク誌から「『最初はうーとか、あーとか皆驚くが、あとは叫び回るだけだ』と劇中数学者のマルコム博士は警告するが、本作の構成にもそれが当てはまる」と批判している。でも『ロスト・ワールド』は粗筋からして『キング・コング』がやりたいんだって分かる。(『キング・コング』自体コナン・ドイルの『失われた世界("The Lost World")』の影響を受けている。)
 
 だから徹底的に怪獣映画しているのが最高じゃないか!サンフランシスコでT-REXが大暴れするシーンでは日本人が逃げ回っているカットがあるのも笑える。
 
 『クリスタルスカルの王国』については、さっきから散々バカにするようなことを書いたけど、いや、許してあげようよ!公開当時から批判されまくってたし、僕もオチには正直「ワッツ、スペースメン!?オーウ…」と思わなかったとは言わない。それでも初めて劇場であのテーマ曲が聞いただけで胸踊ったし、最後にシャイア・ラブーフが帽子を、と思いきや…!の所は感涙ものでした。でも『インディ5』はもう良いかなぁ…。
 
十七位 『A.I.』
 
 タイトルもなんか『E.T.』っぽいし、雰囲気もなんとなく『E.T.』と似てるしハートウォーミングな終わり方を迎える、と思ったら驚愕の展開へ。キューブリックの企画をスピルバーグが受け継いだ本作は、『映画の見方が分かる本』によれば『2001年宇宙の旅』と対になっているという。まあ、結局は温かい(けど切ない)終わりを迎えるのはやっぱりスピルバーグらしい。 
 
十八位 『リンカーン』
 
  会議シーンばっかりで退屈という意見を先に聞いていたけど、全然そんなことないじゃないか。要はねじれ国会みたいな話でしょう。確かに『戦火の馬』を『リンカーン』で描く南北戦争の予行演習のように考えてしまっていたら物足りなさはあるとは思う。しかし、ほぼ会話劇で150分も維持できるのはその並外れたストーリーテリング力あってこそ。
 
 アカデミー賞を受賞したダニエル・デイ・ルイスの演技は思っていたよりは大人しい。やっぱり『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』が凄まじいので。
 
 
 レオナルド・ディカプリオトム・ハンクス「鬼さんこちら、手のなる方へ♪」とイチャイチャする映画です(あながち間違ってないと思う)。実在の天才詐欺師の自伝小説が原作だけど、スピルバーグは詐欺師の両親が離婚している事に着目し、ディカプリオの根底にある孤独に焦点を当てている。製作時点でスピルバーグの両親が離婚して40年近く経っていたと思うんだけど、やっぱりまだ心のどっかにはつっかかりがあったんですね。未だに完全に癒えてはいないと思うけど。
 
二十位 『ターミナル』
 
 こういう悪人の出てこない映画もたまには良いですね。意地悪する人はいるけど、その人も仕事の立場上でやっているだけなので。驚くべきは、空港のセット。あれ全部丸ごと作ったんだって。脚本は『ガタカ』『タイム』のアンドリュー・ニコル
 
二十一位『アミスタッド』
 
 最新作『リンカーン』と似たような法廷劇。『ターミナル』みたいに言葉の通じない者同士の意思疎通映画としても面白い。動画で載せたように、冒頭には実に暴力的な反乱シーンもある。
 
 スピルバーグのフィルモグラフィの中で『カラーパープル』『アミスタッド』『リンカーン』と、黒人をテーマにした映画が3つもあるのは興味深い。Twitterで「ユダヤ人だから非差別者の心情にクローズアップする事が多いのでは?」と指摘された。それはもちろんそうなんだろうし、だからユダヤ人として『シンドラーのリスト』撮ったんだろうけど、でも例えばアメリカにはムスリムネイティブ・アメリカンへの差別問題もあるのにそれらは全く描いた事はない。(それどころか『魔宮の伝説』でインド人をバカにしている描写すらある!)そんな中でスピルバーグが黒人問題ばかり取り上げているのはやはり注目に値する。
 
二十二位『オールウェイズ』
 
 1943年の映画『ジョーという名の男』をリメイクしたらしいが、話はまんま『ゴースト/NYの幻』。スピルバーグの数少ないラブストーリーだけど、A-26改造機を用いた空中消火シーンの迫力は流石飛行機オタクと言った所。しかし、興行的には大コケした。なお、この『オールウェイズ』までが僕の好きな作品です。
 
二十三位『1941』
 
 聞いていたとおりのつまらなさ。良くこの作品を引き合いに出して「スピルバーグはコメディが苦手」なんて言う人いるけど、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』とか『ターミナル』とか面白いコメディ作品を撮ってるし、コメディじゃない作品でも笑える不謹慎ギャグを連発してるような人なので、ちっともそんなことは無いこと思う。クライマックスの戦闘機ドッグファイトは好き。
 
二十四位『フック』
 
 ちょっと、ロビン・ウィリアムズが、キツかったなぁ…。でも冒頭のウェンディの家とか、まんまディズニーもアニメ版『ピーター・パン』を再現していてスピルバーグのディズニー愛を感じて楽しかった。
 
二十五位『太陽の帝国
 
二十六位 『カラーパープル
 
 『太陽の帝国』と『カラーパープル』は観てから三ヶ月しか経ってないのに、もう内容を覚えていない。★の数ではこの二作は『フック』や『1941』より上にしたけど、内容も覚えていない映画を無理して褒めることはないなと思って最下位にしました。
 

  …というわけで、28作品ランキングし終わりました。作品内容だけでなくスピルバーグの才能を裏付ける話として、現場掌握力の高さというものがあります。
 
 前にも記事に書いたけど、『ジュラシック・パーク』はBDのメイキングによると、あの大作を予定より12日も早く撮り終えてしまった。3時間近い大作『プライベート・ライアン』の戦闘シーンはほとんど絵コンテに頼らないアドリブ演出で、しかも二ヶ月で撮り終えた。『ミュンヘン』を製作準備中、諸事情で企画が一旦中断となり、せっかくだから空いた期間を利用しようということで『宇宙戦争』ができた
 
 極小規模の自主映画でさえヒーヒー言いながら撮っているのに、今あげたエピソードはどれも驚異的だ。どの作品も短期間で撮ってしまうのは頭の中にもう撮りたい画のイメージが出来ているからでしょうね。
 
 このためにスピルバーグは意外と多作であり、単純計算するとデビューしてからほぼ一年半に一本ペースで映画を撮っていることになる!そのほとんどが面白いというのも凄いなぁ。今回の企画を通して改めて「スピルバーグ大好き!」と思うのでした。
 

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