5月に観た映画の感想

 今月分です。前回書いた「偏愛!全スピルバーグ作品ひとり総選挙!」に時間がかかり過ぎてしまい、遅くなってしまいました。スピルバーグ作品数多過ぎなんだよ!

 

 5月は『HK/変態仮面』『サンダーアーム/龍兄虎弟』『プロジェクト・イーグル』『別離』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『ライジング・ドラゴン』『ペントハウス』『シュガー・ラッシュ』『タイガー/伝説のスパイ』『ライブテープ』『命ある限り』『26世紀青年』『闇の帝王DON〜ベルリン強奪作戦〜』『サンキュー・スモーキング』『ポゼッション』『アニー・ホール』『世界にひとつのプレイブック』『クラークス』『藁の盾』『きっと、うまくいく』『アメリカン・パイ』『奇跡のリンゴ』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『ラストスタンド』『トーキョードリフター』『アイアンマン3』『インソムニア』の27作品について書きます。ってまた多いわ!ので、今回はなるだけササッと書いていきたいですね。

 

 『シンドラーのリスト』『アミスタッド』『A.I.』『プライベート・ライアン』『マイノリティ・リポート』は先に挙げたリンク先の記事に、『インポッシブル』についてはこちらを参照ください。

 


 

 先月観た『アフロ田中』の時も思ったけど、日本のコメディ映画のツッコミには本当にウンザリさせられる。もちろん、ギャグ漫画やTVのバラエティには必要な要素だと思うし、それらの笑いは大好きだ。しかし、映画というメディアの最大のメリットは映像の力だけで物事を説明してしまう事(例えば、評判は悪い映画だけど『SUPER8』の冒頭。1カットで事故が起きた事を説明する秀逸な演出だと思う)なので、何でもかんでも口にして状況説明をする日本的なツッコミ漫才は映画には合わないと思う。ちなみに本広克行の映画なんかも「いや、〜かよ!」というツッコミが多くてイライラする。

 

 でも実は『HK/変態仮面』の映画の出来自体はそこまで酷い物ではなく、もっと予算を与えたら更に面白い物が出来たと思う。DVD用のコンテンツとしては充分か。

 
映画『HK/変態仮面』予告編 - YouTube

 ジャッキー・チェンの『アジアの鷹』シリーズをひとくくりに。ちなみに『アジアの鷹』は『インディ・ジョーンズ』を見たジャッキーが「オレならもっと凄いことできるぜ!」と対抗意識バリバリで開始した冒険アクションシリーズ。

 

 やっぱり一番面白いし燃えたのは『サンダーアーム』。遺跡で原住民から追われる冒頭からしてまんま『レイダース』だけど、安全面完備した上で玉から逃げていたハリソン・フォードと違い、ジャッキーは自身でスタントを行いマジで死にかけているからアクションスターとしての気合いが違うッ!(エンドロールでその大怪我の様子が映されている)全盛期のジャッキーアクションは言うまでもなく素晴らしく、龍兄虎弟、つまりジャッキーとアラン・タムの友情物語としてもベタだけど燃える。

 

 そしてラストにはそもそも必然性すら分からない気球への決死の大ジャンプがある『サンダーアーム』と比べると、『プロジェクト・イーグル』は作品を象徴するようなスタントがあまり目立たなかったというのが正直な感想。バカ女3人トリオなど作品のテイストも少し変わったが、エンドロールでやはりジャッキーは懲りずに怪我をしており、ジャッキーは常に命がけで映画製作に臨んでいるのだと正座で再認識した。

 

 ジャッキー本格アクション引退作の『ライジング・ドラゴン』は、今季ベストレベルとは思わないものの、まだまだキレのあるジャッキーのアクションに感動する。今回はどちらかというと『インディ・ジョーンズ』というよりは『ミッション・インポッシブル』を意識しているようで、スパイチックな便利がジェットも沢山登場する。注目したいのは後半の工場での戦い。小道具やセットがジャッキーに利用され破壊されるためのみに存在している。映画の中でアクションをどう見せるべきか、というお手本のようになっている。

 

 しかしこの『ライジング・ドラゴン』、日本での評価が低い。公開前からこの事象が気になっていたが、映画を観てちょっと納得。清朝混迷期にイギリスが奪った円明園十二生肖獣首銅像をジャッキーが奪い返す内容になっている本作のテーマの一部は、歴史的文化財の所有問題について。そしてラストで今まさに揉めている日韓間の古文書問題についてチラッと触れており、これに反応した人が多かったのだろう。

 

 ところでこの映画を観たのと同じ時期に僕は「町山智浩のトークショーより:評論とは何か」という記事を読んでえらく感動していた。(うちのブログの過去記事を読めば分かるとおり、僕は町山智浩という評論家をとても尊敬している。)今あげた記事の中で町山さんは「イデオロギーで映画を観るな!」と言っている。詳細はリンク先を読んで欲しいが、今回の『ライジング・ドラゴン』にもそれが当てはまる。余計なノイズのせいでこの作品が不当な評価を得ているのはとても悲しいことだと思う。 

 
『ライジング・ドラゴン』予告編 - YouTube

 イランというと、とにかく核保有問題だったり、石油の利権問題だったりと、政治的な話題しか知らない。ハリウッド映画でも、例えばイラン革命の動乱を描いた『アルゴ』なんかもそうだが、「保守的イスラム国家」というざっくりしたイメージでしかあまり語られてきていなかった気がする。だからイラン本国から市民個人や私生活を描いた本作はとても新鮮で面白かった。(電話でイスラムアドバイザー?に「これってイスラム的にありですか?」って確認するところなどは特に面白かった。そうやって確認してるんだ!)

 

 法廷ミステリとしても面白く、伏線が素晴らしく機能している。それもこの手の映画にありがちな回想シーンなどは一切なく、時系列に沿い、同時に登場人物たちの心情も丁寧に汲み取りながら展開する物語は目が離せない。哀しいエンディングも含めて大傑作だ。

 
2012年4月7日より公開 『別離』予告編 - YouTube

 "And my straw reaches acroooooooss the room, and starts to drink your milkshake... I... drink... your... milkshake!"

 
I Drink Your Milkshake! - There Will Be Blood (7/8 ...

 職人監督ブレット・ラトナーということで期待値は無に等しかったので、この面白さは嬉しい驚き。ところで日本じゃあんま見ないけど、アメリカの富裕層にペントハウスは人気なんだね。ブルース・ウェインも住んでたし。

 
映画『ペントハウス』予告編 - YouTube

 最近ピクサー作品の質低下が懸念される一方で、ジョン・ラセターがCEOに就任した親会社のウォルトディズニーアニメーションスタジオ作品の質が急激に伸びてきている。『ボルト』『プリンセスと魔法のキス』は未見だが、『塔の上のラプンツェル』『くまのプーさん』そしてこの『シュガー・ラッシュ』は確かにかなり面白かった。今年のアカデミー賞最優秀長編アニメ賞はピクサーの『メリダとおそろしの森』が受賞したが、断然『シュガー・ラッシュ』の方が評価されるべきだ。

 

 僕は『ポケモン』シリーズくらいしか熱狂的になるゲームはないし、ゲーム自体あまりやるほうではないんだけど、毎回ソフトが出る度に買ってしまうのは『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズだったり『キングダムハーツ』シリーズだったり、クロスオーバー作品が大好きだ。(映画でも『アベンジャーズ』が大好きだし。)なので『シュガー・ラッシュ』もその点ではドツボにハマった作品。

 

 メタルギア』の「!」とか、上上下下左右左右BAなどマニア向けの小ネタもある一方で、懐かしい8ビットの動きを3DCGで再現したり、架空のゲーム「シュガー・ラッシュ」はもろに子ども達に大人気の『マリオカート』のパロディだったり、あらゆる客層に配慮した脚本にも好感が持てる。ストーリー自体もディズニー作品らしい王道で安心して観ていられる作り。あまり好きではないAKB48が全世界共通の挿入歌に不安を覚えたが、この出来が予想を遥かに越えて良くて時たまサビを思わず口ずさんでしまう。

 

 映画本編の内容とは関係ないが、字幕版上映が無かったのには大きな不満を覚える。吹き替え版声優が悪かったわけではなく、むしろ素晴らしい働きをしていたと思うが、やはりオリジナルのジョン・C・ライリーやサラ・シルバーマンの可愛いダミ声が聞きたいし、日本に住んでいる欧米の子ども達も楽しめないだろう。一番酷かったのは劇中に登場する文字が日本語にデジタル処理されており、これがやっつけ仕事としか言いようがない仕上がりで、また全ての英語が差し替えられている訳でもなく非常に中途半端なものだった。

 

 こうしたディズニーの吹き替え偏重は今に始まった事ではなく、前作『くまのプーさん』も吹き替え版のみの上映で、ティム・バートンの『フランケンウィニー』も字幕版を上映している劇場はほんの僅かであった。近年良作を連発しているディズニー作品だけに、字幕派としてはこの状況を何とか改善してもらいたい。

 

 あ、言い忘れてたけど、最後に同時上映の短編『紙ひこうき』は号泣必須の傑作であることを付け加えておく。

 
AKB48『シュガー・ラッシュ』挿入歌・エンディングソング+予告編 - YouTube

 ボリウッド4もひとまとめに。近年日本におけるインド映画人気の火付け役である日活が、同時に4作品配給した企画がこのボリウッド4だ。奇しくもどれも「三人のカーン」と呼ばれる現代のボリウッドを引っ張る男優達の主演作になっている。

 

 僕がインド映画にはまったのはもちろん去年の『ロボット』や『ボス/その男シヴァージ』といったぶっ飛び路線からだけど、今回のボリウッド4の多くはハリウッド映画の影響が垣間見れる。

 

 例えば、サーマル・カーン主演の『タイガー/伝説のスパイ』は明らかにダニエル・クレイグ版ボンドの影響を受けている。冒頭のイラクを舞台にしたアクションからもそれを読み取れるが、それを裏付ける証拠として主人公のスパイは私生活で『007』のロゴが入ったTシャツを着ているカシミール問題でインドと犬猿の仲にあるバングラデシュのスパイと主人公が恋に落ちるという『ロミオとジュリエット』のような話が平和を望むインド社会にウケて歴代二位の興行収入を記録したかもしれないが、ところどころ中途半端なボケをかましたり、伝統的なマサラムービーをやりたいのかシリアスなアクション映画をやりたいのかぶれているので僕はあまり好きではない。

 

 『命ある限り』はアイドル俳優シャー・ルク・カーン主演作で、ハート・ロッカー』に恋愛要素を増し増しに盛り合わせた内容。昨年逝去したラブロマンスの巨匠ヤシュ・チョープラの遺作であり、冒頭にチョープラの言葉を、エンディングに追悼の言葉を付している。「逆らえない運命」というインド思想的に重要なテーマを元に少々大袈裟ではあるものの壮大に描いた本作は映画としては楽しめた。しかし、バイト先の先輩方数人に「インド映画のぶっ飛び具合半端ないですから!」と期待させて連れて行ったのに、大変真面目なつくりで大恥をかかされてしまったので逆恨み的にワーストにいれる。

 

 『闇の帝王DON〜ベルリン大作戦〜』もシャー・ルク様主演作で、『DON 過去を消された男』の続編。前作は未見だけど、今作はハードな『オーシャンズ11』といったところか。カシミール問題の不安定な治安が描かれている『タイガー』や『命ある限り』とは違い、社会的テーマは一切なくやりたいことは明確に「俺が裏社会の王、DONだ!」に尽きる。それが全く嫌味にならないのはシャー・ルク・カーンのアイドル性故。

 

 ボリウッド4のトリを務める『きっと、うまくいく』は今年度のベスト10には入る傑作。知っての通りインドは現在経済的に急成長中だが、その勢いがビシビシと伝わってくる。インド工科大学という激しい競争社会を"All Izz Well(きっとうまーくいく)"を合言葉に生き抜いていく若者たちの姿が感動的。能天気なだけでなく競争を脱落した者の悲劇も描かれるが、それでも競争社会を単純批判するのではなく、個性で競争を戦っていく事を描いているのが素晴らしい。「ナンバーワンよりオンリーワン」なんていうのは無責任だ。


ボリウッド4予告編 - YouTube

 松江哲明作品も一括りに。

 

 8月号の「映画秘宝」で大槻ケンヂがみひろとの『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』をめぐる対談で、劇団ひとりは全編アドリブで演技していたと主張するみひろに対して、終始懐疑的だったオーケンは『ライブテープ』を引き合いに出していた。映画版『キス我慢選手権』は今週末見る予定なのでまだなんとも言えないが、オーケンが『ライブテープ』と比較してしまうのは分かる気がする。

 

 『ライブテープ』は松江哲明がミュージャンの前野健太とスタッフと共に入念なリハーサルを重ね、2009年の正月に前野のゲリラライブをDVテープ丸ごと一本80分一カットで撮った実験的映画だ。冒頭、AV女優のつぐみが参拝を終えて被写体が前野健太に華麗にバトンタッチしたり、各地にセッション相手が待機していたり、あっと驚かせる仕掛けが随所にある。加えて、偶然出会った子どもに前野がサングラスをあげるなど、まさに奇跡というべきシチュエーションが本作をさらに味付けし、クライマックスの井の頭公園のライブに昇華するのは感動的。

 

 一方で、今度は計画停電で真っ暗になった東京の街を同じ手法で漂流(drift)する『トーキョードリフター』にはそんなに感銘を受けなかった。というか厳密に言えば全く同じではなく、今回はカットも割ってしまっているため、前作の魅力でもあった画面に張り詰めてる緊張感が半減されてしまっている。前作のような工夫も少なく、震災後の映画としても評価できるとはいいがたく、前野がバイクに乗って『ヘビーローテーション』を歌うところなんかは「一体何がしたいねん」と思ってしまった。


『ライブテープ』予告編 - YouTube

 『バス男(原題:Napoleon Dinamite)』と一緒に酷い放題を付けられた名作として有名。こないだゼミで「アメリカのゴミ問題について研究したい」と言っていた先輩がいたので、この『26世紀青年』を教えたら「ええ、そのタイトルどうなの?」と冷笑されたので、散々言われてきただろうがこの邦題をつけたFOXジャパンの担当者は改めて死ぬべきだと思った。

 

 米軍の冷凍冬眠実験のモルモットとなった男女が、一年間の冬眠のはずが不幸が重なり忘れられ、遂に目が覚めたら500年後の世界で、人類の平均IQは著しく下がっていた!という荒唐無稽な粗筋だけ聞くと「バカな話だなぁ」と思うかもしれないけど、冒頭で入る説明が怖い。インテリ層が家族計画に慎重で中々子作りをしない一方、学も金もないレッドネックな人たちはポンポコポンポコ子どもを産み、更にその子どもがポンポコポンポコ子を作るという、負のスパイラルにより500年のうちに馬鹿ばっかりの社会になってしまうのだ。なんてリアリティのある恐ろしい話なんだ!悪いけど僕はビッグ・ダディを思い出してしまったよ。

 

 ケツを延々と映した映画がその年のアカデミー賞を総なめにするなど、未来社会をとことんバカにした描写の数々は秀逸。バカにされているのは未来人なので誰も傷つかないしね。あ、でも、現状を放っておくとこうなるぞと警鐘を鳴らす映画なので、あんまり笑ってばかりもいられないね。


Idiocracy - YouTube

 タバコ業界のロビイスト人々に真っ先に叩かれる職業だろう。この世に必要であるかも分からない。でも、タバコが害悪と言われて久しい中でタバコ業界はずっと産業として機能しているわけだし、こういう社会である以上誰かがやらなくてはならない職業だ。『マイレージ、マイライフ』のクビ宣告人(これも本作を手がけたジェイソン・ライトマンの作品)や、『ハート・ロッカー』の地雷処理班と同じように「でもやるんだよ!」というメッセージだからタバコ会社のロビイストだとしても頑張る主人公に共感できる。


Thank you for Smoking - Trailer - YouTube

 「この作品は実話を元にしている」ってテロップが冒頭に出てきて、それを免罪符だと言わんばかりに大袈裟に恐怖演出を煽る。結果「実話を元にしている」という前提と、画面内のリアリティの無さが乖離を起こしてしまい、肝心の怖さが半減してしまっている。「実話」を持ち出されると、映画の内容よりも胡散臭さが目立ってしまう。

 

 反面、実話を元にしているスピルバーグ作品はドラマ部分は過剰で感動できないけど、中心の出来事は史実に忠実に映像化しようと試みるため真実味が増す。だから彼の映画は傑作なのだ!(まだ褒めるか)


映画「ポゼッション」予告編 - YouTube

 時系列シャッフルとか、男女の心境のズレとかが『(500)日のサマー』に影響を与えたんだろうなぁって思う程度。本当に眠い中観たので、名画座とかで再チャレンジしたい…。


Woody Allen - Annie Hall Opening - YouTube

 高校の時志望校に落ちた僕を英国人の先生が"Every cloud has a silver linings"と言って励ましてくれたが、当時受験パンク真っ只中だったので「このブリ公は何が言いたいんだ?」と思ってしまった。調べてみると英国の諺で直訳すると「どんな雲にも銀の裏地がついている」、つまり「憂いの反面には喜びあり」という意味らしい。

 

 『世界に一つだけのプレイブック』の原題"Silver Lining Playbooks"はこの諺を一部使用したもの。意味不明なタイトルとは裏腹に粗筋自体は古典的だが、憂いている人しか出てこないのがこの作品を特異なものにする。主人公は双極性障害だし、ヒロインはセックス中毒で、主人公のお父さんもちょっと自閉症っぽいのかな?

 

 この映画の監督デヴィッド・O・ラッセル双極性障害で、業界内で干されたりして大変だったそうだ。(あの温和なジョージ・クルーニーをキレさせた!)僕がこの映画にゾゾゾッとリアリティを感じてしまったのは、主人公とヒロインが出会う食事会のシーン。二人がお互いに精神疾患者だと分かって意気投合し、自分が服用している薬の話題で盛り上がるのだが、周りのドン引いている空気感が本物。いや、僕に何があったかとかは何も言わないけどさ、これは分かってる人じゃないと撮れない演出だなぁと思った。ちなみに監督の息子も強迫性障害を抱えており、この映画に出演もしている。


Silver Linings Playbook Movie CLIP #1 (2012 ...

 バイト先のコンビニで、友達とダラダラ喋る。粗筋はそれだけし、自主映画だからスターもいないし超低予算。なのに『クラークス』が面白いのはタランティーノ的テンポの軽快な会話にあると思う。実際、ケヴィン・スミスタランティーノの影響を認めており、『レザボア・ドッグス』の冒頭のマドンナトークを延々と90分繰り返しているような印象。

 

 ケヴィン・スミスはこの作品でカルト的人気を得て、『クラークス』含む「ヴュー・アスキューニバース」シリーズをライフワークとして活動していくが、僕が初めてケヴィン・スミス作品はシリーズ外の『恋するポルノ・グラフィティ』。『恋するポルノ・グラフィティ』は閉店中のコーヒーショップで自主制作ポルノを撮るという話だが、これケヴィン・スミスがバイト先のコンビニが閉店中に『クラークス』を撮ったエピソードと一緒。だから『恋するポルノ・グラフィティ』は半自伝的な映画だったんじゃないかな。


Clerks Movie Trailer - YouTube

  手放しで絶賛はできないけど、僕は面白いと思うんだけどなぁ。三池の映画って公開されるたびに騒ぎを起こすね。


『藁の楯 わらのたて』本予告 - YouTube

 タイトルの『アメリカン・パイ』ってどういう意味だろうと思ったら、日本で言うなら[コンニャクオナニー]の事だった。ただでさえ面白いシーンだが、NGシーン集を見たら色んなやり方を試していて改めて映画って大変だなぁと思った。

 

 「プロムまでに童貞捨てるぜ!」というゲス極まりない動機で始まった映画だけど、なんとスピンオフ合わせて8作も作られている長寿シリーズ。下品なギャグも多いけど、ロマンス映画のように素敵な場面もあってバランスがいい。


American Pie - Trailer - YouTube

 リンゴはもともと中東の果実で、長い長い年月をかけて品種改良を重ね、明治期に日本にやってきた。元々乾燥地域の果物であったので、温暖湿潤な気候の日本で無農薬栽培を行うのはほぼ不可能なことであった。…という、農業雑学ムービーという点では、interestingという意味で面白い。四季折々の日本の情景を映した撮影も、よくよく考えれば困難なことで感心してしまう。山崎努の演技も流石貫禄がある。

 

 このように、土壌と種は完璧なのに、栽培方法を間違えてしまったために陳腐なドラマになってしまった残念な映画。邦画は「とりあえず泣いとけ」みたいなのからいい加減脱却しませんか…。

 

 ところでこの映画、無農薬に挑む阿部サダヲ(革新)と農薬に依存する村人達(保守)という対立構造になっていると思う。この村人共は嫌らしい連中でひたすら阿部サダヲに「うちの畑まで虫が湧くからやめれ!」と散々意地悪してきたくせに、7年かけてリンゴが出来たら掌を180度変えた態度を取る。それを阿部サダヲの奥さんである菅野美穂は「人間にも優しい心があるようです」とまとめるが、そういうことじゃないと思うぞ!


映画『奇跡のリンゴ』予告編 - YouTube

 この映画の脚本家は致命的なミスを犯している。この映画に出てくる犯罪グループは少々ド派手とはいえ、入念に準備をしており、完璧な計画だったと言って良かろう。なのに彼らは国外脱出のすんでの所で失敗をしてしまう。その原因は素人である我々観客から見ても至極単純な事であった。そう、彼らはリサーチを忘れていたのだ。彼らの脱出ルートに位置する街の保安官が、アーノルド・シュワルツェネッガーであったことを!!

 

 シュワルツェネッガーはキャリアからも私生活からも、ピークをとっくに通り過ぎてしまった人という印象が強い。シュワの名ではもう売れないという事が、アメリカでの興行収入で証明されてしまった。しかし、アメリカの観客達はハッキリ言って一生後悔する事になるだろう。『レスラー』のミッキー・ロークや『アイアンマン』のロバート・ダウニーJRばりにスクリーンに復活したシュワを見逃してしまった事を!ノースタントで屋上から飛び降り、移民の恥さらしに勢い良くバックドロップをかます65歳に、敬意を払わすに入られない。


映画『ラストスタンド』×水道橋博士 特別映像【完全復活篇】 - YouTube

 マーベル・シネマティック・ユニバースも二週目。

 

 住所をバラして敵に襲われてしまう所などは「ポカーン」だったが、それ以外は最高だった。特にクライマックスの戦いで次から次にアーマーを装着していくのがカッコよすぎて席でずっと悶えていた。こういう外連味がこのシリーズの素晴らしい所。

 

 予告編と冒頭がシリアスだったので心配していたけど、ギャグも絶好調。やはりトニー社長はこうでないと。一番笑ったのはやっぱり[悪役マンダリンが実はただのダメ親父だった]というギャグだけど、あれは逆に原作ファンから叩かれないんだろうかと少し不安になった。

 

 残念なのは、『アベンジャーズ2』に向けてのネタが少なかったこと。「いや、お前『アイアンマン2』と『マイティ・ソー』を「アベンジャーズ商法」とか批判しておきながら何を言っているんだ!?」と我ながら思うけども、『アベンジャーズ』の出来が素晴らしく去年のベスト1に選ぶほど大好きな作品なので、やっぱり『アベンジャーズ2』にも期待しちゃうよね。


Marvel's Iron Man 3 - Clip 3 - YouTube

  流石アル・パチーノの不眠症(インソムニア)演技、ずっと眠そうロビン・ウィリアムズは嫌いな俳優だけど、この映画ではちゃんと狂人として映っていると思う。この映画が残念なのは「観客の心を宙ぶらりにする」サスペンスとしては今一パンチが弱い。しかし冒頭の飛行機のカットが『ダークナイト ライジング』冒頭の飛行機のカットと似ていたり、アル・パチーノロビン・ウィリアムズが互いに似た要素抱えているというのが『ダークナイト』におけるバットマンとジョーカーみたいだし、初期のノーラン作品として『ダークナイト』シリーズの原点がかいま見れるのは楽しい。

 
INSOMNIA - Trailer - (2002) HQ - YouTube

 


 

  以上、今月分は終わりです。新歓終わりとGWが重なって今月は量があってキツかった…。ササッと書くとか言ってた割りに、いざ書いてみるとやっぱり余計な事を書き過ぎちゃう。