えー、今ダルエスサラームからエチオピアはアジスアベバに到着しました。これから仁川への乗り換えがあり、そこから更に成田行きの便に乗ります。地球の裏側まで来るにも一苦労です。
時差ボケは西回りよりも東回りの方が辛い、と言いますから、日本の時間に合わせてこのアジスアベバ便ではぐっすり寝ようと思ってましたが、その願いは隣の少年に打ち破られました。
この少年は一人で座っており、どうやら一人で旅をしているようです。座席スクリーンのゲームで遊んでいてルールがよく分からなかったようで、「このゲーム、どうやって遊ぶの?」と話しかけられました。
少年の名前はファワーズ。タンザニアから来たのかと聞くと、コモロ諸島出身だと言うのです。正直失礼な話、彼と話すまでコモロがどこにあるかも知りませんでしたが、タンザニアの南東にある島国だそうです。僅か9歳のファワーズ少年はコモロからダルエスサラーム、ダルエスサラームからアジスアベバ、そして更に乗り換えてドバイで働いている父親に会いに行くと言うのです。
僕も小さい頃、夏休みのたびにアメリカから日本に1人旅をさせられていましたが、LAから成田への直行便でしたが、当時のANAにはジュニアパイロットというプログラムがあって1人で乗る飛行機には必ずフライトアテンダントがついてくれて、何の支障もなく目的地までアシスタントしてくれました。が、エチオピア航空にそのようなプログラムがないのか、ファワーズ少年の周りにはそのような助っ人の存在が見当たりません。たった1人でこの複雑な旅程をこなしているかと思うと、その逞しさに驚きを隠せません。
また、僕が驚いたのは、コモロ諸島の公用語はフランス語とコモロ語であって、つまり英語は彼が習得した第三言語なのです。時折、簡単な英単語が分からなかったりもしますが、それでも動じずに僕にどんどん話しかける度胸があるのも感心しました。
紙に僕の名前と彼の名前を日本語で書いた用紙と、手持ちにあったキャラクター付きのボールペンを渡すと喜んでいたのが微笑ましく、また座席スクリーンの3D地図で日本の場所を教えてあげると興味津々でした。思いがけない旅の一期一会は良かったですが、時差ボケ調整用の睡眠ができなかった事は後悔しております。ファワーズは無事、ドバイ行きの便に乗れたのかしら。