隣の芝は青く見える

 実は今朝まで福岡にいまして、今日東京に帰ってきたんですけど、以前『SKITBOOK』オンライン飲み会のアカデミー賞特集に出演してくれたヘアリンが韓国からNYに帰る乗り継ぎ便で福岡に寄っていたので、4年ぶりに会ってきました。

 

 今国際便はかなり高く、ソウルからNYの直行便が2500ドル以上するらしく、乗り継ぎ地をドンドン増やす方が安くなるみたいで、ヘアリンもソウル→福岡→ホノルル→サンフランシスコ→NYという気が遠くなるような旅程でNYに帰るとのことです。大変な時代になったなぁ…。

 

 で、アメリカも物価高な割に、SAG-AFTRAデモのせいで映像系の仕事がめっきり減り、そのうちヘアリンのビザも切れそうなので、彼女は韓国に帰ることを検討していました。しかし、あまり浮かない顔をしていたので理由を聞いたら、韓国はオーバーワークをする社会で映像業界は特に酷いので、韓国で働きたくないそうです。

 

 僕はすごく意外で、だって我々はよくニュースで韓国の映像業界は働き方改革に成功し、ハリウッド基準の労働環境で働いているとばかり思っていたのです。その労働環境の改善が作品の質の向上にも繋がり、低予算でハラスメントばかりで貧しい質の作品が多い邦画界も見習うべきだ、というのが日本でよく聞く論調です。

 

 でも、ヘアリンから聞くところによると、確かに全体的に改善する方向には動いているものの*1、結局はプロダクションによったり、プロジェクトの規模によりけりで、まだまだ働いている人は相当長時間で働いているとのことです。Netflix配信による韓国ドラマなどは軒並み世界中でも大ヒットして相当なハイクオリティで作られていますが、潤っているのはプロダクションばかりで現場の人間に渡る金は少なく、例えば『イカゲーム』を監督としたファン・ドンヨクは、同作が国際的な社会現象を巻き起こしたにもかかわらず、「食っていけるのがやっと」なギャラしか得なかったことも告白しています。

 

 上記『イカゲーム』の例はNetflixという制作会社の問題でもあるので、一概には韓国の映画業界の問題とも言えませんが、日本の映像制作者たちが憧れる韓国の映像業界が思ったよりも輝かしいものではなくて、驚いてしまいました。ヘアリンは結局日本や韓国などのアジアの国々では身を粉にして働くことを美徳とされるので、制作現場のブラックさが改善されることは中々難しいだろうと話していました。

 

 僕たちは自国の問題点を挙げる時に、隣国のシステムが如何に良いかを語りがちですが、各国には各国の問題が当然あるので、あまり実情を知らずに美化し過ぎるのもよくないな、と改めて思いました。

 

 

*1:ただ、韓国では改革の過程で女性プロデューサーがかなり増え、業界のジェンダー不平等はかなり改善された、とは言っていました