風刺についてあれこれ考えた

 YouTubeで風刺コントチャンネルなんてやっている身からして、なおかつ最近軽い炎上を経験した人間として、どうしても他人事じゃなくて今日は1日考え事をしていましたね。

 

 正直、彼らの漫才は好きじゃないです。おそらく政治思想も僕とは対極にあるでしょう。でも、同じ風刺をやっている身としては彼らの活動自体は否定したくはないです。右だろうが左だろうが、民主主義国家での表現活動なら自分の政治的意見を好きに言う自由はある。中国や韓国(そして当然日本)をネタにしたスタンダップコメディなんて、欧米では山ほど見ます。

 

 ただ、これまた右だろうが左だろうが、ヘイト表現は許されるものではありません。彼らのネタを見て気になってしまったのは、"あんなやつら"という言い方に代表されるように、矛先が国家だけではなくて民族グループに向いてしまってたことですね。あと、冒頭のジャブとして打ってた韓国政治家批判だって、彼らがいう"支持率が下がると反日に転ずる"はちょっとあまりにも韓国政治の歴史や文脈を簡略化し過ぎてしまっていたのもよろしくありません。どちらも根拠がなく感情論に基づいた主張なのが多くの人の神経に触ってしまったところでしょう。

 

 あと、一つ引っかかったのは、「政治のことが大好きで」とネタを始めたなら、日本の政治あるあるや政治の問題点を笑うネタならまだしも、隣国批判にとどまっていたのは政治ネタとしては甘い気もします。おかげで彼らを擁護する人たちはネトウヨだらけになってしまったのも気持ちがいいものではありません。

 

 とはいえ、僕を含めて世間の人たちは彼らのことを今日までほとんど知らなかったはずです。これはあくまでM-1第3回戦のネタなので、もしかしたら他のネタではそういった政治漫談もあるのかもしれません。これは僕自身が炎上した時にも思いましたが、一旦炎上してしまうとこれまで活動内容とか、そこまでに至る努力とか、表現にこめている考えや思いなどは全て切り捨てられて、あたかも自分が極悪非道人みたいに大勢から叩かれてしまうんですよね。

 

 自分の表現活動が否定され、世界に嫌われたように見えてしまう感覚ほどキツいものはありません*1し、その点に限っては、彼らに同情してしまいますし、まだ売れてもいないのに今後活動しにくくなってしまったのはちょっと気の毒にすら思います。

 

 が、これは自分への戒めとしても書いておきますが、表現の自由というものは常に誰かを傷つけるリスクを踏まえた上で初めて担保されるものです。一方で、風刺はどうしても表現者個人の主張や批判対象が込められている上、さらに受け手の倫理観やお笑い感度まで関わってくるので、万人を満足させることは不可能です。

 

 特に昨今はポリティカリーコレクトネスが謳われる世の中では風刺なんていよいよ手を出しづらい世の中になってしまったとは思いますが、一風刺活動家としてはこれを機に多くの人が風刺について考えて、風刺はヘイト表現で成り立つものではないと気付き、また風刺が一般化してくれて風刺作家が増えてくれればいいなぁと思います。

 

 そういう意味では、すべての人間に中指を突き立てる『サウスパーク』は改めて本当にすごいよね。

 

*1:しかもM-1落ちた後にこれだけ批判の声を浴びせられるのは、傷口に塩どころかハバネロ塗りたくられるよなものです。あと、「つまらない」とか「面白くない」と言われてしまうのも、M-1落ちた後だとかなりキツいと思う。自業自得と思う人もいるでしょうが…