1日1行レベルからでも読書の習慣をつけようと頑張っています。今回は青空文庫で横光利一の『機械』を読みました。また読書記録としてペラッペラの雑記をつけます。
- 元々は2年前に芥川龍之介の『藪の中』*1を翻案した自主映画の脚本を書いている時に、めちゃくちゃ本を読むサークルのOBに参考にこの『機械』と薦められていたが、やはり本を読むのは苦手なので食指がイマイチ伸びなかった。前回『アイネクライネナハトムジーク』*2を読み終わった後、次の本を探してるうちにこの小説のことを思い出し、ページ数も少なかったので読んでみた。
- ページ数が少ないだけでなく、近代文学作品にしては文体がとても読みやすい。OBの先輩が僕に推してくれた理由も納得。読書が苦手な人こそ手が出しやすい短編だ。
- 「私」という語り手の物語であり、一文一文が長く、「私」の思考とシンクロするような錯覚に襲われると同時に、この「私」が如何に捻くれて拗らせてる人物かが伝わってきてニヤニヤする。エリート意識が高いというのかね。
- そんな「私」はネームプレート製造工場で働いており、文中には化合物の名前や工場の実態が丹念に描写されており、大変「理系的」な作品である。一方で「私」は先述したように大変捻くれた人間で、その拗らせ方は「文系的」で、作品の内面と外面が対照的なのが印象的だった。
- といっても、近代文学独特の文章のせいで僕が勝手に「文学的」だと感じたからで、実際そうなのかはよく分からない。
- 「私」は現代的な言葉で言うとフリーターみたいな立場だろうか。この不安定な身分が最後のオチに効いている。
- そして、そのオチには「私」の思考回路と読者である僕の思考回路がシンクロしていただけに大変驚かされた。「私」の思考を長々と描写していたのはまさにこのためで、とても効果的だと思った。
- 映画に置き換えた場合、一番この作品に近いのはなんだろう。パッと思いついたのは『メメント』辺りだろうか。