6年ぶりに『インターステラー』を見返して思ったあれこれ

  • コロナに大直撃された映画ファンにとって、なんといっても今年最大のトピックは今週末公開の『テネット』だろう。さっき国内最大のIMAXシアターである池袋グランドシネマサンシャインの上映スケジュールを見たら、全回ほぼ満席。ニート、もとい、フリーラーンサー特権を活かした時間帯でももう前方端席しか空いていない埋まりようである。「コロナにかかってでもなるだけ最高級の環境で、誰よりも早くノーランの新作が観たい!」というのが僕を含めた映画ファンの願望だろう。
  • で、今週末は『SKITBOOK』の新作も撮影するし、金曜朝イチの回ならワンチャン、と思っていたが、久方ぶりの日本の映画ファンの熱狂度というものを完全に忘れててナメてしまい、もう埋まってしまっていたので今週末の鑑賞は諦めた。とはいえ、僕なりに先週はノーランデビュー作の『フォロウィング』を観てちょっと気持ちが高まってしまっていたので、今日は今リバイバル上映している『インターステラー』を件のグランドシネマサンシャインに観に行った。あまり考えたくもないが、実に6年ぶりの星間旅行である。
  • この6年の間、僕はアメリカのド田舎で生活した。その経験を経て見返すと、主演がテキサス出身のマシュー・マコノヒーなのでコテッコテの南部訛りで話すこともあり余計に、というのはあるが、「科学」をテーマにした映画の地球パートの舞台がアメリカの南部的・中西部的なイメージで繰り広げられているのに引っかかった。
  • というのも、アメリカは非常に独特な国で、都市として発展した両海岸を除けば広大な「田舎」だ。そして、アメリカの田舎はキリスト教的価値観に支配され、未だに進化論やビッグバン理論を信じていない人が多い*1など、驚くほど「反科学的」である。冒頭で登場する学校のシーンでもアポロ計画が陰謀として教えられていることが判明するが、『インターステラー』の未来像はこうした南部的・中西部的世界観が支配する科学者にとってのディストピアであることに気がついた。
  • インターステラー』初鑑賞時は「なんてロマンのある映画なんだ…!」と感動したが、改めて観てみると終始科学的態度を標榜しているにも関わらず、最後の最後でセンス・オブ・ワンダーにメーターを振り切ったクライマックスにやっぱりロマンを感じた。世界を救う鍵は君の部屋の中って、あんた『ドラえもん』じゃないんだから!
  • センス・オブ・ワンダーといえば、というか、ノーランはスマホ嫌いでこの映画にもタブレットの類が一切出てこないのは有名な話だけれども、6年経っても『インターステラー』が近未来SFとしてあまり色褪せて見えないのは、映画内からスマホの存在を消したことが一躍たっているのではないか、と思った。うまく言い表せられないが、『SW/新たなる希望』が果たしたように、描かれている世界観がある種の普遍性を獲得したというか…。
  • 会議室の壁が左右に開いたと思ったらロケット開発場って、ノーランあんたどんだけスパイ映画好きなんだ。
  • そういえば不思議なもんで、『インターステラー』初鑑賞時にもマン博士のキャストに笑ったはずなのに、今回はマン博士登場直前までその俳優のことを忘れていて、マン博士が冷凍カプセルから目覚めるシーンで「お前いつも宇宙に取り残されてんな!」と5年ぶり『オデッセイ』以来のツッコミを心の中で唱えた。
  • あと、『フォロウィング』を観てから『インターステラー』を観ると、全てがノーランが学生時代に撮った短編映画に繋がっていることにも気がついた。これについては明日書く。
  • 全く余談だが、僕は少し遅刻して行って、そうしたら『スカイウォーカーの夜明け』で流れた『テネット』劇場襲撃シーンが流れていたのだけれども、周りの客に見えないように前かがみになりながら急いで席を探していた僕は、完全に『テネット』内のジョン・デヴィッド・ワシントンとシンクロしていた。『テネット』どういう映画なんだろうなー。早く観たいなー。 
インターステラー(字幕版)

インターステラー(字幕版)

  • 発売日: 2015/03/25
  • メディア: Prime Video
 

 

*1:これ、日本でもよく聞く話で「とはいうものの、ほんの一部でしょ?」と思うじゃないですか。田舎に住んでみると本当にビックリするくらい身近に多くいるんですよ。僕が留学した初日、キャンパスで出会った人に神の存在を説かれました。