MCU版『スパイダーマン』最新作の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を鑑賞。監督は前2作と同じく『コップ・カー』のジョン・ワッツ。製作はエイミー・パスカルとケヴィン・ファイギ。音楽はマイケル・ジアッキーノ。出演はトム・ホランド、ゼンデイヤ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジェイコブ・バタロンら。
注!全部ネタバレしています。
久しぶりに観たその日に映画の感想を書くので、勢いのままそのまま書く。まー、ズルい作品だった。こんなのアガらない訳がない。僕は近年のアメコミ大作系に食傷気味になってきたのは否めないけれども、それでも「パーカー3」が出た時に思わず息を呑んだ。そして立て続けに「パーカー2」でも。ズルい。
僕は『アメイジング・スパイダーマン2』が死ぬほど好きだ。多分全ての『スパイダーマン』映画化の中で一番好きだ。それだけに『アメスパ3』が作られることはなくて残念な思いをしたけれど、『NWH』は実質『アメスパ3』でもあった。悲劇で破れかぶれになった「アメイジング・スパイダーマン」の魂を救済する話になっていた。
また、実質『スパイダーマン4』になっていたことも忘れてはいけない。トビー・マグワイヤの希望であまり『スパイダーマン3』後にピーターがどういう人生を歩んだかは明確な描写は避けた*1そうだが、叔父も友も失った世界線でのピーターはどこか達観したような表情で、先輩スパイダーマンとしての風格がよく出ていたと思う。
日本中がネタバレを恐れていたけど、結果的には皆出ることは何となく心の奥底では分かっていたので、あまりネタバレではなかった気もする。ただの確認作業だったと言うか。それでもやっぱり息を呑んじゃうんだから、マグワイヤ版もガーフィールド版も、どれだけ愛されてきたキャラクターだったかが分かる。
ファンサービスを抜きにして考えても、セリフがコメディとしてとてもよく磨きがかかっていた。マルチヴァースからヴィランが襲ってきた時も変にシリアスにしないで、ほどよくコミカルに軽快にバトルをしていたのが良かった。台詞の節々もジョークとして洗練されていて、スパイダーマン3人のやり取りはたまらず爆笑した。余談だけど、トム・ホランドは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマイケル・J・フォックスを役作りに取り入れていると聞くが、彼がドクター・オクトパスに呼びかけるときの「ドク!」がマーティのそれでニンマリしてしまう。
一方で、シリアス描写も手を抜かず。今シリーズのベンおじさんはメイおばさんだった訳だけれども、個人的にはヴィランの方向に目配せしすぎて、あの悲劇に至るまでの「本作内においての」メイおばさんとの積み重ねがちょっと浅いと感じた。(だって、ずっとネッドとMJと行動してるし。)ただやっぱり、これまでとはまた趣の違う「大いなる力には大いなる責任が伴う」にはグッとくるし、クライマックスでグリーン・ゴブリンと対峙したときのピーターの憎しみ溢れる表情にはゾッとした。トム・ホランドの役者としての凄さが分かる。
正直、1から10まで完璧な映画だとは思わない。『ファー・フロム・ホーム』からの繋がりとなる冒頭の逮捕からの弁護士までのクダリは、展開がごちゃごちゃしすぎて編集上見にくかったし、ヴィランが多すぎるせいかクライマックスのバトルも一人一人の尺が短くて薄味だ*2。(なんならドクター・ストレンジとのバトルの方が驚きが多い。)1人だけ改心したドック・オックももう少しドラマ的な見せ場があれば良かったのに。
それでも、不織布マスクの繊維を飲み込んでしまうくらいハッとしたあのシーンの感動は忘れられない*3し、ピーターが選んだ選択*4と、その選択によりヒーローとして真に目覚めるラストには目頭を熱くせずには得ないのだ。それでいて、全ての『スパイダーマン』映画化の完結編として機能するというね。ズルいよ、こんなの。