この作品…面白いのか?

 今の現場の入りたての頃、これだけ大規模な作品に関わったことがまずなかったので、それだけで楽しかったり辛かったりすることはあったが、最近はもうすっかり慣れてきて最早生活の一部と化してきた。ある程度余裕が生まれた最近、なんとなく脳裏に思い浮かぶのは「この作品…面白いのか…?」という疑問である。

 

 ただでさえ元々の脚本は読んでも飲み込みづらいし、挑戦的な設定な割には美術は平凡だし、何よりも連日の過密スケジュールやトラブルの中で色んなシーンや演出を諦めたりしている。意気揚々と参加した作品だけど、編集が加わって世に出る段階で面白くなるとは思えないし、悲しいことにこれは僕だけの意見ではなくて現場で働いている色んな人からも聞く。

 

 しかし、不思議なことにデイリーズ(その日に撮ったショットをお偉いさんに見せる毎日行われる試写)は好評だと言うし、『スター・ウォーズ』だって毎日トラブル続きで、『レイダース』の脚本を盗み見た若きマイケル・ベイは「駄作だと思った」と吐き捨てたし、『マッドマックス/怒りのデス・ロード』だって現場の雰囲気は険悪だったと言う。結局我々末端のスタッフは毎日追われる業務をなんとか凌いでいるだけで全体的な青写真は見えておらず、今参加している作品が次の『スター・ウォーズ』になっている可能性もあるのかもしれない。映画作りとはそう言うものなのだろう。