ハリウッド映画と外国語

 『ヴァチカンのエクソシスト』を観てきました。ラッセル・クロウエクソシストを!?という時点で意外で、実際に観てみると冒頭でイタリア語を話しながら除霊を行うラッセル・クロウは確かに新鮮でしたが、英語を話すモードになった途端ヴァチカン本部で”No shit.”といきなりSワードをかます粗野っぷりがもうただのラッセル・クロウで可笑しかったですね!内容自体もエクソシストものとは思えないくらいのパワー系でとても楽しく見れました。

 

 ちなみに、劇中ラッセル・クロウは大半イタリア訛りの英語を話していましたが、『ハウス・オブ・グッチ』などでもキャストにイタリア訛りの英語を話させる事で「はい、どっからどう見てもイタリア人です!」としていました。『ヴァチカンのエクソシスト』みたいなジャンル映画ならまだしも、シリアスなドラマ映画でこうしたハリウッド特有の強引な言語演出を見てしまうと、ちょっと真面目に見る気を削いでしまうんですよね

 

 そういえば、『ハウス・オブ・グッチ』と同じリドスコ映画の傑作『最後の決闘裁判』でもフランスが舞台だったにもかかわらず、キャストが話している英語はイギリス訛りでした。ハリウッドの時代劇にイギリス訛りは定番の演出ですが、フランス訛りの英語はちょっと洒落た感じで真面目に聞こえないからかもしれません。いや、そもそもフランス語を話せよ!という話なのですが。ちなみに、『最後の決闘裁判』のお気に入りは、頑張ってイギリス英語を話そうとしても下手すぎてついついアメリカ英語が見え隠れしちゃうベン・アフレックです。

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 なお、最近では『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』冒頭でもロシア語とロシア訛りの英語をオーバーラップさせることで「ほら、この人達はロシア人!今から聞こえる英語は全部ロシア語ですよ!」という力技の言語演出もありました。『レッドオクトーバーを追え!』でも似たような演出がありました。潜水艦繋がりでオマージュかもしれません。

 

 

 もちろん世界中を舞台にするハリウッド映画においてこういう演出は大昔からあるので、「何を今更?」と思われるかもしれませんが、「アメリカ人は字幕を読まない」とされていた昔ならつゆ知らず、動画配信サービスのおかげでむしろ半数以上がは字幕で観ている今、そろそろ非英語圏が舞台の時は無理に英語にしなくてもいい時代が来た気もしますね。だって、日本アニメが普通に見られていたり、非英語圏の『パラサイト/半地下の住人』がアカデミー賞を取るような時代ですからね。

 

 

 ちなみにですが、こうした非英語圏の言語と英語の切り替えがうまかった映画で一番最初に思いつくのは『イングロリアス・バスターズ』ですかね。当然、クリストフ・ヴァルツノ才覚あってのことですが、ランダ大佐は大発明だったと思いますよ。後半でイタリアの映画スタッフに扮したアルド・レイン中尉がコテコテのアメリカ訛りの英語で話すシーンなんかも何回見返しても爆笑です。

 

 更にちなみにですが、僕は見たことないシリーズで『キングダム 運命の炎』が今映画館で予告編がかかっていますね。中国時代劇をベースにした映画ですが、元が日本の漫画ですしスタッフ・キャストも日本主導なのでもちろん日本語で話しています。台湾人の嫁さんはこれがどうもおかしく見えるようで、いつも苦笑いしています。僕としては「でも日本映画だしなぁ…」と思ってしまうのですが、これはダブルスタンダードですね。アメリカの観客もこういう気持ちで映画を見ているのかもしれません。

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