結局モナークってなんなの?/『ゴジラXコング/新たなる帝国』&『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』★★☆

 モンスター・ヴァース最新作の『ゴジラXコング/新たなる帝国』と、その予習のためにApple TVシリーズモナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』を鑑賞。『モナーク』はクリス・ブラックとマット・フラクションがショーランナーを務め、『ワンダビジョン』のマット・シャックマンが2話を監督し制作総指揮として加わる。主演は澤井杏奈、脇を渡部蓮、キアシー・クレモンズ、山本真理、アンダーズ・ホーム、カート・ラッセル&ワイアット・ラッセル親子が固める。

 

 『ゴジラXコンブ/新たなる帝国』は前作から引き続きアダム・ウィンガードが監督を、テリー・ロッシオが脚本を担当。キャストはレベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ダン・スティーヴンス、カイリー・ホットル、アレックス・ファーンズ、ファラ・チェンらが出演。

 2014年版に始まったワーナーXレジェンダリー版『ゴジラ』シリーズ=モンスター・ヴァースも、今年で早10周年!その間本家東宝の実写版は2本しか作られていないが、モンスター・ヴァースもこれで5本の映画と1本のスピンオフドラマ*1が公開された。前作のレビュー*2でも書いたが、ゴジラが持つ神性に焦点を当てたギャレス・エドワーズ版から遥か遠いところへ来てしまった感がある。だって、次の2枚の画が同じ世界観の話だと聞いて信じられますか!?

 

 ギャレス・エドワーズが初代『ゴジラ』のシリアスさを重視していたとすれば、アダム・ウィンガードは昭和『ゴジラ』シリーズのライトさに興味があるようだ。なんたって、『ゴジラXコング』のゴジラは文字通り軽い!無重力空間を言い訳にピョンピョン跳ね回るし、地上でだって頻繁に飛び回る。『ゴジラ対メガロ』でドロップキックしていたゴジラ馬鹿馬鹿しさ軽快さを彷彿させる。

 

 もちろん、脚本だって『ゴジラVSコング』から更に輪をかけてバカライトである。前作の番長路線をパワーアップさせたような話であり、プロットなどあってないようなものだ。怪獣同士で会話をしているシーンが多く、字幕なしで脳内補完で言っている内容が理解できる演出表現には軽く感心したが、その分本作における人間は怪獣言語では説明しきれない事象を補足するための存在にすぎない。前作もそうだったけれども、本作における人間ドラマの無意味さは度を越している。

 

 これはそもそものモンスター・ヴァースシリーズの問題点なのだが、モンスター・ヴァース間を繋ぎ止めている秘密組織モナークが一体どういう組織なのかサッパリ分からない。どうやら怪獣の危機から人類を救うための存在であるのはわかるのだが、シリーズを通してモナークの人間が取る行動が馬鹿馬鹿しすぎてむしろ人類に被害をもたらしている気もする。本作でもモナークゴジラは人類の味方であることを世論に呼びかけるが、一方でゴジラは景気良くローマの歴史的な街並みやピラミッドを破壊するので正直全く説得力がない。(あと、描写として若干不愉快である)

 

 こうしたモナークの意味不明さが際立っているのが、まさにモナークそのものの実態に迫ったApple TVのドラマシリーズ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』である。本作は失踪したモナークの研究員であるヒロシを、その子どもたちであるケイトとケンタロウが探す中でモナークの陰謀に巻き込まれていくサスペンスミステリーシリーズなのだが、エピソードによってモナークの構成員たちが主人公たちの味方になったり敵になったりと、そのスタンスがバラバラで何がしたいのか非常に飲み込みづらい。

 

 しかし、意外にもサスペンスは機能していて面白く、また最終話はSFロマン的な物を感じたので個人的には嫌いになれない作品ではあったが、肝心の怪獣が出ている場面よりも父親を探し出す過程の方が面白かったので、そこは怪獣を描いたドラマとしては難点だと思った。そしてこのドラマを観てもやっぱりモナークの行動が理解できない。

 

 モンスター・ヴァースとかDCEUのように、フランチャイズとしての道筋が全然分からないシェアード・ユニバースのフランチャイズを見ると、やっぱりなんだかんだケヴィン・ファイギのクリエイティブ・コントロールって凄いなと実感するのであった。

 

 

 

*1:あと、厳密に言えばNetflixのアニメシリーズ『髑髏島』もある

*2: