詰んだ

 あーやばい、詰んだ。夜遅くまで飲んで、2:40過ぎに家に戻ってきたら、鍵を家に忘れてることに気がついた。もちろん、ルームメイトは誰も起きてない。外の気温は-4℃で、スマホの電池も死ぬ直前だってのに、取り敢えず24Hランドリーで暖をとりつつブログを書いてる悲しい性。マジでどうしよう。。。

第91回アカデミー賞作品賞ノミネート作全部見終わった

 今年は作品賞ノミネート作を去年の内にほとんど観ていたので、先週『バイス』を観たことでようやく全部観終わった。以下あいうえお順で各作品の軽い感想をば。

 

アリー/スター誕生 ★★☆

 面白かったけど、公開時マーケティングがとにかくしつこくてウザかったので今年一番応援したくない映画。…いや、面白かったですよ。過去作は一番最初の『スタア誕生』しか観てないので簡単な比較はできないが、しかし1937年版は古い松竹映画みたいにエスターがノーマンにひたすら尽くしていく姿が印象的だったけど、今回のは割とアリー(レディー・ガガ)がジャクソン(ブラッドリー・クーパー)と対等にぶつかり合っていて時代の流れを感じる。あと、単純にブラッドリー・クーパーは監督として凄く上手い。オリジナル観てたので結末を知ってから鑑賞したが、冒頭のとあるシーンでジャクソンの背後に写る電光掲示板に鳥肌が立った。

 

グリーン・ブック ★★★

 年末ベスト対談で散々褒め倒してきてるが、社会派映画・コメディ・ロードムービー・バディムービー・音楽映画・クリスマス映画と、どの要素も含まれている完璧としか言いようがない一本。何よりピーター・ファレリー作品がアカデミー賞作品候補と言うのが熱い…!

グリーンブック~オリジナル・サウンドトラック

グリーンブック~オリジナル・サウンドトラック

 

 

女王陛下のお気に入り ★★☆

 ヨーロッパ宮廷モノって苦手なんだけど、これはヨルゴス・ラティモスの意地悪いユーモアにずっと笑ってた。最高。観てて首が痛くなる錯覚を起こすくらいローアングルショットや広角ショットが多いロビー・ライアンの撮影も面白いが、インタビュー記事を読んでいるとウサギの視点を表現していたようで、なるほど。応援してる作品の一つ。ただ、 あみん とも話題に上ったが、主演女優賞候補がオリヴィア・コールマン助演女優賞候補がエマ・ストーンレイチェル・ワイズっていう分担はおかしい。どちらかというと役割的にエマ・ストーンが主演な気がするが、まあ『ラ・ラ・ランド』で獲ったし次は助演でも、ということなのかも。

 

バイス ★★☆

 現代に蔓延る悪徳(Vice)を史上最悪の副大統領(Vice President)が作り出した、というピカレスクロマン・コメディ。ピーター・ファレリーと同じくコメディ出身のアダム・マッケイ作という事で応援したい。ここに来て社会派映画ばかり撮ってるのが意外に思えるかもしれないけれど、『俺たちニュースキャスター』だって『アザーガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』といった一見バカバカしいコメディ映画だって一貫としてアダム・マッケイのリベラルな視点が盛り込まれていた。個人的にはサム・ロックウェルのブッシュのバカっぷりがツボだった。

 

 

 

ブラッククランズマン ★★☆

 スパイク・リーKKK、トランプ政権、『国民の創生』『風と共に去りぬ』と、嫌いなもの全てにミドルフィンガーをぶち立てていてカッコいい。ただ、申し訳ないけどスパイク・リーはオスカーを取らない方がスパイク・リーらしさがある。

 

ブラックパンサー ★★☆

 前も書いたけど、今年の予想外枠その一。去年のマーベル映画では『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』>『アントマン&ワスプ』>『ブラック・パンサー』の順に好きだったもので…。いや、嫌いな作品ではないですよ。

 

ボヘミアン・ラプソディ ★★☆

 今年の予想外枠その二。GG賞作品賞受賞も話題になったが、まさかアカデミー賞作品賞までノミネートされるとは。僕はエンターテイメントとして面白かったし楽しかったんだけど、でも結局のところ映画の出来と言うよりそもそもクイーンの楽曲が良いからじゃないの?と一歩距離を置いている。でも日本での大ヒットも嬉しい。

 

ROMA ローマ ★★☆

 常に平行移動しているカメラワークに、僕はディズニーワールドのアトラクション『カルーセル・オブ・プログレス』を思い出した*1。『カルーセル・オブ・プログレス』を翻訳するならば『進歩のメリー・ゴーランド』で、円形のシアターの座席がメリーゴーランドの要領で回り、各時代の生活様態をゲストにタイムマシーンのように見せていく。『ROMA』もまた観客に介入の余地を与えない、ある種のライド型映画のような感覚を与える一種の展示物に近い映画だ。当然、長回しと言う手法もライド感覚を助長するが、『トゥモロー・ワールド』と『ゼロ・グラビティ』でもヘル・ライド感を追及していたキュアロンがブラシュアップした表現手法として『ROMA』は面白かった。

 

 またオスカー授賞式が近づいてきたら「僕が審査員だったらどの作品に投票するかごっこ」をします!

*1:

グランデ級の間違い

 アリアナ・グランデの七輪タトゥー問題、僕はアリアナの事を可哀想だとは思わない。もちろん、「文化の盗用だ!」ってわざわざリプ飛ばしてる人たちは暇だしバカだと思うし、基本自分の体なんだから好きにタトゥー彫ったって良いじゃないか。

 

 でも、やっぱり「七つの指輪」って意味で七輪ってタトゥー入れたらそりゃツッコミ受けたって仕方ないし、なんで自分の体に入れる文字についてもっとよく調べないのかが僕には理解できない。それで修正しようと思って「七輪指♡」って掘るのはいよいよバカだと思うし、指摘されて癇癪起こして「もう日本語なんか学ばない!」って自身のサイトから日本語公式グッズまで取り下げちゃうのはどうかと思う。そういう軽い気持ちだから七輪って彫っちゃうんだよ!

 

 ところで、僕は日本語の文章に英語をごちゃ混ぜにして書く人が嫌いだ。「友達のpartyに行ってきてenjoyしました♪」みたいな、SNSでよく見るアレだ。たまにスペルとかも間違ってるから頭が痛くなるのだが、ルー大柴じゃないんだから英語なら英語、日本語なら日本語で統一してほしい。要は「英語知ってる自分」をアピールしたいだけで、アリアナの七輪問題も根底では繋がってる気がするよ。

 

 あと、やたらとアリアナを擁護する人たちももっと冷静になって考えてほしいんだけど、普段あなた達日本人が意味も分からず変な意味の英語Tシャツ着てるのを槍玉に挙げて「世界の恥」だとかなんとか言ってませんか?そういうのはダブルスタンダードだと思うぞ!

 

 

 

続・宗教ポルノ

 昨日『アタック・ザ・ブロック』のジョー・コーニッシュ最新作『The Kid Who Would Be King』を観に行ったっす。興行的には大コケしてしまっていて、確かにマーケティング的には何を売りにしたらいい企画なのか難しかったとは思いますが、流石はエドガー・ライトの盟友ジョー・コーニッシュだけあって大長編『ドラえもん』のようなジュヴナイルを味わえる作品で、クライマックスは『ホーム・アローン』×『ロード・オブ・ザ・リング』といった趣向で楽しい作品ではありました。

 

 まあ『The Kid Who Would Be King』の詳細な話はまた今度するとして、僕のテンションを非常に下げた予告編が本編前に上映されてましてね。

 

 『Breakthrough』というスピリチュアル映画なんですけども、何かっつーと所謂クリスチャン・フィルムってやつですね。クリスチャン・フィルムって言っても、スコセッシの『沈黙』みたいな骨太拷問映画やキリスト教の同性愛矯正キャンプを描いた去年の『Boy Erased』みたいな、ただ単にキリスト教を題材にした映画は含まれません。キリスト教系の映画会社キリスト教徒の為に製作するキリスト教的なメッセージを多分に含んだ映画を指してクリスチャン・フィルムと呼びます。前も書きましたが、実質幸福の科学が作る映画と本質は何も変わりません。

 

 

 映画はなるべく食わず嫌いはしたくない僕ですが、宗教プロパガンダ映画*1と動物映画だけはどうしても拒否反応が出てしまいます。動物映画と書いて思い出しましたが、この間アメリカで公開された『A Dog's Way Home』の予告編もまあ酷くて、予告編さえ見れば本編がオチまで100%分かる仕様になっています。英語も分からなくたって本編内容が分かるので、試しに観てみてください。

 

 

 まあ、ある意味で予告編さえ見れば本編を観る必要は一切ないので超親切っちゃ親切なのですが、しかし去年の秋からこの映画が公開されるまでAMCの映画館に行く度にこのゲロカスな予告編を観させられて『時計仕掛けのオレンジ』か!ってくらいのビジュアル拷問を味わいました。

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 なんで僕が宗教プロパガンダ映画や動物映画が嫌いなのかと言うと、観てる人たちの「キモチイイ」という感情を満たすためだけに作られて実質ポルノやAVと何も変わりないのに、そこに宗教や動物という一見道徳的な皮を被って如何にも高尚な何かに見せかけているからです。というか、ポルノやAVの方がもっと実験的で野心的で芸術的なメッセージ性のある作品が多いので、羅列してしまう事すら烏滸がましかったです。AV製作者やファンの皆様には謹んでお詫びいたします。

 

 まあとにかくですね、これからイースター(復活祭)が近づいてきて、余計にこうした宗教ポルノ映画の予告編やポスターを観る機会が多くなるのかと思うとゲンナリしてしまいます。日本でも面白半分に幸福科学の映画とか観に行ってたから、どうせなら観に行ってみようかしら。多分日本語でクリスチャン・フィルムをレビューするブログなんて滅多にないからその先駆者になれるかもしれないし…と思いましたが、明らかにメリットデメリット差し引いてドマイナスなので、今はやめておきます。ということで、皆さんも『The Kid Who Would Be King』を観よう!

*1:もう一度言いますが、宗教映画とは違います。

世界で一番ミニマルなユニバース/『ミスター・ガラス』★★☆

 イーストレイル3部作の完結編である『ミスター・ガラス』を鑑賞。監督・脚本はM・ナイト・シャマラン、製作はジェイソン・ブラム。主演はジェームズ・マカヴォイブルース・ウィリス、そしてタイトルになってるミスター・ガラスをサミュエル・L・ジャクソンが演じる。

※直接的なネタバレはしていませんが、可能な限り『スプリット』と『ミスター・ガラス』を観てからお読みください。

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 『ミスター・ガラス』という続編の存在が『スプリット』最大のネタバレとなってしまっているが、宣材通りこの2作品は『アンブレイカブル』から続くトリロジーを成している、ということを前提に。シャマラン映画を最近見始めたばかりのシャマラニスト初心者が書くレビューなので、暖かく見守って頂きたい。

 

 『アンブレイカブル』は「もしも現実と地続きの世界にスーパーヒーローがいたら?」という問いを『ダークナイト』や『キック・アス』の前にやった、という意味では画期的な映画だったのだろう。一つ後述作品と明らかに異なる点は、スーパーヒーローを題材にしている割にスペクタクルなシーンは一切なく、ミスター・ガラスに諭されたデヴィッド・ダーンが「そういや俺人生でケガも病気もしたことないけど、本当はスーパーヒーローじゃなかろうか…」とひたすら内省的に悩む姿が映される。切っ掛けとなる冒頭の脱線事故すら直接的描写は見せず、登場人物たちがフィラデルフィアから出ることもない。全て生活圏内で起きる出来事だ。

 

 舞台設定と言う意味では『スプリット』は更に範囲が狭まっている。23もの人格を持つ解離性同一性障害のケヴィンによる女子高生誘拐を描いている物語の性質上、舞台はほとんどフィラデルフィア市内の某地下施設で展開される。後に『アンブレイカブル』に繋がる超人的能力をケヴィンは見せるが、しかしその能力も滅茶苦茶速く走ったり、とんでもない怪力で壁をよじ登れる、といった地味なもので、地味であるからこそどこか現実味を帯びたものに見え、ここでもスペクタクルは排除されクライマックスはアンチカタルシスなものになっている。

 

 さて、これらの作品と世界観を共有する「イーストレイル117三部作」の完結編である『ミスター・ガラス』も、これまた負けないくらい狭いミニマルな世界をフィラデルフィアで展開している珍味な作品だ。再びスーパーヒーローという題材に戻ったシャマランであったが、今度は登場人物たちに「俺たちのスーパーパワーって本当は妄想の産物ではなかろうか…?」というこれまた内省的な疑念を抱かせて、前半部はその一点に執着するという大胆ともいえる構成を見せる。クライマックスではスーパーヒーロー映画にありがちな超人たちバトルを見せるが、これも派手なビームや超能力は登場することなく単純なパワーとパワーの押しくらべであるのも、やけに超人たちの実在感を演出している。

 

 しかし、現実に即した箱庭的世界観で完結したかのように思われたユニバースは、まさにシャマラン的としか言いようがない広がりをオチで見せる。まるでスーパーヒーローと言うガラスを満遍なく散らばせる為かのように。こうしたミニマルな入り口からマーベル/DCもビックリの無限の可能性を秘めた世界を見せるその語り口こそが恐らくシャマラン流のストーリーテリング術なのであり、その手腕にシャマラニストたちは魅了されてきたのだろうな。

 

アンブレイカブル(字幕版)

アンブレイカブル(字幕版)

 
スプリット (字幕版)

スプリット (字幕版)