上半期ベスト*1のときは「今年は面白い映画がない!」と嘆いていたけど、今月に入ってから観る映画観る映画がほとんど面白い。*2感想書きたいけど量が間に合わないので、短くまとめて書くきます。こういうスタイルで書くの久々だな。*3
ロスト・バケーション ★★★ 怪物。海。ダンスミュージック。サスペンス。ユーモア。ケツ。乳。友情。決闘。成長。僕が夏の映画に求めるもの全てが詰め込まれていたのであった。完璧。
— Taiyaki (@HKtaiyaki) 2016年7月6日
『127時間』や『イントゥ・ザ・ストーム』みたいに、超ハイコンセプトかつタイトな尺が売りのアトラクション映画の傑作。なんたって、わざわざ名を挙げるまでもなく『ジョーズ』*4以来バカみたいに大量生産されてきたサメ映画に敢えて演出力で勝負した図太い気概が素晴らしい。そういう意味ではそれこそスピルバーグの『激突』を思い出す。また、これだけコンパクトなのにツイートしたように要素が盛りだくさんで、娯楽映画としては文句のつけようがない。あとドラマの作り方がスマホ時代ならではだったのも印象。
Weiner ★★☆ 7期連続当選を果たすほどの実力派下院議員だったが、性的ツイートのスキャンダルで辞職したアンソニー・ウェイナーが、2014年のニューヨーク市長選を戦う姿を追った、笑と涙とやっぱり笑のドキュメンタリー。めちゃくちゃ面白かった!
— Taiyaki (@HKtaiyaki) 2016年7月11日
口を開けば共和党を怒鳴り散らし、民主党に檄を飛ばすアンソニー・ウェイナーは凄腕の下院議員だった。そう、あの日、自分のパンツの中でギンギンに勃起したペニスを誤ってツイートするまでは。
▲当時の実際にツイッターに載せられた写真。
ウェイナーはすぐに消去したが時すでに遅く大炎上。当初ウェイナーは自分のツイートがハッキングされたと主張したが次第に嘘を隠し通せなくなり(そりゃそうだ)、記者会見を開いて辞職した。
やり手の実力派政治家から一転、笑い者の負け犬となったウェイナーだったが、スキャンダルから2年後NY市長選に出馬。ドナルド・トランプなど一部からは「変態は出てくるな!」と叩かれたが、「私にセカンドチャンスを!」と真摯に呼びかける姿が市民から評判を呼び、ついには候補者の中でトップの支持率を得るまでに上り詰める。しかし、どこからから再びウェイナーが過去に不特定の女性に送った性的なメッセージが流出し、果てはその女性までもがメディアに露出し、ウェイナーは再び炎上という名の奈落に叩き落とされるのであった…。
今年日本でもスキャンダルで信頼を失った芸能人や政治家は数知れず。一度失った信頼を取り戻すのは難しいが、信頼を失った人間はどう人生と立ち向かえば良いのか、を捉えたドキュメンタリーがこの『Weiner』だ。特にウェイナーは必死にようやく信頼を回復してきたのに、またも叩き落とされるので目も当てられない。キャンペーン中に性的スキャンダルがバレた時、マスコミや民衆は政策などは聞く耳も持たず、ひたすらウェイナーを罵倒し続ける。*5「本当に聞きたいことがわからないじゃない!」と、そんな世論に苛立っているおばさんが印象的だ。
だが、絶望的な状況に立たされた時にウェイナーがとった選択には燃えた。これも「でも、やるんだよ!」な男を悲しくも面白可笑しく描いた映画だったのだ。
Sultan ★★☆ 『ロッキー』〜『ロッキー3』を一本に凝縮したような、贅沢極まりない燃えるサルマン・カーンのスポ魂ラブロマンス!変な言い回しだが、スポ魂ラブロマンスとしか言いようがない!
— Taiyaki (@HKtaiyaki) 2016年7月12日
惚れた女を振り向かせるためにレスラーになったサルマン・カーン様の最新作。当然、インド映画なのでロマンス要素もスポーツドラマ要素も両立するくらい盛り込んでいる。好物のトレーニングモンタージュがインターバル挟んで前後編に一回ずつ挿入されてあるのも良い。プロットも王道だが、悲劇への転換点ではベタながら感情移入しすぎて思わず声が漏れてしまった。
ちなみに全米ボックスオフィス10位以内に入ったことが話題になったが、確かに僕が入った劇場ではインド系だけでなく観客が多様だったのは印象的だった。
The Neon Demon ★★★ 極彩色で彩られ、エレクトロなサントラで奏でられた、「美」という名の悪夢の世界!ファーストカットで鷲掴みにされた心が最後まで離されず、そのまま押しつぶされた!最高だ!
— Taiyaki (@HKtaiyaki) 2016年7月12日
死のイメージと鏡が最初から最後まで、行ってしまえばしつこいくらいに出てくるのは「美」の危険性や中毒性を描いた映画だから、だと思っている。そんな麻薬のような「美」を追求するモデル業界は地獄への道であり、その道を通るうちにあどけなかった少女は悪魔へと変貌していく。前半と後編で顔が違うエル・ファニングちゃん超かわいい。
めちゃくちゃ蛍光色かと思ったら、極端に真っ白になったり*6、真っ黒になったり、音楽が低音響かせてると思ったら、突然静かになったり、感覚をブンブンと振り回される。ショッキングなビジュアルも多く、観客席から悲鳴が漏れあわや途中退席する客までいたが、そんな観客を巻き込んでエル・ファニングと一緒に悪夢の世界へ地獄めぐりさせる。最高。
Swiss Army Man ★★★ ほぼ全編ボンクラと死体しか出てこないコメディのに、これ以上なく真摯に描かれた恋愛映画だった…!オナラで感動したのは初めてだ!!
— Taiyaki (@HKtaiyaki) 2016年7月13日
これもタイトルコールから最後までずっと心を鷲掴みにされた、しかし暖かい映画だった。内容を全く知らず予告編すら観なかったので、ダニエル・ラドクリフの役所にはビックリしたし、登場時から爆笑の連続だった。『ハリポタ』以後のダニエル・ラドクリフのイメージ脱却に奔走する感じは見逃せない*7が、『Swiss Army Man』はついに来るところまできた気がする。
ロブスター ★★☆ 恋愛に対する覚悟を突き付けられて、大変身につまされる思いをしました…。
— Taiyaki (@HKtaiyaki) 2016年7月14日
で、その『Swiss Army Man』と一緒に『ロブスター』を語りたいんだけど、なぜなら両方共「万能な喋る死体とサバイバル」、「45日以上独身でいると動物に帰られてしまう」、という突拍子もない設定ながらも、恋愛について大真面目に、しかし真逆のベクトルで描かれた映画だからだ。
『Swiss Army Man』は恋愛から逃げてきたポール・ダノが(死体で)無知のダニエル・ラドクリフと出会い、彼にあれこれ教える中で恋愛から逃げてきた自分の人生と立ち向かう。一方で『ロブスター』はコリン・ファレルが、(相手のために自分を無理やり曲げるような)信念のない連中に、とてつもない覚悟を持って恋愛とはどういうものかを叩き込む映画だ。…自分で書いてて耳が痛くなってきた。『ロブスター』の恋愛へのスタンスは『愛のコリーダ』と似たものを感じたよ。
明日はいよいよ『ゴーストバスターズ』を観るよ!あれだけ騒いでつまらなかったらどうしようか、緊張してきた…。