昨日嫁さんの診察を待ってる間*1、ブックオフに立ち寄って本を漁ってたんですよ。そうしたら自己啓発本のところに何故かポツンと映画本がありました。具体的な本の名前などは伏せますが、どうやら映画鑑賞を仕事と人生に活かすことを掲げた本でして、パラパラめくったらキナ臭い見出しがありました。
「映画鑑賞の5大メリット」
この文言にビックリしたというか呆れたというか、何故なら僕はこれまでの人生において映画鑑賞のメリットなんて考えたこともありません。誤解なきよう付け加えると、映画を始めとする芸術や娯楽は人生や人間が住む社会・文化を豊かにするもので、その点で「メリット」はあるでしょう。
しかしこの本で掲げられていたメリットは「スマホに疲れにも効果的」とか「人間としての魅力が増す」とか、ちょっと本当に映画好きが書いているとは思えないくらい映画鑑賞を功利的に捉えすぎています。本の帯では「超戦略的シネマ鑑賞法」と掲げられていましたが、言わずと知れた名著『映画の見方がわかる本』*2みたいに名作映画の制作背景や物語に隠されたテーマなどが分かるならつゆ知らず、芸術を鑑賞することに「戦略」を必要とするのはよく分かりません。*3
多くの人は金と時間に余裕があって映画館へ行き、面白かったらハッピーになるし、つまらなかったら文句を言う。映画鑑賞なんて、こんなもんでいいと思いますよ。そんな余暇行動に合理性や功利を求めるのはちょっと現代病的なものを感じます。
でも、一応擁護として書いておくと、逆説的にこの本が生まれたのは作者なりの「合理主義」への対抗なのでしょう。本の宣伝ページには「退屈なシーンは早送り」にする若年層に対して「もったいない!」と声をかけています。なんでもかんでも効率重視や損得感情ですませようとするZ世代に対して待ったをかけて映画の魅力を伝えるのは大事だとは思いますが、「戦略的鑑賞法を身につけて、感性と発想力を養おう!」と結局は合理主義で映画鑑賞の魅力を訴えかけるのは本末転倒です。
余談ですが、今日こんなニュースを目にして、これまた空いた口が塞がりませんでした。
これはもう、どっからどう見たってひろゆきの影響で、僕も去年ドラマの現場で集められた子役達がひろゆきの口調で喧嘩しているのを目撃しましたし、子供を持っている知人の方から「いつもひろゆきのモノマネをしている」と聞いて絶望的な気分になりました。
ひろゆきだけじゃなくて、こんなランキングも今年見て端的に言って地獄だと思いました。
何この地獄のランキング? pic.twitter.com/aZBFmHodY6
— Taiyaki (@HKtaiyaki) 2023年2月25日
こうした「論破インフルエンサー」の人気度の高さを見るに、今の世の中がいかに白黒がハッキリした合理的で効率的なことが良いとされているかが分かりますね*4。芸術ですら損得で割り切られてしまう、そんな世の中で育った子供たちが大人になった後の世界が僕は一番怖いです。