毎月恒例の更新…のはずなのに、ついに一月分またいでしまった…。猛省します…。
今月は『ローン・レンジャー』『忍たま乱太郎 夏休み宿題大作戦!の段』『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ぼくたちの奉仕活動』『色即ぜねれいしょん』『21ジャンプストリート』『マン・オブ・スティール』の7本について書きます。
『パシフィック・リム』についてはこちらを、
『崖の上のポニョ』『耳をすませば』『借りぐらしのアリエッティ』『平成狸合せんぽんぽこ』『海が聞こえる』のジブリ作品については、後日まとめた企画を考えているので今回は割愛させて頂きます。ってまだ書かねーのかよ。
ローン・レンジャー ★★☆ 全米で大コケしたというニュースに不安を覚えていたのに、心底楽しませてもらった。これこそが夏映画だ!流石ヴァービンスキー!!
— Taiyaki (@HKtaiyaki) August 4, 2013
記録的大コケばかり報道されているが、だからといって観に行かなかった人は向こう3年は後悔するといい。Twitterなんかでも予想外の面白さに驚く意見が散見されるが、僕なんかは駄作と酷評されている『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェス』『〜/ワールド・エンド』の頃からゴア・ヴァービンスキーを絶対的に指示し続けていたので、ドヤ顔が止まりません。
エロール・フリントの剣劇アクションを蘇らせた『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズであり、その要領で古典的な西部劇を蘇らせたのが本作『ローン・レンジャー』になる。ヴァービンスキーは傑作『ランゴ』で自身の西部劇愛を炸裂したばかりで、その脂が乗った勢いは『ローン・レンジャー』でも続いている。
『デッドマンズ・チェスト』での車輪バトル、『ワールド・エンド』での結婚式の決闘、『ランゴ』での空中戦など、奇想天外な画によるアクションこそがヴァービンスキーの醍醐味だと思っているのだが、その集大成となるのが『ローン・レンジャー』クライマックスの列車のシークエンス。ウィリアム・テル序曲に合わせて、タガが外れたようなテンションで展開されるアクション!確かに中盤だれるという意見も分かるけど、ラスト30分は信者としては観ていて幸せでした。
Lone Ranger 2013 - Hans Zimmer - William Tell ...
忍たま乱太郎 夏休み宿題大作戦!の段 ☆☆☆ 前作を観てしまったので、これは見届けねばと、わざわざ埼玉の三郷まで参りました。90分しかないけど眠くなってしまったことに驚き。流石に三作目はもう、ないよね…?
— Taiyaki (@HKtaiyaki) August 14, 2013
三池崇史監督の前作は2011年のワーストに入れるほど酷い作品であった。ショタ気味な女友達と観に行ったが、その女友達にも「眠くてしょうがなかった」と言わしめた。ヒットもしてないし、話題にもならなかったのでシリーズ化は無理だろう…。と思いきや、続編のポスターを映画館で見かけて衝撃を受けた。一体誰がこの映画を観に行くんだ?…僕たちが観るしか無いでしょうが!ということで、もう一回同じ友人と地雷の撤去に行きました。わざわざ三郷まで…。
ハッキリ言って、三池版より酷い。もはや内容云々の話ではなく*1、アフレコ感丸出しの録音や、急に画質が落ちるシーンがあったり、ピントが合ってないカットがあったり、プロが作る映画としてあるまじき作品だった。子ども向けだと思って観客を舐めてる典型的な映画だった。「勇気100%」も流れないし、本年度ワーストはほぼ決まりました。
もう作んじゃねーぞ!
『忍たま乱太郎 夏休み宿題大作戦!の段』予告編 - YouTube
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ★★☆ 前田くん、ごめん、僕ロメロ一本も観てなかったわ…。
— Taiyaki (@HKtaiyaki) August 17, 2013
huluで発見!ってことで鑑賞。
主人公は父への墓参りでゾンビに襲撃され、兄と死に別れてしまった少女バーバラ…と思いきや、彼女が逃げ込んだ民家で偶然居合わせた黒人のベン。人種差別がまだ色恋60年代に黒人が主役が務めているのには驚いた。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は低予算のインディーズ映画だったので思い切ったキャスティングが可能だったのかもしれない。
なお、本作が公開された1968年には傑作SF『猿の惑星』が公開されており、こちらは猿=黒人をメタファーとした作品で、白人優位主義の価値観を覆す作品だった。また、当時米TV局のNBCでは『宇宙大作戦』が放映されており、レギュラーキャラクターのウフーラをニシェル・ニコルズが演じ、史上初めて黒人キャストがレギュラーを務めた。60年代後半は公民権運動と反戦運動の最盛期だった。
しかし、4月には公民権運動を牽引していたキング牧師が暗殺され、11月にはニクソン大統領が当選しベトナム戦争は泥沼化していく。カウンターカルチャーの終焉を迎えつつもあった時勢で、こうした厭世的なムードをロメロは見事にオチに集約している。
ぼくたちの奉仕活動 ★★☆ 主演のポール・ラッドが脚本も書いているウェルメイドなコメディ。服役になる代わりに社会福祉活動を命じられたダメな大人二人が子どもたちのrole model(お手本)になるため奔走する。アパトーギャング出身者は本当に才能があるなぁ。
— Taiyaki (@HKtaiyaki) August 17, 2013
『Role Models』というタイトルだが、もちろん問題児と出会って成長するのは未熟な主人公二人の方だ。
アパトー門下生のセス・ローゲンやジョナ・ヒルは馬鹿でデブでどうしようもない「大人になりきれない大人」を演じることが多い。一方、ポール・ラッドも大抵「大人になりきれない大人」を演じているが、イケメンのポールの場合は毎度彼女がいたりちゃんと定職についていたりするのだが、激しい環境の変化の中に投げ込まれて、要するに問題に巻き込まれて成長するパターンが多い。ハンサム顔のポールだからこそその不遇っぷりに笑ってしまう。
今回ポール・ラッドの相棒を務めるのは『アメリカン・パイ』で単細胞ジョックスを演じたショーン・ウィリアム・スコット。『アメリカン・パイ』でのキャラがそのまま成長した姿かのようにバカな行動を取り爆笑をさらう。単細胞バカを演じさせたら今チャニング・テイタムの次に輝くかもしれない。
『スーパーバッド』のマクラビンや『キック・アス』のレッドミストといった、ヘナチャコキャラでブレイクしたクリストファー・ミンツ・プラッセは本作でも安定のヘナチョコ感。各キャストがそれぞれの持ち味を存分に出せた秀作。
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色即ぜねれいしょん ★★☆ みうらじゅんの自伝的内容。ムラムラと、しかしエネルギッシュな青春時代が70年代の風俗と共に描かれる。みうらじゅんと田口トモロヲがこんな瑞々しい物語を作っていたなんて!見る目が変わりました。
— Taiyaki (@HKtaiyaki) August 24, 2013
山下敦弘作品でお馴染みの向井康介がみうらじゅん原作の『色即ぜねれいしょん』の脚本を書くなんて、これははまらない訳がない!素晴らしいボンクラ映画でした。童貞の切ない恋物語、クライマックスが学園祭のライブ、カーストを越えて交流する文化系とヤンキー、『色即ぜねれいしょん』はツボを押しまくる。捻りはまったくないけど、王道なストーリーに純粋に感動してしまった。セックスとロックという題材に反して田口トモロヲの演出は堅実で安心して観てられる。難病じゃ運命じゃなんじゃじゃなくて、もっとこういうゲロの出てくる超面白い映画が増えるべきだと思いますよ!
21ジャンプストリート ★★☆ 最高に面白かった!ジョニデの出世作となった同名テレビドラマのリメイク映画化。主演のジョナ・ヒルの本格的脚本家デビュー作でもあり、アパトーの手を借りずにクリエイターとしての才能を存分に発揮。アパトーギャングは本当にどうなってんだ…。
— Taiyaki (@HKtaiyaki) August 29, 2013
いくらアメリカンコメディ不遇の時代だからといって、本作が公開されないのは配給会社の目が節穴だと言わざるを得ない。アメリカでは2億ドルを超えるヒットを産み出し、続編も決定している。今日本でも人気上昇中のチャニング・テイタムと、『マネーボール』でアカデミー賞にノミネートされたジョナ・ヒルが出ているわけだし、さらにジェームズ・フランコの弟のデイヴ・フランコもこの作品から人気が出て行くと思うので、然るべき戦略で臨めば確実にヒットは出来たはず。
高校時代はいじめっこ、いじめられっ子の関係だったチャニング・テイタムとジョナ・ヒルは、警察学校で偶然再会して仲良しコンビになる。警察学校を卒業した二人は、ドラッグが流通している高校への潜入捜査で再入学を命じられるが、手違いでジョナがイケてるグループに、テイタムがオタクグループに入ってしまう。
上記のように、ややこしい設定を脚本も担当したジョナは冒頭でスマートに書いてみせる。セス・ローゲン、ポール・ラッド、ジェイソン・シーゲルなど、アパトーギャング出身者が次々に脚本家や製作者としての手腕を発揮していた一方で、『マネーボール』で演技の才能は評価されていたものの、ジョナ・ヒルのクリエイターとしての能力は未知数であった。『21ジャンプストリート』によって、ジョナも他の兄弟弟子と変わらない才能を持っている事が明らかになったのではないだろうか。
もう一つこの作品で面白いのは、アメリカの高校におてのスクールカーストの移り変わりを反映している点だ。もう弱い者イジメをする筋肉バカが学校の頂点ではなく、知的な文化系が学校を牛耳るようになってしまった。昔ながらのやり方で上手く行かないテイタムが「全部『glee』のせいだな、Fuck glee!」とキレていたのは笑えたが、もう『スパイダーマン』や『スーパーバッド』が提示していた価値観は古いんだな。『アメイジング・スパイダーマン』でピーター・パーカーがもう虐められっ子でなくなっていたのに少し納得した。
21ジャンプストリート (字幕) - 予告編 - YouTube
マン・オブ・スティール ★★☆ 不満は無いとは言わないけど、ひとまず圧倒的なスピード感と重量感のあるバトルを堪能できた!
— Taiyaki (@HKtaiyaki) August 31, 2013
まあ、こんなバカな記事を書いた訳だけども、結局その記事を通して何が言いたいのかって本作のアクションはまるで『ドラゴンボール』のようだってこと。そもそも、孫悟空とスーパーマンが類似した出自を持つキャラクターである、ということがネット上でよく話題になるそうだ。*2
スーパーマンがひと殴りすれば敵はカンザス上空を吹っ飛び、店やビルを破壊する。『300』や『ウォッチメン』といったコミック原作の映画を手がけたことがあるザック・スナイダーだが、両作品で頻繁に使用していたスローモーションによりコマ間を補正するアクションを本作では封印し、逆に極端までにアクションを早めることで漫画的な画作りに成功している。なんとも景気の良い破壊描写満載で鑑賞中のアドレナリンは上がりっ放しだった。
ただ問題に感じたのは、スーパーマンが人助けをする描写が無い事だ。いや、確かにクラークが小さいときや自分探しの最中に人を助けたりはしているのだが、あのユニフォームを着てからはゾッド将軍との対決ばかりで、軍人を救う事はあっても市民を救う描写はほとんどない。結果的に人類を救う事にはなっているんだけど、やっぱりドナー版でもシンガー版でも、更に言えばサム・ライミの『スパイダーマン』シリーズでも、人助けをする行為にこそヒーロー映画のカタルシスがあると思う。
あとは問題というか不安に思った事なんですけども、スーパーマンがこんなに強くて大丈夫なのか?続編ではレックス・ルーサーがヴィランになるのではないかと噂されているが、セル編でのフリーザ並に何もできずに終わるんじゃないだろうか。更に先日伝えたようにバットマンの登場も決定しているが、それこそどう考えたってパワーバランスが釣り合わないじゃないだろうか。あの激闘の後で今更ただ人一倍力持ちの金持ちに何ができるのか。悟空と天津飯くらいかけ離れていると思うのだが。
とまぁ、結局『マン・オブ・スティール』は『ドラゴンボール』の実写化だってことが僕はただ言いたいだけなんですね。このままいけば初の実写化*3だって夢じゃないぞ!
MAN OF STEEL - Official Movie Clip #4 (2013) [HD ...
以上が今月分です。この夏休み期間は激務につき全然映画が観れず、さらに更新まで遅れてしまいました。9月分こそは今月中になんとか…!
*1:むしろ、お話としては前作よりも理路整然として2作目の方が見やすい。ドングリの背比べですが。
*2:参考: くりごはんが嫌い「オレ、ドラゴンボールとスーパーマンって似てると思うんだよ!『マン・オブ・スティール』」
*3:何か忘れてるって?確かにそんな気がしますが、考えるだけ面倒なのでやめました。