2015年映画ベスト30&ワーストテン

 2015年も遂に終わります。今年もいろんなことが起きましたけども、自分にとって今年はアメリカに留学した年でもあり、人生において間違いなくターニングポイントになった年だろうと思います。2015年は映画業界的にも話題作や傑作が尽きず、映画ファン的にも印象に残る年になったことでしょう。10年に一度の豊作の年と言って差し支えないのではないでしょうか。*1

 

 さて、今年は97本の最新映画を観ました。またもや過去最高だった2014年の鑑賞本数を超えてしまいました。特に留学先が田舎なので映画以外にまともな娯楽がなく、映画館に通いまくっていたら、行くたびに「あなたの人生に他にやること無いわけ!?」「Go Home!」とチケット売り場のバイトに言われるくらい仲良くなりました。

 

 そんで、鑑賞本数もさることながら先述の通り今年は良作が多すぎて、とてもじゃないけど10本じゃ無理なので、今年は特別にベスト30にしました。多ければ多いほど楽しいメガ盛りだ!

 

 というわけでさっさと行ってしまいましょう!

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▲今年のイメージキャラクター イモータン・ジョー様。I am your redeemer!!!

【特記事項】

 

【ベスト10まで】

  1. 幕が上がる
  2. マッドマックス 怒りのデス・ロード
  3. クリード チャンプを継ぐ男
  4. ヘイトフル・エイト
  5. インサイド・ヘッド
  6. ジュラシック・ワールド
  7. キングスマン
  8. ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション
  9. セッション
  10. Trainwreck

【短評】

 ああ、辛い、辛すぎる!泣いて馬謖を斬るということはこのことか!ベストテンを選ぶだけでこんなに苦悶したのでやはりベスト30にしといて正解だった!

 

 しかし①、②は上半期ベストテンで宣言していたように不動。①を留学する年に出会えたことは本当に奇跡なので、今年のベストワン。しかし、10年代ベストやオールタイムベストを選ぶ機会があったら、「真に面白い映画は言葉を超越する」という事実を轟音と共に教えてくれた②は永遠に忘れないだろう。

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 映画それ自体が「偉大なる先人の名前」に挑んでる③には泣かされまくった。あくまで新主人公アドニス・クリードが主人公だが、トレーナーに回ったロッキーの物語の続きでもある。クリードと共に立ち上がり戦う老ロッキーの姿には奮い立たされる。


『クリード チャンプを継ぐ男』本編特別映像

 

 自慢なんですけど、④は70mmフィルム上映版を観れたんですよー、いいでしょー!竜巻の影響でヒューストンの劇場に着くまで34時間かかったが、その苦労にお釣りが大量に出るくらいの相変わらずのタランティーノクオリティ。今回は初期の作品を思わせる密室劇だが、詳しくは年明けにでも書きたい。


ヘイトフル・エイトショート予告

 

 ここ数年不調だったピクサーが⑤で大復活!アニメ映画史的にもとんでもない実験作。これで『ファインディング・ドリー』や『トイ・ストーリー4』にも期待できる…のかなぁ…

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 ⑥はシリーズのファンとしても怪獣映画好きとしても大興奮。心が6歳に戻ったし、エンドロール中に興奮した6歳(=未来の僕)に話しかけられた時は鼻血が出るかと思った。

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 ⑦は何度も言いますが、教会のシーンと花火のシーンが兎にも角にも最高。スパイ映画が流行った年だが、そのジャンルの再構築映画としても逸品級。

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 トム・クルーズの超人化が止まらない⑧は、「見せ方」を分かっているクリストファー・マカリーが登板したことでシリーズを更なる極地へと導いた。マカリーは次作でも再登板するそうで、トム・クルーズからの信頼のほどを伺える。次はどんなスタントでこちらの度肝抜かしてくれるのか今から楽しみ。 

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 ⑨も①や③と同じく、モチベーションが下がった時に観たい映画。これも何度も言ってるが、「『Good job』ほど危険な言葉はない」は今後生きていく上でのモットーにしたい。でも、実際にフレッチャー先生みたいな人にあったらすぐ折れそうだなぁ…。 

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 コメディ映画ベストテンでは1位に選んだ⑩。素晴らしい映画なのは間違いないが、念願のジャド・アパトーの監督作を映画館で観れたのが嬉しかったので、2015年のメルクマーク的に10位にランクイン。


Trainwreck (2015) Official Trailer (Universal Pictures) [HD]

 

【ベスト20まで】

  1. アーロと少年
  2. アントマン
  3. Ex Machina
  4. ナイトクローラー
  5. ビースト・オブ・ノー・ネーション
  6. ワイルド・スピード SKY MISSION
  7. The Night Before
  8. グリーン・インフェルノ
  9. ピッチ・パーフェクト
  10. 映画 ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜

 ここまでは全部トップテンに入り得た馬謖です。

 

 『インサイド・ヘッド』の陰に隠れてしまいそうだが、実は⑪も傑作だったのでこれらを同じ年に出せるピクサーの制作体制はどうなっとるんじゃと脱帽する。本作はアーロと少年の『E.T.』ものであり、アーロのビルドゥングスロマンでもあり、西部劇でもある。物語が含む豊かさに感動しました。

 

 今年のアメコミ映画なら、『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』より断然⑫。ヒーロー誕生譚としては『アイアンマン』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と並び、エドガー・ライト降板を乗り越えて傑作が誕生したことに感心する。 

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 ついさっき観たばかりの⑬は時代の先を見据えたスケール感のある設定と対比した簡素なプロダクション・デザインや静かな演出にゾクゾクする傑作インデペンデント映画。密室劇で登場人物が4人しかいないのに二転三転する脚本が見事で、監督のアレックス・ガーランドのフィルモグラフィを見ると『サンシャイン2057』やリメイク版『ジャッジ・ドレッド』の脚本を書いていて大変合点がいった。

 

 倫理観など糞食らえの⑭は、主人公が講釈を垂れるたびにニヤニヤが止まらなかった。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』もそうだが、クズも度がすぎるとむしろ清々しいな。

 

 ⑮もつい2時間前に観終えたばかりで、アフリカの某国で少年兵となった少年アグーが地獄めぐりをするお話。こんな傑作を世界同時配信するNetflixは凄いなぁとは思うが、力作すぎて正直劇場で見たいなぁと思うのであった*2

 

 ⑯の順位の下がりっぷりには自分でもびっくりだが、しかしもし今年のエンディングランキングを作ったらダントツでナンバーワンである。 泣くに決まってんじゃん、あんなの…。 

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 今年もセス・ローゲン兄貴に楽しませてもらった⑰。「やっぱりブロマンスって気持ちいい!」という『ディス・イズ・ジ・エンド』や『The Interview』よりずっと成長した作品だった。その二つも大好きな作品だけどね。

 

 ⑱も鑑賞時に「本年度ベスト級!」と呟いておきながらこんなに順位が下がったのは大変申し訳ない…。しかし口だけのバカな学生が食われる映画は楽しいのであった、わはは。

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  ⑲はBDで観たけど本当に大好きな作品。勝ち負けを超えたクライマックスの熱量は本年度随一で、『ブレックファスト・クラブ』の感動まで追体験させてくれる。今年公開された『2』がそこまでじゃなかったのは残念だった、『マジック・マイクXXL』もそんな感じだった。

 

 「言葉がなくても面白い」という点では⑳はひつじ版の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』である。なんならNYに行った時の機内上映で流れてたが、音声を聞かなくても面白かった凄まじい作品

 

【ベスト30まで】

  1. シェフ 三ツ星フードトラック始めました
  2. オデッセイ
  3. 007/スペクター
  4. SPY
  5. Joy
  6. マネー・ショート 華麗なる大逆転
  7. I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE
  8. ブリッジ・オブ・スパイ
  9. トゥモローランド
  10. クーデター

 最後の10本は別の年ならベストテンに入ってもおかしく無かったごめんね枠です。

 

 マーベルから離れてやりたい作品をやったジョン・ファヴローの魂が込められた㉑ジョン・ファヴローにとっての『ロッキー』。しかし、次回作が『ジャングル・ブック』の実写化で、予告編もあまり期待できそうじゃない…。まあ、観てのお楽しみ。

 

 ㉒はインターステラー』みたいな作品かと思いきや『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』だった。科学の楽しさが伝わってくる映画でもあり好感が持てる。しかしマット・デイモンも2年連続で宇宙に置いてかれるとは。

 

 スパイ映画ブームの年に『007』シリーズを往年のスタイルに回帰させた㉓が公開されたのは印象深い。今年の前半はこのために『007』を全部観たが、本作はセルフオマージュだらけだったので正しい判断だった。

 

 そして『007』シリーズの男女関係を逆転させた㉔も忘れてはいけない。メリッサ・マカーシーとポール・フェイグの相性は安定していて『ゴーストバスターズ』も楽しみ。

 

 今日映画館で観てきた㉕は、「誰にもチャンスが等しくある国」であるアメリカで力強く生き抜く母を描いていて、デビッド・O・ラッセル作品では一番好き。しかしジェニファー・ローレンスロバート・デ・ニーロブラッドリー・クーパーは三作品連続で登板してるけど、やっぱりラッセル監督は気難しいのかね。

 

 予告編の時点で㉖はアダム・マッケイの作風の変化ぶりに驚いたけど、題材的には『アザーガイズ』のエンドロールの映画化だったので実は意外でもなんでも無かった。脚本を手がけた『アントマン』もリベラル寄りの思想が込められてたしね。

 

 ㉗は隣に引っ越してきた女の子に勇気を出して話しかける、ってだけの話なのに、恋の楽しさ、辛さ、怖さ、冒険感をまるで漫画から飛び出てきたような活き活きとしたビジュアルで描かれていてすっげー楽しかった。

 

 スパイ映画の年にスピルバーグも㉘。冒頭3分くらいに静かなのに緊迫した逃走劇があり、いつまでも劣らぬその手腕に惚れ惚れした。ラストにトム・ハンクスが目撃するものも印象的なので、是非とも劇場で確かめてください。

 

 ㉙は説明不足感が否めないのは残念だが、『宇宙大作戦』とも共通するその科学礼賛的未来像は『マッドマックス』とは真逆の価値観である一方、もはやレトロとも言えるそのクリーンで希望に満ちたビジュアルには少年のようにワクワクした

 

 テキサスの平和ボケオヤジが異国の地で体験する地獄めぐりである㉚は、自分が名画座の館長だったら『宇宙戦争』と併映するね!異邦人=Alienとして描く素直さが良い。鑑賞時のテンション的には去年の『イントゥ・ザ・ストーム』と同じカテゴリ。

 

 

 地理的な問題でベストに邦画が少ないのは許してください。さて、ではこちらも恒例のワーストテンに移りましょう。

【2015年ワーストテン】

  1. スター・ウォーズ フォースの覚醒
  2. 暗殺教室
  3. ST 赤と白の捜査ファイル
  4. PAN〜ネバーランド、夢の始まり〜
  5. 劇場版ムーミン 南の島で楽しいバカンス
  6. スポンジ・ボブ 海の皆が世界をすくWoo!
  7. ジュピター
  8. カリフォルア・ダウン
  9. イントゥ・ザ・ウッズ
  10. ファンタスティック・フォー

 正直に言うと①が他の9作品と比べてそこまで酷い作品だとは思わないが、『スター・ウォーズ』のことになるとどうも冷静になれない。①の愚痴を言おうと思えば何時間でも言えるし、何より2012年の制作発表から鑑賞後までこんなに精神を疲弊した作品も滅多にない。そういう意味で今年を象徴したので、ワーストワンにした。まあ、記憶に残ったという意味ではワーストワンもベストのようなもの。

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 真の意味でのワーストは②。製作陣は一体何を思ってこの映画がイケると思ったのだろうか。というか何がイケるのだろうか。宇宙人の考えてることは凡人には分からん。

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 ③は渡辺雄介物件。こちらも常人には理解しがたい論理を超越したトリックや全てを口で説明する藤原竜也岡田将生のうるさい演技が炸裂する。しかし渡辺雄介物件であった『進撃の巨人』はそこまで悪い作品では無かった。まあ、僕が町山さん贔屓なのは認めるけど…。 

 

 ④は今年観た洋画の中で一番つまらなかった。誰もウジウジしたピーター・パンなんか観たくないし、フック船長とピーター・パンが実は[親友]でした、って馬鹿も休み休み言えよ…。

 

 ⑤、⑥は原作をよく知らないで観たのでこちらに非があるのかもしれないが、どちらの作品も登場人物たちの空気の読めないテンションの高さに疲れた。

 

 ⑦は1億7600万ドルかけたジャンプ打ち切り漫画みたいな映画。

 

 ⑧はドウェイン・ジョンソン演じるレスキュー隊員の公私混同っぷりがどうもノレ無かった。「地震から逃げる」って考えも斬新である。

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 ⑨はミュージカルなのに閉塞感ばかり感じて面白く無かった。「めでたしめでたし」の先はいらないんだよね、って言うのは①にも共通。

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 撮影中のトラブルを聞いてるし、『クロニクル』も大好きなので⑩をあまり槍玉にあげたくはないんだけど…例えるならクッソ不味い食事を出されたんだけど、怒声が聞こえる厨房を覗いてみると雰囲気は悪いけど皆あくせく働いてるし、ウェイターも震えながらも頑張ってるのが伝わってくるし、あまり文句は言えない、けど料理はやはりクッソ不味い、というような映画。

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 別に意識してたわけではないけど、ターミネーター:新起動/ジェニシス』がワーストから漏れました。命拾いしたな!

 

【総評】

 何度か文章中に書いたが、今年のベストのテーマは「言葉」なのかもしれない。当然、留学したというのが大きく関わっていて、リスニングにまだ慣れてない最初の一ヶ月は映画を観るのも一苦労だった。しかしそんな時に出会った『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の問答無用の面白さには衝撃を受けた。本当に面白い映画は言葉を超越するのだ。ベストテンに挙げた映画はどれも言葉を超えて映像的に感動・燃える瞬間が入っており、どの映画も例え中国語やイタリア語、あるいはクリンゴン語に吹き替えられていたって面白かっただろう。

 

 また、「『スター・ウォーズ フォースの覚醒』はIMAXで観てこそ」なんて話も巷で聞いたが、それこそまた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は留学先の劇場では3D上映が終わってしまっていて仕方なしに小さいスクリーンの2Dで観た。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は僕がかつて抱いていたフォーマット信仰を解いた映画でもあり、やはり面白い映画はどんなフォーマットでみようと面白いのである。といっても、『ヘイトフル・エイト』の70mmプリント版観にわざわざヒューストンに行ったりしているんだけどね。やーい、羨ましいだろ!

 

 それでは来年もいい映画に出会えることを願って、皆さんよいお年を!

 

【過去のベストテン】

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「尾も白いの探して。」-2012年映画ベスト&ワースト-

「尾も白いの探して。」-2011年映画ベスト&ワースト10-

*1:まあ、まるでボジョレー・ヌーボーのキャッチコピーみたいに毎年行ってることですが、それにしたって今年はすごかった。

*2:実際に公開されてはいたが、公開館数はそんなに多くは無かった